マイクロソフト新社長が3カ年計画発表、やるべきことを明確に

2005/7/28

 マイクロソフトの代表執行役 社長に7月1日付で就任したダレン・ヒューストン(Darren Huston)氏は7月27日、日本における投資拡大、技術革新、パートナーシップを柱とする3カ年計画「PLAN-J」を発表した。マイクロソフトにとって日本市場の長年の課題は、サーバ製品をはじめとするエンタープライズ事業の拡大。「勢いが付いてきた」とヒューストン氏が評するサーバ製品だが、グローバルの市場シェアと比較すると「日本ではマイクロソフトのサーバはあまり普及していない」(同氏)。同氏が「成長のエンジン」と位置付けるサーバ製品、エンタープライズ事業の拡大がPLAN-Jの成功の鍵になる。

マイクロソフト 代表執行役 社長のダレン・ヒューストン氏。家族が8月に来日し、執務に本腰を入れる

 PLAN-Jの柱の1つ目、投資の拡大で、ヒューストン氏は人材の採用を拡大することを明らかにした。「最も優れた人を求める」と述べ、中途採用を積極化する方針を示した。社内の優れた才能への投資も行うとして社内研修を充実させることも説明した。パートナーや社会活動にも投資を増やす考えで、特にセキュリティの啓蒙やデジタル・デバイドの解消など社会活動への投資は「倍増したい」とした。

 2つ目の柱は技術革新の促進で、マイクロソフトの本業の分野。ヒューストン氏は、次世代Windows OS「Windows Vista」を国内で2006年後半に出荷すると明らかにし、「セキュリティ、信頼性、情報の収納、検索を強化する」と説明した。「Office 12」(開発コード名)もWindows Vistaと同時期に出荷する。マイクロソフトにとって2005年後半から2006年にかけては、「SQL Server 2005」「Visual Studio 2005」「Windows Vista」と大型製品の出荷が相次ぐ、“実りの年”だ。ヒューストン氏は「サーバ製品は最も急成長している」と述べ、意気込みを見せた。

 PLAN-Jの3つ目の柱であるパートナーシップは、本業を拡大するための潤滑油となる。ヒューストン氏は、東芝と結んだような特許のクロスライセンス契約を拡大し、デジタル家電分野でのパートナーシップを強化すると説明。また、エンタープライズ事業では、マイクロソフトが考えるオープンスタンダードの価値を日本のIT業界に広めるとした。「日本のシステム・インテグレータ(SIer)との協業を拡大し、SIerが世界で戦えるようにしたい。パートナーが勝てないということは、マイクロソフトが勝てないのと同じだ」(ヒューストン氏)。

 政府機関とのパートナーシップも引き続き強化する。マイクロソフト製品に対してアレルギーが強いとされる政府機関、官公庁との「よりオープンな意見交換を実施」(ヒューストン氏)することで信頼を獲得し、官公庁、自治体でのマイクロソフト製品の採用拡大を目指す。大学など教育機関との協力、連携も強化し、マイクロソフト製品のソースコードを一定の条件下で開示する「シェアードソースイニシアティブ」も積極展開する。
 
  PLAN-Jは、前社長 マイケル・ローディング(Michael Rawding)氏の基本方針を踏襲しながらも、人材への投資など戦略にメリハリをつけた内容といえる。ヒューストン氏の心境は「日本法人がやるべきことは分かっている。いかにやるかが問題だ」というところではないだろうか。北米地域の中堅・中小規模事業所向けビジネスを10%以上成長させてきたという手腕が注目される。

(@IT 垣内郁栄)

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