[Oracle OpenWorld開幕]
非オラクル環境との共存を決意したオラクル、
SOA実現へ正念場
2005/9/21
米オラクルは9月19日(米国時間)、同日始まったイベント「Oracle OpenWorld 2005」で、SOAに基づく新しい情報システムのアーキテクチャ「Oracle Fusion Architecture」(OFA)を発表した。ピープルソフトなど買収したベンダの製品や他社のアプリケーションをコストをかけずにスムーズに統合するためのアーキテクチャで、オラクルは今後、OFAの考えを基に「Oracle Fusion Middleware」などのミドルウェア製品を拡充する。
オラクルが従来提唱してきたアーキテクチャ「Oracle Information Architecture」(OIA)とOFAとの違いは、他社アプリケーションや手組みのアプリケーションなど企業が抱える非オラクルのIT資産をどう考えるかにある。OIAもSOAの実現を目指すアーキテクチャで非オラクル製品との連携、統合を訴えてきた。しかし、最終的にはオラクル製品への移行を促すというのが基本の考えだった。対してOFAは他社アプリケーションやプラットフォームの利用を継続したままで、ビジネスプロセスの柔軟な組み換えを目指す。米オラクルの社長 チャールズ・フィリップス(Charles Phillips)氏は「いままでのアプリケーションを使い続けてもらってもいい。既存の投資を守る」と説明した。
「Oracle Fusion Architecture」を発表した米オラクルの社長 チャールズ・フィリップス氏 |
OFAの性格を最も表すのが同日、オラクルが発表した「Hot-Pluggable」という考えだ。他社のどのようなミドルウェア製品、データベース、アプリケーションであってもオラクルのミドルウェアに接続できるようにする考えで、既存の情報システムを置き換えることなく、SOA環境に移行できることをアピールする。米オラクルはアプリケーション・サーバのIBM WebSphereとオラクルのアプリケーションとの連携について、米IBMと協力すると同日に発表した。
オラクルによると、Hot-Pluggableに対応するミドルウェアはすでに、主要なJ2EEアプリケーション・サーバで稼働する「Oracle BPEL Process Manager」やLDAP、Microsoft Active Directoryをサポートする「Oracle Identity Management」などがある。オラクルはMicrosoft.NETやIBM WebSphere、IBM MQ-Series、Cisco Local Director、F5 Big IPなど128以上の製品と相互互換性を持つ「Oracle Application Server 10g Release 3」を、2006年5月末までに米国で投入することも発表した。
OFAの概念図。オラクルが考えるSOAの技術要素を示す(クリックで拡大します) |
オラクルはOFAの概念図も発表した。グリッドコンピューティングのインフラ層をベースにアプリケーション・サービスなどさまざまなレイヤで構成する。注目されるのは「Fusion Service Registry」「Fusion Service Bus」「Business Process Orchestration」の各レイヤ。Fusion Service Registryはいわばサービスの「イエローページ」(フィリップス氏)で、ミドルウェアやアプリケーションが提供するサービスを登録して、ほかのサービスと必要に応じて組み合わせることができる。Fusion Service Busはサービスを構成、統合するためのエンタープライズ・サービスバス。
そしてBusiness Process Orchestrationは、統合したサービスとアプリケーションの“調和”を保つ機能を提供する。ビジネスの状況を抽出して、アプリケーションを自動でチューニング、ビジネスプロセスが最適になるように調整する。BPELエンジンを利用する。
買収したアプリケーションベンダの顧客をつなぎとめることは、オラクルの注力ポイントの1つ。そのためOFAは既存の情報システムを守ったうえで新たな価値を提供するという考えが基本にある。フィリップス氏は基調講演で、オラクルが行ったピープルソフトの顧客への満足度調査の結果を示した。合併前と比較して合併後の方が、サポートなどピープルソフト顧客の満足度が上がっていることを示す結果で、フィリップス氏はオラクルによるピープルソフト統合がうまくいっていることをアピールした。
(@IT 垣内郁栄)
[関連リンク]
米オラクルの発表資料(Oracle Fusion Architecture)
米オラクルの発表資料(Hot-Pluggable)
米オラクルの発表資料(Oracle Application Server 10g Release 3)
[関連記事]
「全然問題ないね」、協和エクシオがOracle BPEL PMを検証 (@ITNews)
住所、社名を名寄せ、オラクルが「Data Hub」で提供 (@ITNews)
オラクルがSOAミドルウェアに本腰、「Fusionを市場に問う」 (@ITNews)
オラクルが明らかにしたピープルソフト統合計画の全貌 (@ITNews)
情報をお寄せください:
最新記事
|
|