オラクルが明らかにしたピープルソフト統合計画の全貌

2005/6/24

 日本オラクルは6月23日、米本社が買収したピープルソフトとリテックの製品と自社の「Oracle Applications」を統合するための計画「プロジェクト・フュージョン」を公開し、2008年には統合版の新アプリケーション「Fusion Application Suite」を提供開始すると発表した。統合のための新ミドルウェア層で、SOA基盤となる「Oracle Fusion Middleware」の提供も表明した。

米オラクル アプリケーション開発担当シニア・バイス・プレジデント ジョン・ウーキー氏(右)と日本オラクル 代表取締役社長の新宅正明氏

 オラクルは買収によって、自社のOracle E-Business Suiteのほかに大企業向けのERP「PeopleSoft Enterprise」と、中堅中小企業向けの「JD Edwards EnterpriseOne」、IBM「iSeries」向けの「JD Edwards World」、流通業界向けの「Retek」を持つことになる。2008年に出荷予定のFusion Application Suiteは、「これらの製品のベストを凌駕(りょうが)するスーパーセット」(米オラクル アプリケーション開発担当シニア・バイス・プレジデント ジョン・ウーキー[John Wookey]氏)になるという。

 Fusion Application Suiteはオラクルが開発するミドルウェア層、Oracle Fusion Middlewareの上に構築される。Oracle Fusion MiddlewareはSOAに基づき、異なるシステムを統合することが可能。Fusion Application Suiteが登場するまでにも、Oracle E-Business SuiteとPeopleSoft Enterpriseなどを相互接続するための基盤として活用する。日本オラクル 代表取締役社長の新宅正明氏は「Oracle Fusion Middlewareの狙いは、Oracle Applicationsだけでなく、ほかのアプリケーション、カスタムアプリケーションを新しいアーキテクチャの下で統合していくこと」と説明した。同様の考えはSAPもSOA基盤「SAP NetWeaver」で展開しているが、オラクルでは「NetWeaverは独自技術を使っているため、スムーズな統合ができない」としている。

オラクルが考える次世代のシステム環境。インフラ部にデータベースなどを配置。そのうえにSOA基盤のミドルウェア、アプリケーションを構築する(クリックで拡大します)

 Oracle Fusion MiddlewareはWebサービス、SOA技術を活用。Oracle Application ServerをベースにBPELやアイデンティティ管理、ビジネス・インテリジェンスなどのコンポーネントで構成される。特に重要になるのがさまざまなアプリケーションのデータを1つに統合する「Data Hubs」。Data Hubsは「Oracle BPEL Process Manager」を使ってアプリケーションのマスターデータを統合。「どの業務プロセスからでも単一マスター経由ですべてのトランザクションにアクセス可能にする」(日本オラクル 取締役 常務執行役員 アプリケーション事業推進本部長 保科実氏)。

 オラクルはすでにアプリケーションの顧客情報を統合する「Customer Data Hub」を出荷していて、「国内でもいくつかプロジェクトが進んでいる。8月までに最初の顧客を紹介できる」(保科氏)。オラクルはほかに製品情報を統合する「Oracle Product Information Management Data Hub」、企業グループの会計情報を統合する「Oracle Financial Consolidation Hub」を2005年秋に出荷する。行政機関向けに市民情報を一元管理する「Citizen Data Hub」、金融機関向けに顧客のローン、クレジット情報を統合する「Financial Services Accounting Hub」も今後提供する予定だ。オラクルは業種別にさまざまなData Hubsを開発する考え。

業種別アプリケーションに注力、フィリップス社長

 米オラクルの社長 チャールズ・フィリップス(Charles Phillips)氏は同日会見し、「アプリケーションではインダストリ別の製品提供が大きな差別化になる」と述べ、業種別アプリケーションの提供に力を入れる方針を説明した。ほかのソフトウェアベンダが人事・給与、会計など汎用的なERP製品で水平展開しているのに対して、「オラクルはインダストリ別のアプリケーションを提供したい」。フィリップス氏は金融やヘルスケア、軍事など特定の業種に強いコンサルタントがすでに社内にいるとして、取り組みを積極展開する姿勢を示した。

米オラクルの社長 チャールズ・フィリップス氏

 また、フィリップス氏はアプリケーション市場での最大のライバル、SAPについて「オラクルはアプリケーションを内部で一貫して開発している。そのため市場のニーズに即座に対応できる。対して、SAPはアドオンが必要になる」と述べた。「オラクルはアプリケーションとインフラとの相乗効果を出せる唯一の企業だ」。

 フィリップス氏は、日本法人のアプリケーション事業について「過去数年の業績は欧州に比べるとうまくいっていない」と指摘。しかし、「ピープルソフトと一緒になることで改善を加えられる。日本のマーケットのニーズも、カスタムアプリケーションからパッケージアプリケーションに変わりつつある」として、「将来的には希望を持っている」と述べた。

(@IT 垣内郁栄)

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日本オラクルの発表資料

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