KDDIがパワードコム吸収合併、NTT対抗で決断

2005/10/14

 KDDIと東京電力は10月13日、東京電力子会社の通信会社パワードコムをKDDIが吸収合併することなどを柱とする、包括提携に基本合意したと発表した。KDDIと東京電力の双方のFTTHサービスの統合についても合意。「NTTグループに対抗する企業グループを形成する」(KDDI 代表取締役社長 小野寺正氏)ことを目指す。

 KDDIとパワードコムの合併は2006年1月1日の予定。合併比率はKDDIの1に対してパワードコムが0.0320。存続会社はKDDI。合併により、パワードコムに83.81%出資していた東京電力のKDDIへの出資比率は4.81%になる。KDDIの代表取締役執行役員副社長 山本正博氏を長とする合併準備委員会を近く立ち上げる。ドリーム・トレイン・インターネット、フュージョン・コミュニケーションズなどパワードコムの子会社はKDDIに合併させずに東京電力が引き取り、自社のサービスと統合したり、第三者への譲渡を探る。

左からパワードコムの代表取締役社長兼CEO 中根滋氏、KDDIの代表取締役社長 小野寺正氏、東京電力の取締役社長 勝俣恒久氏

 合併は法人顧客の取り込みが狙い。パワードコムの法人顧客は約4000社。光ファイバの総延長距離は6万キロで、顧客ビル内まで引き込んでいるケースも多い。また、広域イーサネットサービスは市場シェアトップで、「顧客に乗り入れる光ファイバも含めて価値が高い」(小野寺氏)。KDDIは、携帯電話事業と比較して手薄だった固定通信事業、法人向け事業のてこ入れを狙う。東京電力の取締役社長 勝俣恒久氏は「パワードコムの設備や営業力がKDDIの広い土俵で生かされ、さらに発展していく」と述べた。

 提携のもう1つの柱はFTTH事業の統合。東京電力は「TEPCOひかり」の名称で家庭向け光ファイバ事業を展開している。KDDIは今後、東京電力の光ファイバー施設を利用できるようになり、「アクセス系から中継ネットワークまでを統合的にカバーできるようになる」(小野寺氏)。KDDIはこれまでNTTグループのダークファイバを一部使ってサービス提供してきたが、「手続きに時間がかかっていたし、価格をNTTが決めていた」。そのため光ファイバサービスを柔軟に提供できないもどかしさがあった。KDDIは提携で東京電力の光ファイバを安く、手軽に利用できるようになることを期待している。

 東京電力の設備投資に対して、KDDIが一部資金を負担することも検討する。小野寺氏は「東京電力のアクセス系ネットワークは貴重だ。ウルトラ3G構想の中にも組み込んでいく」と説明した。また、東京電力の勝俣氏はKDDIと提携することで、「(映像、インターネット、IP電話の)トリプルサービスが提供できる。PLC(電力線通信)も検討する」と述べた。両社は、FTTHの今後のサービスについて年内に基本方針を発表する予定。

 KDDI、東京電力連合の今後の課題は、ほかの電力系通信会社の取り込みだ。KDDIはパワードコムだけでなく、ほかの電力系通信会社と連携することで初めてNTTグループへの対抗軸になり得るとの考えがある。小野寺氏は「KDDIとしてはほかの電力系通信会社と話し合いを続けていくべきと考えている。パワードコムがパワー・ネッツ・ジャパン(電力系通信会社10社の連合体)の取りまとめをしているので、パワードコムに意見を聞きたい」と話した。また、勝俣氏は「ほかの電力系通信会社とは今後話し合いをしていき、KDDIと折衝をしていただく。東京電力はその橋渡しをしたい」と述べた。

 2004年6月にパワードコムの代表取締役社長兼CEOに就任した中根滋氏は合併について「パワードコムの再建が完了し、M&Aしてらもらうことになった。この1年間、社員と一緒に顧客指向、プロセス改善、合理化に頑張ってきたことがKDDIに評価され、心からうれしく思う」とコメント。「将来、NTTを凌駕するネットワーク・カンパニーを作り上げることに貢献したいと感じている。パワードコムの命を持ってこれに寄与したい」と述べた。合併後の中根氏の人事については「まったくの白紙」(勝俣氏)。

(@IT 垣内郁栄)

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KDDIの発表資料
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パワードコム

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