MSが心配する「ビジネスPCにVistaはいらない」の声
2006/6/13
マイクロソフトは6月12日、一般ユーザー向けにベータ2の配布を始めた次期OS「Windows Vista」の説明会を開き、ビジネス用途でのメリットをアピールした。Windows Vistaは機能を増したグラフィックスが特徴の1つ。だが、高度なグラフィックス機能を使うには高性能なPCが必要。数年にわたり計画的にPCを利用する多くの企業では低スペックなPCを使い続ける例もあり、スペックの制限からWindows Vistaへの移行をためらうことも考えられる。マイクロソフトは説明会で高度なグラフィックス機能を使わなくてもVistaの主要機能が利用できることを強調し、ビジネスユーザーの取り込みに力を入れる姿勢を見せた。
マイクロソフトのWindows本部 本部長 ジェイ・ジェイミソン氏 |
マイクロソフトは6月8日、一般ユーザー向けにVistaベータ2を配布するWindows Vista カスタマ プレビュー プログラム(CPP)を開始した(関連記事)。同社のWindows本部 本部長 ジェイ・ジェイミソン(Jay Jamison)氏は「Vistaを学んで、評価してほしい」と語り、ビジネスユーザー向けには特にVistaのセキュリティや生産性向上、インフラ最適化、モバイル・コラボレーション機能が有効と説明した。
同社が気にかけるのは今年11月の製品出荷後に企業がスムーズにWindows Vistaに移行してくれるかということだ。Vistaはデスクトップのウィンドーを半透明にしたり、タスクバーにウィンドーのサムネイルを表示、ウィンドーを3D表示するなどの新インターフェイス「Windows Aero」を採用した。
しかし、Windows Aeroをフル機能で利用するには高性能なPCが必要だ。Vistaを動作させるための最低のシステム要件は、Windows XPが動作するPCで、最新のCPU、512MB以上のメモリ、DirectX 9クラスのグラフィックスプロセッサを備えること。だが、この最低要件ではWindows Aeroは利用できない。Windows Aeroを使うには「Windows Vista Display Driver Model」をサポートするグラフィックスプロセッサ、1GB以上のメモリなどが必要とされる。
マイクロソフトはWindows Aeroの高いシステム要件を意識し、ビジネスユーザーがWindows Vistaに移行してくれないことを懸念している。マイクロソフトのWindows本部 ビジネスWindows製品部 マネージャ 中川哲氏は「VistaはWindows Aeroがなくてもビジネスに十分に魅力的だ」と話し、Windows Aeroをあえてオフにしてデモンストレーションを行った。
中川氏が示したのは、USBメモリなどUSB2.0対応のリムーバブルメディアをメインメモリの拡張に使える新機能「Windows ReadyBoost」。メモリが少ないPCであってもVistaを高速に利用できるようになる。中川氏は「メインメモリよりはアクセスが若干遅いが、さらに遅いハードディスクドライブにスワップにいくよりは高速だ」と話した。
Windows Aeroをオフにしていても、Vistaの売りの1つである検索機能は利用できる。Vistaではフォルダなどインターフェイスの「あらゆる画面に検索ボックスを追加している」(中川氏)。検索結果からドキュメントのサムネイルを確認したり、プレビューを表示させることも可能。中川氏は「くどいようだがWindows Aeroがオフでもこれらの機能は利用できる」と強調した。検索のインデックス作成は常時バックグラウンドで行われるが、I/O系ツールの優先順位を調整する「ロープライオリティI/O」機能があり、エンドユーザーが利用するアプリケーションには影響を与えないという。
中川氏は、1つのファイルを複数のユーザーが共有し、共同作業ができる「Windows Collaboration Meeting Space」のデモも行い、Vistaのビジネス機能を説明した。VistaにはPCの壁紙を一時的に無地にしたり、プレゼンテーション中のセキュリティアラートを無効にする「プレゼンテーションモード」もある。マイクロソフトは「Windows Vista Product ガイド」の日本語版も今週末に公開する予定。
(@IT 垣内郁栄)
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