アドオン開発なしで超短期開発、SAP開発の常識崩れる?
2006/10/3
ベリングポイントとSAPジャパンは10月2日、全日空商事の紙パルプ/直販事業の新営業システム「ATLAS」を構築したと発表した。構築期間は業界標準の約半分となる5.5カ月。両社は「全日空商事が非常に協力的だったうえにアドオン開発をほとんど行わないことで、短期開発が可能だった」としている。
ベリングポイント シニア マネージャー 犬飼仁氏 |
SAPの開発は1年以上かかるケースがほとんど。「会計などの場合は平均すると1年くらい」(SAPジャパン)という。全日空商事が導入したのは商社向けの国内外取引管理ソリューションの「SAP Global Trade Management」(SAP GTM)。全日空商事は当初、SAP R/3の購買/在庫管理モジュール(MM)と販売管理モジュール(SD)を中心に、仕入れから販売までを一元管理するシステムを構築しようとしていた。しかし、ベリングポイントが「商社に限るとMM、SDには限界がある。SAP GTMに取り組んでいかないと厳しいと提案した」(ベリングポイント シニア マネージャー 犬飼仁氏)。
ただ、全日空商事には時間がなかった。カットオーバーは2006年4月を予定していて、後にずらすのは難しかった。ERPシステムの導入では企業の既存ビジネスプロセスに合わせてアドオン開発を行うのが一般的。アドオン開発でERPシステムに変更を加えて、使いやすいシステムを完成させるとも言える。しかし、アドオン開発の問題は開発が長期間になり、コスト増になりやすいこと。システム構成が独特になり、バージョンアップが難しくなる面もある。
そのため全日空商事はアドオン開発をほとんど行わないことを決断。開発の短期化を狙った。さらにアドオン開発を行わないシンプルなソリューション構成を選択したことで、カットオーバー後のシステム保守・運用を自由に選べるようにした。犬飼氏は「アドオン開発を少なくすることでベンダの縛りがなくなる。将来の運用コストをいかに下げるかを提案した」と語った。カットオーバーまでの開発コスト(ライセンス料を含まず)は数億円。短期開発によってコストを抑えた。
アドオン開発を行わない場合は、既存のビジネスプロセスを変更し、SAP GTMが定めるビジネスプロセスに合わせる必要がある。「いかに業務を変えてもらうかがポイントだった」(ベリングポイント ディレクター 宮地秀敏氏)。ベリングポイントは全日空商事のエンドユーザー部門に事前のトレーニングを実施。「プロジェクトと平行してエデュケーションを行ってエンドユーザーの意識を変えていった」(宮地氏)。
一方で、「顧客企業のトップやプロジェクトマネージャの意識は本当に変わってきた。ビジネスプロセスを変えていこうという意識が非常に強い」(宮地氏)といい、既存のビジネスプロセスにとらわれずに、効率的なビジネスプロセスを求める姿勢も見られたという。
プロジェクトは全日空商事の企画室 IT推進チームが中心となって進めた。紙パルプ事業、直販事業にも専任のメンバーを置き、エンドユーザーを巻き込む形で進めた。従来はパルプ事業がレガシーシステム、直販事業が「Microsoft Access」を使っていたが、ATLAS導入で取引先、仕入先、契約単位での収益が詳細に把握できるようになったという。また、業務フローの透明性が向上し、入力ミスなどが減少した。
(@IT 垣内郁栄)
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