[Analysis]
技術職と一般事務職の給与を比べてみると
2007/12/10
「欧米の研究職は一般事務職に比べて2.13倍の報酬を得ているのに対し、日本の研究職は1.18倍でしかないという報告もある」。12月7日付の日本経済新聞の朝刊コラム「春秋」が一部で話題を呼んだ。日本の子供の数学、理科の応用力が下がっていることや理科離れが進んでいる背景には、研究者や技術者を正当に評価しない企業や社会の風潮があると指摘する内容だ。思わずうなずいた人も多かったのではないだろうか。
日経コラムのソースは、平成14年度の「科学技術の振興に関する年次報告」(年次報告)のようだ。年次報告は人事院の「職種別民間給与実態調査(平成13年度)」を基に、日経コラムが引用した研究職だけではなく、技術職の日米の給与格差も掲載している。米国の技術者の平均賃金は一般事務職と比べて約1.65倍。対して、日本では約1.11倍という。研究職ほどではないにしても、正当に評価されているのかというと疑問に思う人は多いだろう。
年次報告はまた、研究開発を行っている民間企業の65%が研究職とそのほかの職種で平均賃金に差がないという結果も記している。研究職の平均賃金がほかの職種よりも高いと答えた企業は約11%。年次報告は「企業においては、研究者をその他の一般的な社員と賃金面でほとんど区別をしていないことが分かる」として、「優秀な人材を科学技術系の職種に惹きつけることを妨げる要因となると推測される」と指摘している。日本は一応、科学技術立国を標榜しているが、その足元には寒風が吹いている。
日本企業はゼネラリスト指向が強く、専門職の人間を正しく評価し、活躍の舞台を用意できないとの意見もある。企業の成長にITをはじめとする技術革新は欠かせないとの考えは広まってきたが、日本企業のIT投資マインドは主要国の中で最低。愛想を付かした技術者の「頭脳流出」はすでに起きている事態だ。
日経コラムは、医学部を卒業した生物製剤課長だけが起訴され、文系出身の上司は「専門的知識や判断能力がない」として責任は問われなかった厚生労働省の薬害エイズ事件を振り返り、「知識も能力もないとされる人々が、局長や次官の地位を上り詰めて行く。一方で知識を備えた人々は、時に貧乏くじをひかされる」と記している。貧乏くじを引く前に、海外やオープンソースコミュニティ、そして技術者を正しく評価する企業に亡命する技術者が増えそうだ。
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