[コラム:Spencer F. Katt]
トム・ジョーンズの代役

2004/3/30


 ベネチアン・リゾートのエントランスでタクシーを降りた吾輩は、ドアを開けてカバンを持ってくれたゴンドラの船長風の衣装を着たドアマンにチップを渡さず、そのままプレス関係者の集まる場所へ向かった。そこはマイクロソフトのイベントではおなじみの、息をのむほど豪華な至れり尽くせりのプレスルームだった。今回、吾輩が取材してきたのは、ラスベガスで開催された「Microsoft Management Summit」だ。

 いつものようにマイクロソフトのCEO、スティーブ・バルマーのエネルギッシュなワンマン“シルク・ドゥ・ソレイユ”(カナダ・ケベック州生まれのサーカス集団。キダム、サルティンバンコ、アレグリアで世界的に有名)キーノートを期待していたのに、彼が欧州委員会のマリオ・モンティ競争政策担当委員と独占禁止法違反の和解交渉を行うためにブリュッセルへ向かったと聞いて、吾輩はちょっとがっかりした。バルマーの代打として登場したのは、マイクロソフトのエンタープライズ・マネジメント部門担当副社長、キリル・タタリノフだった。まるでトム・ジョーンズの代役にジョン・テシュが出てきたようなものだな。大いに落胆した2000人の来場者は、タタリノフのキーノートを一斉にスルーした。吾輩もその中の1人で、とりあえずプレスルームに戻ろうと考えた。ところが、そんな状況に慌てたのがマイクロソフトだ。空席が目立つ会場へ記者たちを追いやるために、なんとプレスルームのドアをロックしたのだ。

 仕方なくホテルの豪華なイスに腰掛け、どうやって時間をつぶそうかと考えていると、携帯電話が鳴った。かけてきた友人の情報によると、スパム対策コンサルタント会社のISIPP(Spam and Internet Public Policy)が近く認定データベースの提供を開始するらしい。ふむ。まあ、確かにISIPPのCEOであるアン・ミッチェルはさまざまなブロッキング・サービスに精通しているし、MAPS (Mail Abuse Prevention System)で議論の多いブラックホール・リスト作成の法務ディレクターをしていた経験もあり、そうした面での法的知識も豊富だ。彼女の説明によると、ISIPPが提供する業界初のDNSクエリ対応データベースは、ISPに遮断するか受け入れるかを指示するのではなく、過去のメールの傾向やSender Policy Frameworkの公開記録、標準規範などに関するデータをベースに、受け入れるかどうかを判断できるものなのだそうだ。

 それはさておき、グランド・カナルの横をブラブラ歩いていると、運河に浮かぶゴンドラの中に友人がいるのを発見した。近くにいたウエイターからキャンティのボトルを奪い取ると、吾輩はゴンドラに飛び乗り、グラスをその友人に渡した。彼の情報によると、先週、HPとIBMがペレグリン買収で競っていると書いたが(「マイクロソフトの尻を蹴飛ばしすぎたら……」)、どうやら流れはビッグブルーに有利になりつつあるようだ。IBMはペレグリンの技術をサービスデスク・オペレーションに利用することができる。というのも、IBMの現行製品はメインフレーム・オリエンテッドで、柔軟性に欠けるからだ。もし他社がペレグリンを買収すれば、IBMはちょっと傷つくだろうね、と彼はいった。

 友人と別れたあと、吾輩はブラックジャック・テーブルに向かい、またしても一文無しになった。ただ、多少の幸運が残っていたのか、そこで2人の脆弱性管理の専門家から面白い話を聞くことができた。元ハッカーで有罪判決を受けたケビン・ミトニックは現在、有名ハッカーの逸話を集めた書籍を編集しているらしい。ところが皮肉なことに、自分自身の話については、裁判などの関係から2010年まで公にすることができないのだそうだ。しかし、どんな本? 「私の愉快な裏口侵入物語」なんて、リーダース・ダイジェストみたいなやつかな……。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

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