@ITリサーチ
スパム対策についてのアンケート結果発表
〜スパムメールの受信/対策状況とは?〜
小柴 豊アットマーク・アイティ
マーケティングサービス担当
2004/11/27
ここ数年広告などの目的で、見ず知らずの不特定多数ユーザーに送信される電子メールが増えているという。“スパム”と呼ばれるこれら迷惑メール/ジャンクメールは、コンピュータ・ネットワークにどのような影響を及ぼし、管理者はどう対応しているのだろうか? アットマーク・アイティとシマンテックが、企業/ISP/学校/自治体のネットワーク業務関係者を対象に実施したアンケートから、その状況をレポートしよう。
■スパムメールの平均受信率は約2割
はじめに回答者のネットワークが、現在どの程度スパムを受信しているのか確認しておこう。日ごろの受信メールに占めるスパムの大まかな割合を尋ねたところ、「10%程度」との回答が最頻値になり、全体の平均スパム受信率は約20%となった(図1)。全体的に見ると、国内のスパム受信状況は“そろそろ目立つようになってきたが、いまのところその対応に忙殺されるほどではない”といったレベルにあるようだ。
図1 スパム受信状況(N=1310) |
参考までに図1のデータを調査対象の業種別に見ると、その平均受信率はそれぞれ以下のとおりだった。
- 企業 :17%
- ISP :35%
- 学校 :25%
- 自治体 :17%
ネットワークの上位層に位置するISPでは、一般企業や自治体の約2倍に及ぶスパムを受信していることが分かる。今後は全体的なスパム受信率の上昇が予想されるだけに、ISPの現状は“スパムの先行指標”として考えることができそうだ。
■最も懸念されるスパムの影響/被害はウイルス感染
ところでネットワーク管理者は、スパムによる影響/被害について、現在どのような問題意識を持っているのだろうか? 複数回答で尋ねた結果、全体の約7割が「添付ファイルなどによるウイルス感染」を挙げたほか、同5割前後が「不要メールの増加による受信者の業務生産性/効率の低下」「トラフィック増によるサーバ/ネットワークへの負荷増大」および「詐欺サイトへの誘導などによるプライバシーや機密情報の漏えい」に対する懸念を示している(図2)。
図2 懸念されるスパムの影響/被害(複数回答 N=1310) |
さて上図ではウイルス感染への懸念が突出しているが、それならウイルス対策さえきちんとしておけば、スパム被害は防げるのだろうか? ここでスパム受信率の高い(30%以上)層における回答をピックアップしたところ、「業務生産性/効率の低下」(66%)や「サーバ/ネットワークへの負荷」(65%)のポイントが、トップの「ウイルス感染」(72%)と接近している(=スパム専門の対策が必要となる)ことが分かった。現在の“潜在的な脅威”は、今後のスパム受信状況によって、一気に顕在化する危険性を秘めているようだ。
■システム的なスパム対策は進んでいない
では次に、現在のネットワークにおけるスパム対策の状況を見てみよう。図3のとおり、「スパム対策専用ツールを導入している」のは、回答者全体の12%にとどまった。逆に全体の3人に2人が「クライアントPC側で個々に対応している」または「特に対策は行われていない」と答えているように、システム的にスパム対策を実施している企業/団体は、いまだ少数派であるもようだ。
図3 現在のスパム対策状況(N=1310) |
現時点でスパム対策が進んでいない理由として、まず第1にスパム受信件数自体が多くないことにより、大きな被害/影響が表面化していないことが挙げられる。その一方で回答者からは、現状のスパム対策に関する疑問/不安の声も聞かれた。
- スパム対策専用ツールの相対費用が適切かどうか判断がついていない
- 送信側サーバに対して的確にSPAMの受信拒否ができる製品を思いつかない
- スパムとして処理すべきメールの特定の精度の確認ができない(例えば、誤消去などのリスク)
ではネットワーク管理者は、スパム対策ツールにどのような機能やメリットを期待しているのだろうか?
■スパム対策専用ツールに求められる機能は判断ルールの自動提供
続いて回答者に今後スパム対策専用ツールを導入する際、重視する機能を尋ねたところ、「スパムかどうかの判断ルールが自動的に提供されること」に最も多くの期待が集まった(図4)。今後スパム受信件数が増えた場合、フィルタリング・ルールをその都度手動で設定していては、あっという間に管理工数が増大していくだろう。現在のウイルス対策ツールで定義ファイルが自動更新されるように、スパム対策ツールにもオートマチックな運用が強く望まれているようだ。
図4 スパム対策専用ツールに求める機能(複数回答 N=1310) |
■スパム対策専用ツールに求めるメリットは正確であること
では管理者がスパム対策専用ツールに求める“メリット”とは、何だろうか? 図5を見ると、トップには「スパム検出が正確であること(誤認が少ないこと)」が挙げられ、以下「管理がしやすいこと」「低コストであること」が上位に続いている。機能面で「ルールの自動提供」が実現できたとしても、検出の精度が低ければ、ビジネスにマイナスのインパクトを与える恐れが出てくる。図4と図5の結果を合わせて考えると、“楽に、正確に”スパム対策を行えることが、理想的なツールの条件といえる。
図5 スパム対策専用ツールに求めるメリット(複数回答 N=1310) |
世界的なトラフィックの傾向を見ると、日本でスパム対策が必要になるときも、そう遠い未来ではないだろう。管理者やユーザー業務の生産性低下を防止するためにも、いまの段階から情報収集や計画を始めておくことが重要ではないだろうか。
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