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中堅スーパーのデータ活用物語
〜はじまりはExcelのデータだった〜
「BIなんて人ごと」と思っていたシステム管理者の挑戦

第5回 BIによる在庫の適正化に挑戦


 県内で全10店舗を運営する地方の中堅スーパー「フクフクドー」。半信半疑で取り組みを開始したBIの導入が予想以上の成果を上げ、本社内での情報共有システムの整備にまで発展した。取り組み当初には想像もしていなかった成果に大きな達成感を味わっていた担当の番次郎といぶきに、経営トップから次の課題が提示された。これまでの取り組みによってIT部門の実力が認められたのか、ついに各店舗から上がってくるPOSデータを有効活用したいという話が出てきたのだ。もちろん予算や人手といった制約条件がある中で、新しいシステムの構築が要求されている。

この物語はフィクションです。登場人物や団体、文中で使用するデータなどは、すべて架空のものです。

 登場人物

番次郎(ばんじろう)。31才。「フクフクドー」情報システムの実質的な管理責任者

いぶき。25才。修行中ではあるものの、チャレンジ精神旺盛な新米システム管理者

椎来 太郎(しいくる・たろう)。31才。番次郎と同期入社の営業企画部課長

<登場人物紹介と前回までのあらすじ>

店舗での情報共有を実現したい

 Excelによるデータ分析からスタートして、営業企画部内での情報共有システムにまで発展させることができた番次郎といぶきにも、日常業務に追われる日々が戻ってきていた。そんなある日、経営会議に出席を求められた番次郎。自席に戻って来るなり、腕組みをして考え込んでいる。

 

どうしたんですか? 会議で何かありました?

     
 

あぁ。実は各店舗の店長向けに情報共有システムを拡大展開したいといわれたんだ。ちょっと検討してみてくれってことだったが、社長も乗り気みたいだし、何とか形にしないといけないんだけど……。

この前の営業企画課内の情報共有システムに、各店舗からアクセスできるようにするってことですか? それだけならネットワークの設定変更とアクセス権の設定で実現できますけど。

もちろん、それだけじゃないさ。店長が見たいデータを用意しないと意味がないだろう? 元々は各店舗での仕入れ効率をもっと高められないか、というのがずっと課題になっていてね。この機会にBIで何とかできないかって話なんだ。

 

ずいぶん大きな話になってきましたね……。そろそろ予算をちゃんと確保して、専門のシステム・インテグレータに依頼しないとダメでしょうか。

     
 

予算があればその手もアリだけどねぇ。

 地方の中堅スーパーであるフクフクドーは、これまで堅実な経営を続けてきたが、ここにきて事業環境は厳しさを増している。基幹店舗の近くに大型ショッピング・モールの建設計画が浮上したり、全国チェーンの大型スーパーが商圏内に出店を検討中との噂も聞こえてきたりしていた。

 

そんな話がでているんですか。

     
 

もちろんまだ確定した話じゃなく、あくまでも可能性のレベルだけどね。ただ、経営努力は必要だってことで、大型スーパーが進出してきても対抗できるように、あらかじめ弱点を克服しておこうという方針になったらしい。

     
 

それでBIですか。

     
 

規模の経済では大手チェーンに対抗するのは大変だし、こちらは地域性を活かしてきめ細かな顧客対応を大事にしつつ、可能な限り効率を高めていこう、というのが大方針なんだけど、それをどうシステム化するかが問題なんだよ。

 2人で考えてみても煮詰まるばかりということもあり、番次郎といぶきはまたしても椎来に相談してみることにした。

 

もう話が動き始めたのか。実は、各店舗でBIを活用したら、って話は、僕のところから経営会議に提案したんだ。これまでのシステム整備でいい結果が出たからね。

     
 

そういうことなら、事前にいっておいてくれよ。それはともかく、店舗にどんな情報を提供すればいいか、何か考えていることがあるのか?

     
 

ああ。正直にいうと、斬新なアイデアがあるわけじゃないんだ。ただ、フクフクドーではこれまで、トップレベルでも月次決算をベースに戦略を立てていて、仕入れの増減などは現場の店長に任せきりだったからね。店長はもろもろの作業で多忙の中、しめきりに追われて発注作業を行っているため、例えば「1週間分だから7個」といったような大雑把な発注を繰り返してしまうところがあって、結果としてこれが欠品や過剰在庫につながっているんだ。情報分析することの価値は、本社内では理解されてきたみたいだし、ここで一気に店舗レベルにも情報を提供して、店長の判断材料として活用してもらい、発注の精度を上げてもらえばいいんじゃないかとね。

     
 

なるほど。ということは、POSデータを各店舗で店長が参照できるようにすればいいってことかな。

     
 

さすがにPOSの生データをそのまま出しても、店長にそれをじっくり眺めている時間があるとは思えないよ。実は、ボードメンバ向けのPOSデータから売上げを算出するレポートを元にPI(Purchase Index)*1を計算して、仕入れ個数の目安を算出するExcelファイルを作ってみたんだ。

     
*1 購買指数。客数1000人当たりの売上高や売上点数の指標。PI=買上点数÷客数×1000で表される。スーパーマーケットなどにおいて、仕入れ数量や価格付けなどの際に参考にされる数値。

椎来が作ったPOSデータを加工したExcelファイル
POSデータから算出したPI値を利用し、来客数から販売見込み数を割り出せるようにしたシート。店長は、次週の来客数をある程度予測することで、PI値(最小、平均、最大)から、商品の販売見込み数を調べられるようにしている。

 

すごい。そんなことまでできているんですか。

     
 

あまり大げさなものじゃないけど、品目ごとに集計して、PIなどの一般的な指標を計算しているんだ。あくまで参考でしかないけれど、店長は翌週の来客見込みを決めることで、PI値からおおよその商品販売見込み数を確かめられる。PI値は全店舗のPOSデータから算出したものなので、それなりに精度の高い予測ができると思う。これを各店舗の店長に使ってもらえば、仕入れのロスを減らせると思うんだ。

     
 

なるほど、分かりました。方向性が見えてきましたね。

Excel Serviceを使ってみる

 椎来との打ち合わせで方針が見えてきたので、番次郎といぶきは早速具体的なシステムの検討を始めた。

 

どうやら新しいBIアプリケーションを作る必要はないようだから、その点はちょっと安心だな。

     
 

そうですね。今回は情報共有システムの整備に専念すればよさそうです。

 POSシステムのデータは、本社内の業務サーバに逐次格納されているので、BI用のSQL Serverにこのデータをコピーして分析を実行すればよさそうだ。データ・コピーのタイミングなどは検討の余地があるものの、分析自体は椎来が作ったExcelシートをそのまま使えばよい。ただ調べてみると、各店舗のPCの整備状況はまちまちで、Excelのバージョンが古く、椎来の作ったExcelファイルが直接開けないことが分かった。

 

困ったな。本社内の環境整備の状況は把握していたんだが、今後は各店舗のIT環境も整備対象に含めていく必要があるなぁ。

     
 

店長によって、PCの活用レベルにだいぶ幅がありますし、これまで、店舗の情報化はどうしても後回しにされがちでしたから……。残念ながら、共通基盤と呼べるレベルにはありませんね。

     
 

とはいえ、PC自体は各店舗に配置されているし、ネットワーク環境もあるわけだから、これを活用する方向で考えよう。各店舗のPC環境を一気に刷新するというわけにもいかないからなぁ。

     
 

そうですね。まずは現状でいい手がないかどうか調べてみます。

 長い目で見れば、各店舗のPC環境を統一し、最新のExcelをインストールして店長がそれぞれ独自の分析を自分で実行できるようにする方がよさそうだ。だが、時間的にも、予算的にも、こうした抜本策を採ることは不可能だった。しかも、POSのデータを各店舗に配信するのはセキュリティの問題もあるので、データ自体は本社において、各店舗からリモートで参照する方式にする方がむしろ都合がよい。

 

本社内での情報共有のためにMicrosoft Office SharePoint Server 2007(MOSS 2007)が導入されていますから、各店舗での情報共有にもこれを活用するのがよさそうです。営業企画課のExcelシートを共有するには打って付けの機能として、MOSS 2007のExcel Serviceが使えそうです。

     
 

なるほど。Excel Serviceを使えば、各店舗のPCにExcelがインストールされていなくても、WebブラウザだけでExcelファイルを開くことができるからな。

     
 

はい。データ自体は本社のMOSS 2007上にありますし、ここで外部データの参照設定をしておけば済みます。各店舗の環境変更はほとんど必要ないですし、これが一番簡単に実現できそうですね。

     
 

よし。ではその方向でプランをまとめてみよう。一応椎来にも話しておくかな。

データが業務の現場を変える

 プランの大枠が固まったところで、再び椎来のもとを訪ねた番次郎といぶき。椎来からも賛意が得られた。

 

各店舗から本社のMOSS 2007にアクセスしてくれば、われわれが見ているのと同じファイルが見られるということだね。


椎来の作成したExcelファイルをMOSS 2007で共有可能にした
椎来の作成したExcelファイルをMOSS 2007上に発行し、Excel Serviceを利用してWebブラウザだけで閲覧できるようにした

 

はい。ただローカルにインストールされたExcelとは違って、データの変更などには制限があります。でも見るだけなら問題ないですし、ビューを変えるといった形でなら十分に役立つはずです。

     
 

そこは問題ないな。POSデータを書き換える必要はそもそもないわけだし。

     
 

ほかに何かないかな。要望とか、見直すべきところとかは。

     
 

そういえば、POSデータは最新のものが見られるのかな。営業企画課では、月次でまとめたデータをコピーしてきてボードメンバ向けの売上げレポートを作成していたんだけど、店舗の仕入れなどの参考にするとなると、月1回の更新では少し遅すぎるよね。

どうせなら、リアルタイムに近い形でデータを参照したいですよね。ただ、業務サーバに負荷が掛かる心配があるので、まずは毎週1回、BI用のSQL Serverにコピーする方向で考えましょう。

まずはそれで始めてみようか。店長たちがこのシステムを使いこなしてくれるようになったら、更新頻度を高めることを検討しよう。

でも、肝心の店長たちはこのシステムを使ってくれるのかなぁ。

 

大丈夫だと思うけど、最初は使い方を丁寧にレクチャーする必要があるだろうね。

 システムが完成したところでいぶきが各店舗に出かけ、店長に使い方を説明して回った。これまでは店舗での売れ行きを肌で感じ、経験に基づいて仕入れ量などを調整していた店長たちだったが、意外にもBIデータの提供は好評だった。

 

実はもっと否定的な反応があるかと思って心配していたんですが、意外にもすごく喜ばれたんですよ。

そうか。さすがだな。データを活用してくれそうじゃないか。

そうなんですよ。多くの店長は経験豊富だし、新参者のITなんて信用してくれないんじゃないかと不安だったんですが、よけいな心配でした。みなさん仕入れには苦労していて、むしろ「こんな便利なものがあるなら、もっと早く作ってくれればいいのに」と文句をいわれたくらいです(笑)。椎来さんのところにも、さっそくレポート追加の要望が届いているらしいですよ。

そうか。これを受けてまた経営会議から新しい機能拡張の要望が来るかもしれないなぁ。

 

次は何をしましょうか。楽しみですね。

 本社にあったデータを現場に提供することで、現場のアイデアを形にしていく新しいフローが回り始めたフクフクドー。一連のBIシステム構築の経験から、社内に元々あったデータや現場の力を活かすことで、多額の予算を使わなくても業務改善は十分可能だということを、番次郎といぶきは実感していた。経営環境は相変わらず厳しいが、いまのフクフクドーなら何とか乗り切って行けそうだ。

第6回に続く>
 
バックナンバー 「中堅スーパーのデータ活用物語」
第1回
いままでどおりのExcel分析じゃ足りないの?
第2回
Excelでお手軽データマイニングに挑戦!
第3回
商品売上の「見える化」に挑戦!
第4回
レポートの共有に挑戦!
第5回
BIによる在庫の適正化に挑戦
第6回
マイクロソフトのBIソリューションを総括する

提供:マイクロソフト株式会社
企画:アイティメディア 営業局
制作:デジタル・アドバンテージ
掲載内容有効期限:2008年3月31日
 
関連リンク
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