こうして新たに構築したシステム基盤の上で業務を運用してきた北九州市だが、中核となるデータベース基盤で徐々にパフォーマンスの問題が顕在化する。
「このデータベース基盤は当時最速の5GHzのCPUを搭載したUNIXサーバでした。メインフレームに劣らぬパフォーマンスという触れ込みで、ベンダーの工場に足を運んでテストするなどして選んだマシンです。ところが、使い続けていくうちに処理性能が逼迫(ひっぱく)し、夜間バッチ処理が規定時間に終わらなかったり、日中の窓口業務でも検索処理が遅かったりといった事象が増えてきました」(三浦氏)
北九州市のシステム運用では、毎朝4時に全てのシステムを再起動し、バックアップ取得を行ってきた。つまり、毎朝4時にはどんなに重要なバッチ処理を実行していようと強制的にシステムがシャットダウンされる。一部のバッチ処理がこの時間までに終わらず、最新のデータが反映されないまま翌日の業務を迎えるといったケースが増えていたのだ。
バッチ処理遅延の原因としては、システムで扱うデータ量の増大の他、一部ベンダーのOracle Databaseに関するスキル不足などが考えられた。サーバの搭載メモリを上限まで増やすという対処を行ったが解消できず、Oracle Databaseに長けたエンジニアのいないベンダーでは、改修や障害発生時の対応に多くの時間を要するといった事態も起きていた。
これらの課題の解決を模索する三浦氏らは、UNIXサーバの契約期間が満了する2017年にデータベース基盤を刷新することとし、2014年から移行先の検討を始める。次のデータベース基盤でもOracle Databaseを使うことは決めていたが、それをどのハードウェアで動かすかが問題だった。
「このころ、ちょうどOracle Databaseのライセンス料が値上がりする話を聞き、それに文句を言うために日本オラクルの担当者に会いに行きました。その際、当市が直面している問題の解決に最適とOracle Exadataを紹介されました。『安くしろ』と言いに行ったのに、逆に一番豪華なものを勧められたのです(笑)」(三浦氏)
最初に紹介を受けたとき、三浦氏は「そんなに高いものは、とてもじゃないが無理だ」と突っぱねたが、幾度か話を聞くうちにOracle Exadataならば性能やサポート体制が段違いだと気持ちが傾いたという。
「『バッチ処理が間に合わない』『オンライン画面が遅い』という問題が複数の業務で生じており、処理速度の向上は必ず実現したいと考えていました。IAプロセッサを搭載したブレードサーバの提案もありましたが、当時最速のCPUを搭載したUNIXサーバでも性能が不足していたことから不安でした。その点、Oracle ExadataはOracle Databaseを最速で動かすために開発されたマシンであり、導入事例を見てもすごい効果を出しています。Oracle Databaseをメインで使う当市としては、これを入れれば多くの問題を解決できると考えました」(三浦氏)
Oracle Exadataの高い処理性能ならば、セキュリティ面の要件もクリアできると判断した。扱うデータやシステムの形態に応じてネットワーク分割を行い、セキュリティを保つことが必須要件であったが、Oracle ExadataのNIC数は4という制限がある。UNIXサーバでは10 OSに分割していたが、これは一部のOSで高負荷処理が発生した際の他業務への悪影響を封じ込めるためのものだ。Oracle Exadataの圧倒的な処理性能ならば高負荷状態が長時間続く心配はなく、Oracle VMによる4分割でもセキュリティ強度を維持できる。
腹を決めた三浦氏らは、日本オラクルのコンサルタントによる性能見積もりによってパフォーマンスを確認した上で、2015年6月にOracle Exadata X5-2 Eighth Rack 1台の導入を決めた。
Oracle Exadataへのリプレースは、マイナンバー対応のためのシステム改修と併せて行われた。また、このタイミングで市庁舎のサーバルームに設置していたサーバ類を全て民間のデータセンターに移設。2015年11月にOracle Exadataも同センターに搬入され、新基盤の構築が始まる。そして、この作業が2016年4月に終わるとベンダー各社に開放し、アプリケーションの移行作業がスタートした。
「今回のシステム刷新では、基盤リプレースに加えて、職員が利用する1800台のシンクライアントOS(Windows)のアップグレードも実施しました。その中で懸念されたのが、JIS97からJIS2004への文字コード変換です。最も重要な住民情報系の移行時には大量のデータ移行とともに文字コード変換を行う必要があり、これを2日間の閉庁日に全業務で抜け漏れなく実施することが必須だったのです。そこで各システムの所管職員やベンダーを集めた説明会には日本オラクルのコンサルタントにも参加していただき、Oracle Exadataへの移行に際しての注意点や効率的なコード変換の方式などを細かく解説していただきました。これはベンダー各社が安心して作業を進める上でも非常に効果的でした」(三浦氏)
移行作業はスムーズに進み、まず2017年1〜5月に内部事務系の25システムを段階的に移行。2017年7月には住民情報系35システムの一斉移行に成功し、プロジェクトは無事に完了した。これにより、民間データセンターにおける基幹システム運用となり、名実ともに国が推進するクラウドコンピューティングの形態となった。なお、この移行に伴い、Oracle Databaseのバージョンは10gから12c、アプリケーションサーバとして利用するOracle WebLogic Serverは12c、総合窓口のワークフロー管理に用いるOracle BPEL Process Managerも12cへとアップグレードしている。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月19日
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