メーリングリストの構築と運用(後編):実用qmailサーバ運用・管理術(5)(3/3 ページ)
今回はezmlmを拡張して、より高度で便利な機能を実現してみよう。ezmlmにidx-patchを当てることにより、Subjectの加工やダイジェストメールの生成などが可能になる。
まとめと次回予告
前・後編2回に分けてezmlmをご紹介しました。idx-patchを使用することで、MLに必要と思われる機能は十分に実現できると思います。しかし、「メールサーバを運用し始めたばかりだ」という方は、もう少し多くのことを経験する必要があります。
情報共有型MLでは、2つの側面から管理者というものを考える必要があります。まず、サーバを管理すること。これは多くを語るまでもなく、サーバ自身の構築から保守まで、メールの送受信に対し責任を持ち、サーバが正常に運用されるよう日々任務を全うします。
もう1つは、MLというコミュニティをいかにはぐくんでいくか、見守る立場としての管理者です。不特定多数を抱えるMLの場合、どんなメールクライアントが使われ、でたらめな設定がされているか分かりません。サーバ側でできる対策は施しておくに越したことはありませんが、できる範囲で参加者に改善を促したりするのも管理者の仕事です。コミュニティの管理に専属担当者を就けている例をよく見ますが、それで十分です。ezmlmは簡単に入会/退会が行えますが、それさえもできない人がMLに参加してくる可能性もあります。コミュニティをはぐくむという観点からも、手間をかけて正しい方向へ導いていきましょう。
情報発信型MLを運営する場合、勝手な登録だけは避けましょう。ましてや、出所不明のメールアドレスリストを入手してダイレクトメールを送る行為にここで紹介した方法を使うのはやめましょう。十分SPAM行為に属します。SPAM対策にどれほど労を要するかは皆さんもご承知だと思います。有益な情報かどうかは、受け取り側が判断するものであり、送信者側の勝手な価値観でメールを送るのは問題です。顧客に対して企業情報を発信する際もまたしかりです。顧客の同意を得たうえで行い、ML購読を解除できるように、送信するメッセージの中に必ず案内を載せておきましょう。できれば、Webのインターフェイスが用意されており、フォームボタンをクリックするだけで購読解除ができる仕組みがあれば理想的です。この辺りのWebと連動したメール管理については、次回以降で触れていきたいと思います。
次回は、バーチャルドメインメールの運用方法をご紹介します。jp汎用ドメインも解禁され、1人1ドメインというのも珍しくなくなってきました。物理的なサーバは1台でも複数のドメインを管理できるバーチャルドメインは、運用コストを考えると最適な選択です。MLに続き、qmailがバーチャルドメインでもたけているところをご紹介します。
設定ファイル一覧
ファイルディレクトリ名 | 説明 | 使用するプロセス |
---|---|---|
DIR/ | 設定ファイルの保存先(例:/var/ezmlm/ml2) | |
DIR/Log | ML参加(subscribe)、解除(unsubscribe)の記録 | |
DIR/archive/ | アーカイブの保存先 | ezmlm-manage |
DIR/archived | このファイルが存在する場合、アーカイブ保存を行う | ezmlm-send |
DIR/bounce/ | MLに登録されているにもかかわらず、メールが戻ってきたものを10日間保存し、10日たっても送信できなかった場合、強制解除の最終通告を行う | ezmlm-warn |
DIR/editor | MLあてのメールの処理 | |
DIR/headeradd | 投稿メッセージに強制的に付加されるメールヘッダ | ezmlm-send |
DIR/headerremove | 投稿メッセージから強制的に削除されるメールヘッダ | ezmlm-send |
DIR/inhost | MLの受信ドメイン名 | ezmlm-manage |
DIR/inlocal | MLの受信ユーザー名 | ezmlm-manage |
DIR/key | 確認キーを作成する際に利用する一時的なファイル | ezmlm-send |
DIR/lock | アーカイブ保存やメンバーリストの編集など、排他制御を適切に行うための空ファイル | |
DIR/mailinglist | MLに流されるメッセージのヘッダ情報に表示される内容 | ezmlm-manage、ezmlm-send |
DIR/manager | 制御コマンド用メールの処理を記述 | |
DIR/outhost | MLの送信ドメイン名 | ezmlm-manage、ezmlm-send |
DIR/outlocal | MLの送信ユーザー名 | ezmlm-manage、ezmlm-send |
DIR/owner | MLオーナーあてに来たメールの制御を行う。通常はMailboxに保存する | |
DIR/public | このファイルが存在する場合、MLに登録されていないアドレスからのアーカイブの取り出しや管理要請が可能になる | ezmlm-manage |
DIR/sublist | MLをサブリストとして使用する場合に使用。1行目に親MLを指定 | ezmlm-send |
DIR/subscribers/ | 登録者リストを収めるディレクトリ | |
DIR/text/ | 登録/解除など、MLからの自動応答メッセージに使用する各ひな型を保存するディレクトリ。インストール時にezmlmrc.jpが使用されている場合は日本語に翻訳されたファイルに置き換わる。各ひな型においては、次のニーモニックを値として使用できる !A(MLのアドレスに置き換える) !B(ML解除・登録確認メールの送り先アドレスに置き換える) |
ezmlm-manage |
DIR/text/bottom | MLの案内など、応答メッセージの下部に付加されるテキストのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/bounce-bottom | 何らかの理由で送信できなかったメッセージを差し戻す場合、元メッセージを添付する際に使用 | ezmlm-manage |
DIR/text/bounce-num | 配送に失敗したメッセージの番号を知らせるメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/bounce-probe | 送信に失敗したためMLから自動削除されることを伝える際に使用するメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/bounce-warn | 送信に失敗したことを連絡するメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/get-bad | アーカイブ取り出しで、指定されたメッセージがなかった場合に送られるメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/sub-bad | 確認キーが違うためにML登録が認められなかった場合に送られるメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/sub-confirm | ML登録の確認を促すメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/sub-nop | すでに登録されているアドレスを登録しようとした場合に送られるメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/sub-ok | ML登録が承認された場合に送られるメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/top | MLの案内など、応答メッセージの先頭に付加されるテキストのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/unsub-bad | 確認キーが違うためにML解除が認められなかった場合に送られるメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/unsub-confirm | ML解除の確認を促すメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/unsub-nop | 登録されていないアドレスを解除しようとした場合に送られるメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
DIR/text/unsub-ok | ML解除が承認された場合に送られるメッセージのひな型 | ezmlm-manage |
表 設定ファイルおよびディレクトリ |
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