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特集:IP技術者のためのSAN入門ネットワーク・ストレージの新潮流を学ぶ(4/5 ページ)

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Part.4 SANの導入事例を見てみよう!

 本章では、日本国内におけるSANの導入事例を見ていきます。日本においてもSANの導入事例は、着実に増えてきています。

サーバ・フリー・バックアップ

 これは、ある大学の事例です。各サーバとストレージ装置をファイバ・チャネル・スイッチで接続し、SANを構築しています。ハイエンド・ディスク・アレイ装置(ストレージ装置)のローカル・ミラーリングの機能と、バックアップ・サーバ上のソフトウェアを組み合わせることによって、バックアップ・ウィンドウ(バックアップ時間)を4時間から10分へと大幅に短縮することができました。バックアップには、TCP/IPによるLANではなく、ファイバ・チャネルによるSANを使用しているため、高速なデータ転送が可能になっています。このことが、バックアップ・ウィンドウ短縮の大きな要因になっています。

ストレージ統合

 これは、ある金融会社の事例です。多数のUNIXサーバとディスク・アレイ装置をブロケードのファイバ・チャネル・スイッチで接続してSANを構築しています。それぞれ4つずつのファイバ・チャネル・スイッチからなる2つのファブリックを構成することで、システムの拡張性を高めるとともに、SANそのものの冗長化を行っています。ストレージを統合してディスク・ボリュームを一元管理することにより、データの増加に柔軟に対応でき、ディスク・ボリュームの有効活用が可能になりました。結果として、これまでシステム管理者2名分のリソースを100%必要としていたところが、10%だけで済むようになりました。

ストレージ統合の例
ストレージ統合の例

マルチノード・クラスタリング

 これは、ある製造会社の事例です。この製造会社では、以前は8台のサーバを使用して4つの異なったクラスタリング・システム(稼働系サーバ4台、スタンバイ・サーバ4台)を構築していました。各クラスタリング・システムはDASによりストレージ装置を共有していましたが、これらを5台のサーバ(稼働系サーバ4台、スタンバイ・サーバ1台)に集約してSANに接続し、1つのクラスタリング・システムに統合しました。これにより、サーバの拡張性に優れたシステムを実現することができました。さらに、サーバの台数を8台から5台へと減らすことができたため、その台数分のハードウェアやソフトウェアのライセンス料、保守費用の削減も可能となりました。

リモート・ミラーリング

 これは、あるiDCの事例です。2つの異なるサイトにあるSANを、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置を用いて接続しています。WDM装置と組み合わせることによって、異なるサイト間でのストレージ統合を実現し、ディスクのリモート・ミラーリングを可能としています。これにより、一方のサイトに災害が発生してサーバやストレージ装置に障害が発生したとしても、もう一方のサイトにあるコピーされたデータからシステムの復旧が可能となり、ビジネスの停止時間を最小限に抑えることができます。これは典型的なディザスタリカバリソリューションといえるでしょう。

 また、サイト間でテープ装置の共有を行うことで、一方のサイトにあるテープ装置でもう一方のサイトのデータ・バックアップも可能になっています。

リモート・ミラーリングの例
リモート・ミラーリングの例

 SANの導入事例はいろいろありますが、まず一番分かりやすい効果としては、サーバ/ストレージの統合による管理や維持コストの削減です。まずは効果の分かりやすい部分から始めて、段階的に拡張していくことで、より多くのメリットを享受できるようになります。次の最終章では、SANに関する最新トレンドについて解説していきます。

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