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自分のキャリアを実現するチャンスITエンジニアの求人動向最前線(3)

自分がしている仕事にどれほどの求人があるのか、気になったことはないだろうか。また、その動向に変化はあるのだろうか。そんなエンジニアの求人動向を紹介する。

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 日本経済は回復基調にある。2005年12月の日本銀行の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)では、大企業製造業の業況判断指数が3期連続して改善。この業況判断指数とは、日銀の調査において「景気がいい」と感じている企業の割合から「景気が悪い」と感じている企業の割合を引いた値のこと。つまり「景気がいい」企業の方が多いのである。有効求人倍率も実に13年ぶりに「1倍」を回復した。マクロ経済的な景気回復基調の中、ITエンジニアの転職における市場動向はどうだろうか。今回は転職市場を取り巻く全体的な状況を、リクルートエイブリックのマーケットオフィサー 野村康也氏に聞いた。

ITエンジニアは空前の売り手市場

 2005年を振り返ると、ITエンジニアの市場動向はずばり「空前の『売り手市場』だった」(野村氏)という。しかも「2006年もこの傾向は続き、さらに加速する可能性がある」(野村氏)。多くのITエンジニアにとっては「いまこそが転職のチャンス」(野村氏)といえそうだ。

 「例えば『勤務条件の良い職場に変わりたい』『年収アップを図りたい』といった、さまざまな希望をかなえる転職もいま、このタイミングなら実現可能性が相当高いです。実際、プログラマ、システムエンジニア(SE)、プロジェクトマネージャ、ITコンサルタント、さまざまな職種において同業同職種で転職する場合、『年収ダウン』で転職をする人は、中高年のごく一部を除くと、いまは皆無ですね。特にJavaエンジニアなどは、とにかく求人が多く、空前の売り手市場になっています」(野村氏)。多くのITエンジニアにとって、転職に良い環境が整ってきたのだ。

 その背景には、1999年から2000年にかけてピークを迎えたITバブルから「5年が経過」したことがある。「いわゆる2000年問題が騒がれたり、ITバブルのピーク時に多くの企業が自社のITインフラの整備のためにシステム、ハードウェアを導入し、インターネットの利用で取引先との関係や社内コミュニケーションを良くしようと大きな設備投資を行いました。また携帯電話の普及が一気に加速したのもこの時期で、そのための大型の設備投資も行われました。それから5年が経過し、企業業績の回復とハードウェアのリースの償還期限とともにシステムの見直しが必要・必須となり、新規開発案件が急増したことがITエンジニアが多く求められた背景にあります」(野村氏)

 また、ここ5年間でインターネットを利用したオンラインショッピングや株取引(オンライントレード)が急速に拡大し、「多くの『B to C』企業がシステム増強に踏み切っている」こと、一方で「B to B」の分野でもインターネットを利用しての「業務効率向上のためのシステム投資が進められた」ことも、ITエンジニアの転職市場が活況を見せている背景にある。

 「どのシステムインテグレータ(SIer)、システム開発会社、ソフトハウスでもITエンジニアを欲しがっています。そのため年齢、スキル、経験などの採用条件も以前よりはややハードルが下がってきています」(野村氏)。例えば、2次請けや3次請けのSEやプログラマが「元請けに転職したい」と考えたとき、以前であれば経験不足などの理由で転職が困難であったかもしれないが、「いまなら可能」かもしれない。トライしてみる価値はあるだろう。

いま、自分のキャリアプランを見直すべし

 さて、空前の活況を見せているITエンジニアの転職市場だが、野村氏は「だからこそ、IT業界の動向をしっかりと見据えて、キャリアプラン、キャリアアップを真剣に考えるべき」だと指摘する。

 確かに求人案件はとても多い。とりわけJavaエンジニアなどは引く手あまたの状態だという。ただし、その内容を見ると「中・小規模で短納期の開発案件が多い」(野村氏)。つまり、SIerやシステム開発会社にとっては、利益率の大きな大規模案件が急増しているのではない。そのため、多くのSIer、システム開発会社は、いわば「もうけのあまり多くはない」「中・小規模で短納期の案件」を多く抱え、そのためにITエンジニアを数多く採用したがっているという図式なのだ。

 「いま、多くのITエンジニアは次々に新しいプロジェクトにアサインされるという状況ではないでしょうか。仕事は次々にくるし、案件が増えているから会社ももうかっている、給料もそれほど悪くはない、だから『いまのままでいいや……』。そう考えてしまうITエンジニアの人たちも多いと思います。仕事に追われると自分自身の市場価値を見失い、気が付くと条件の良い転職ができない年齢になってしまうことも多い。IT業界は景気が上向きで、仕事に追われるいまだからこそ、条件の良い転職をあらためて考えてみるタイミングなのです」(野村氏)

 それでは、自分自身のキャリアアップに結び付く、条件の良い転職を実現するにはどうしたらよいのだろうか。年収と仕事内容の両面から考えてみよう。まず、年収については、先述のとおり、現時点での状況では同業同職種での転職によって「年収ダウン」となることはなさそうだ。ただし「ITバブルのころのように『年収倍増』とはいきません。10%程度のアップといった現実的な条件が多い。どのSIerもシステム開発会社も中・小規模・短納期の案件で『忙しい割にはもうけがそれほど多くはない』状態なのです」(野村氏)。転職で年収は確かにアップするが、大幅増額はなかなか見込めない状況であるようだ。そのことはしっかりと認識しておいた方がよさそうだ。

「自分に合った会社」という選択肢もある

 仕事の内容については、プログラマからSEへというように「キャリアアップを図る転職は可能」、その一方で「スキルチェンジを伴う転職は『20代後半』まで」「ITエンジニアから異業種への転職を狙う転職は厳しい」状況にあるようだ。

 つまり、仕事内容に継続性があるのであれば、IT業界が空前の活況を見せているいまは比較的容易に転職が可能だ。しかし、スキルチェンジを伴う場合は、従来と同じように「年齢的な壁」がある。さらに、IT業界から異業種への転職は依然として厳しさが残る状況だ。

 これらの状況を踏まえて、野村氏は「転職に際しては、プログラマからSEへといったキャリアアップを目指す、あるいは2次請けから元請けにステップアップするといった考え方だけでなく、視点を変えて『会社そのものを選ぶ』時代でもある」と指摘する。「例えば、ITエンジニアから異業種への転職を考える人と面接すると、その悩みは『その人が在籍している会社の問題』である場合が多い。つまりキャリアチェンジをしなくても『会社を変えれば問題が解決する』。その意味でも会社選びは重要です」(野村氏)

 また、元請けや2次請けのSIerが、3次請けのシステム開発会社を「抜いて」、ダイレクトに小規模な専門性の高いシステム開発会社に仕事を発注するケースも増えてきていると、野村氏は指摘する。そのため「たとえ従業員が数名から50名程度のシステム開発会社でもダイレクトに元請けから受注できるのは、本当に技術力がある証拠です。そういった企業には優秀な経営者がいて、しっかりとした社員教育がなされ、小規模でも光っているところが本当に多い。そこで働ければITエンジニアの立派なキャリアになるでしょう」(野村氏)。さらに、「長時間労働」と「メンタルヘルス」といったIT業界で働くITエンジニアにとっての大きな問題、とりわけ「心のケア」についてどういった取り組みをしてくれる会社なのか、社員を大切にしてくれる会社かどうかを考えることも転職する際の重要な条件となってくる。

 ITエンジニアにとって条件の良い転職を実現可能ないまは、単純に転職のベストタイミングというだけではなそうだ。転職によってキャリアアップを図れると同時に、「転社」=「自分の働きたい会社を選べる」タイミングでもあるのだ。ただし、多くのITエンジニアにとって「その会社が本当はどんな会社なのか」「職場の雰囲気は」といった情報を知ることは難しい。そんなときにこそ、多くの企業の情報を保有している人材紹介会社を利用してみてはいかがだろうか。自分自身のキャリア、転職の相談はもちろん、会社選びのアドバイスも受けられるはずだ。

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