Oracleを適切にインストールするには:ORACLE MASTER Silver DBA講座(1)
ORACLE MASTER資格の中級に位置付けられ、取得すればOracle技術者としてグローバルに認定される「ORACLE MASTER Silver Oracle Database 10g」。例題を利用してポイントを押さえ、確実な合格を目指そう!
「ORACLE MASTER Silver Oracle Database 10g」は、データベース管理中級レベルの資格と位置付けられています。Oracle Database 10gのインストールや環境構築、バックアップ/リカバリなど、データベースの管理者として必要な知識を持つ技術者を認定する資格です。この資格を取得することで、米オラクルがグローバルに展開する資格の1つである「Oracle Certified Associate」(OCA)にも同時に認定されます。
「ORACLE MASTER Silver Oracle Database 10g」を取得するには、次の試験に合格する必要があります。
この試験の問題数、合格点と出題範囲は次のとおりです(☆の数は出題数を5段階で表したもの。ただし出題数は問題パターンによって異なりますので、目安としてください)。
問題数 | 75問 |
---|---|
合格点 | 51点(68%) |
試験時間 | 105分 |
Oracle Database 10gソフトウェアのインストール | ☆☆ |
---|---|
Oracle Databaseの作成 | ☆☆ |
データベースの制御 | ☆☆☆☆ |
記憶域の構造 | ☆☆☆☆☆ |
ユーザーの管理 | ☆☆☆☆ |
スキーマオブジェクトの管理 | ☆☆ |
データの管理 | ☆☆☆ |
PL/SQL | ☆ |
Oracle Databaseのセキュリティ | ☆☆☆ |
Oracle Net Services | ☆☆☆☆ |
Oracle共有サーバ | ☆ |
UNDO管理 | ☆☆☆ |
ロックの競合の監視と解決 | ☆ |
パフォーマンスの管理 | ☆☆☆☆ |
予防的メンテナンス | ☆☆☆ |
バックアップ/リカバリの概要 | ☆☆☆☆☆ |
データベースのバックアップ | ☆☆☆☆☆ |
データベースのリカバリ | ☆☆☆☆☆ |
全22回で構成される本連載で、「Silver DBA10g」の合格に必要な知識を身に付けましょう。入門的な資格である「ORACLE MASTER Bronze Oracle Database 10g」(参考:「ORACLE MASTER Bronze DBA講座」「ORACLE MASTER Bronze SQL基礎I 講座」)に比べて範囲が広く問題数も多いため、取りこぼしがないよう1つ1つの項目を確実に押さえていくようにしましょう。
それでは、Silver DBA10gの範囲に沿って、問題を解きながら解説していきます。
Oracle Database 10gソフトウェアのインストール
ポイント
Oracleソフトウェアをインストールするための前提要件、環境構成が対象となります。また、インストール時に実行する必要のあるorainstRoot.shやroot.shスクリプトによる処理内容も理解しておきましょう。
Oracleのインストール
Optimal Flexible Architecture(OFA)
OracleソフトウェアとOracleデータベースファイルを配置するために推奨される概念です。OFAの使用には次のような目的があります。
- 大量のソフトウェアの構成
- 定期的な管理タスクの簡略化
- 複数のOracleデータベースの切り替え
- データベース拡張の適切な管理
- リソース競合の最小化支援
ディスク上に配置される大量のソフトウェアとデータベースファイルの構成を最適化することで、デバイスのボトルネックやパフォーマンスの低下を避けることができ、バックアップ設定もソフトウェアとデータベースファイルを分離して管理できるようになります。
環境変数
Oracleソフトウェアとデータベースに関する環境変数には次のものがあります。
- ORACLE_BASE
OFA用のOracleディレクトリ構造のベースディレクトリを指定します。
例: /u01/app/oracle
- ORACLE_HOME
Oracleソフトウェアを格納するディレクトリを指定します。通常、ORACLE_BASE配下になるように指定します。
例: $ORACLE_BASE/product/10.1.0/db_1
- ORACLE_SID
Oracleインスタンス名を指定します。デフォルトは「orcl」です。
- NLS_LANG
Oracleではグローバリゼーションサポートが提供され、NLS_LANGで使用する日付書式、通貨記号を指定できます。「言語_地域.文字コード」という形式を用います。
例: Japanese_Japan.JA16EUC
orainstRoot.shとroot.sh
Oracle Universal Installer(OUI)にてOracleソフトウェアをインストールするときに、rootユーザーでの実行を要求されるスクリプトです。
- orainstRoot.sh
次のようなインベントリポインタファイル(/etc/oraInst.loc)を作成します。
$ cat /etc/oraInst.loc inventory_loc=/u01/app/oracle/oraInventory inst_group=oinstall
Oracle製品を管理する目録を「インベントリ」と呼びます。インベントリポインタファイルはインベントリの場所と管理グループを記述したファイルです。orainstRoot.shは、インベントリポインタファイルが存在しない場合のみ実行が要求されます。
- root.sh
oratabファイル(/etc/oratab)とOracleが提供する環境変更スクリプトを作成します。oratabファイルにはデータベースごとに、Oracleソフトウェアを格納するディレクトリ、dbstartとdbshutスクリプトによる起動と停止の対象にするかどうかを指定します。
$ cat /etc/oratab orcl:/u01/app/oracle/product/10.1.0/db_1:N
問題
問題1
Oracle Universal Installerを使用してUNIXプラットフォームにOracleソフトウェアをインストール中、orainstRoot.shの実行を求められました。このスクリプトで作成されるファイルを選択しなさい。
a.OracleホームとOracle SIDを識別するためのテーブルファイル
b.インベントリの場所を検索するためのインベントリポインタファイル
c.Enterprise ManagerやiSQL*Plusで使用されるポート番号を識別するためのポートリストファイル
d.カーネルパラメータを設定するためのシステム制御ファイル
正解:b
解説
orainstRoot.shは、そのマシンで初めてOracleソフトウェアをインストールするときに要求されるスクリプトです。このスクリプトの実行により、製品目録であるインベントリの場所と管理グループを記述する/etc/oraInst.locファイル(インベントリポインタファイル)が作成されます(正解b)。oraInst.locファイルがすでに存在する場合は、orainstRoot.shの実行は要求されません。
そのほかの選択肢の不正解の理由は次のとおりです。
●選択肢a:oratabファイルの特徴です。Oracleソフトウェアのインストール時に要求されるroot.shによって作成されます。
●選択肢c:portlist.iniファイルの特徴です。Enterprise Manager Database Controlを構成したデータベースを追加すると、portlist.iniにもポート番号が追加されます。
●選択肢d:Linuxであれば、/etc/sysctl.confファイルになります。Oracleソフトウェアをインストールする前に調整する必要があります。
問題2
Oracleソフトウェアのインストール時に、環境変数ORACLE_BASEを「/u01/app/oracle」に設定しました。この設定で行われたことを選択しなさい。
a.Oracleソフトウェアをインストールするディレクトリの設定
b.インベントリをインストールするディレクトリの設定
c.Optimal Flexible Architecture(OFA)用のディレクトリの設定
d.Oracleデータベースを作成するディレクトリの設定
正解:c
解説
環境変数ORACLE_BASEを使用することで、Oracleディレクトリ構造のベースディレクトリを設定できます。このようなディレクトリ構造に関する概念をOptimal Flexible Architecture(OFA)と呼び、データベースの拡張などに適切に対応できるようになっています(正解c)。デフォルトではベースディレクトリ配下に、インベントリ、データベースを格納するためのサブディレクトリが作成されます。通常はOracleホームもOracleベース配下になるように構成します。
そのほかの選択肢の不正解の理由は次のとおりです。
●選択肢a:環境変数ORACLE_HOMEで指定するディレクトリの説明です。一般的には「$ORACLE_BASE/xxx」で指定するため、ORACLE_BASE環境変数も使用しているといえますが、Oracleホームのためだけに使われるわけではないので不正解としています。
●選択肢b:Oracleソフトウェアを初めてインストールするときに指定し、インストール時に実行するorainstRoot.shで作成されるoraInst.locファイルにて保存されます。デフォルトでは「$ORACLE_BASE/oraInventory」が指定されますが、上書きもできるため、不正解としています。
●選択肢d:データベースを作成するとき、各ファイルの格納場所は明示的に指定することが可能です。デフォルトでは「$ORACLE_BASE/oradata/$ORACLE_SID」に作成されますが、明示的に記述することもできるため、不正解としています。
問題3
oratabファイルに記述されている内容として正しいものを選択しなさい。
a.ORACLE_HOME、ORACLE_SID、dbstartとdbshutで対象にするかどうか
b.ORACLE_HOMEのみ
c.ORACLE_SIDのみ
d.ORACLE_HOME、ORACLE_SID
正解:a
解説
oratabファイルは、Oracleソフトウェアをインストールするときに実行するroot.shにて作成されます。次のように、SIDとOracleホーム、YまたはNによるレコードを記述できます(正解a)。
$ cat /etc/oratab orcl:/u01/app/oracle/product/10.1.0/db_1:N
最後のNをYにすることで、dbstart、dbshutによる起動と停止の対象データベースとして認識させることができます。
宿題
次回は、「Oracle Databaseの作成」を確認します。次の宿題を解いておいてください。
問題
銀行業務で使用するオンライン処理のための本番データベースを作成する計画があります。最適化された初期化パラメータ設定にてデータベースを作成する方法として、適切なものを選択しなさい。
a.Oracleソフトウェアに付属する初期化パラメータファイルのサンプルを編集して手動でデータベースを作成する
b.既存のデータベースから初期化パラメータファイルをコピーしてきて手動でデータベースを作成する
c.Database Configuration Assistant(DBCA)でトランザクション処理用のテンプレートを使用してデータベースを作成する
d.Database Configuration Assistant(DBCA)で汎用のテンプレートを使用してデータベースを作成する
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- リカバリ機能でOracleデータベースを復活させる
- Oracleデータベースのバックアップを取得する
- Oracleのバックアップ/リカバリの仕組みとは?
- Oracleでの問題発生を予防する
- Oracleのパフォーマンスを最適化する
- ロックでOracleのデータを守り、競合を防ぐ
- UNDO管理でOracleのデータを守る
- Oracle共有サーバ接続を利用する
- Oracleのネットワークのクライアント側構成を知る
- Oracleのネットワークのサーバ側構成とは?
- 監査でOracleデータベースのセキュリティ管理
- パスワード管理でOracleデータベースを守る
- PL/SQLを使いこなしてデータベース管理
- Data PumpとSQL*Loaderによるデータのロード
- SQLでのデータ操作方法を覚えよう
- Oracleデータベースのオブジェクトを管理する
- 権限とロールで効果的なユーザー管理を
- Oracleユーザーを作成してみよう
- Oracleデータベースの記憶域はどうなっている?
- Oracleデータベースの起動と停止を押さえよう
- Oracleデータベースの制御ツールを使い倒す
- 便利なツールでOracleデータベース作成
- Oracleを適切にインストールするには
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