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転職市場で評価される資格はこれだ!転職市場で評価される資格はこれだ!

転職市場で資格はどう評価されるのだろうか。人材紹介会社3社に、転職する場合に資格が武器になるかどうかを聞いた。

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 資格は必ずしもITエンジニアの技術スキルを証明するものではない。だから資格は必要ないとか、技術さえあれば、という話にもなる。しかし、ここでは資格が真に技術スキルの裏打ちになるかどうかではなく、あくまで転職市場でどのように見られているのか、そして転職するに当たって有利となるような資格があるのか、そうした点を中心に見ていきたい。

 転職市場で資格がどう評価されるかは、人材紹介会社によって回答が違った。これは、人材紹介会社の取引先となる求人企業、相談に訪れるITエンジニアの傾向、力を入れている分野などによって、各社で微妙に差がつくようだ。だから実際に転職する場合は、そういう各社の温度差を考慮してほしい。

取ればいいという時代は終わり

アビリティスタッフ 代表取締役 古屋重三氏
アビリティスタッフ 代表取締役 古屋重三氏

 2000年前後は、どんな資格であっても取得していれば転職では有利に働く、特に書類審査で有利、というのが人材紹介会社各社の代表的な意見だった。

 現在の転職市場で資格が評価されるかは、「資格によります」というのは、アビリティスタッフ 代表取締役 古屋重三氏だ。元ITエンジニアの古屋氏は、「採用企業が価値を生むと判断している技術を反映したような資格は評価される」という。例えばいまなら「Java関係の資格は評価される」傾向にあるという。

 イムカ 人材開発事業部 シニアコンサルタントの木下茂氏は、一般論としながらも、「全般的に資格は取得していた方がいい」という。

イムカ 人材開発事業部 シニアコンサルタント 木下茂氏
イムカ 人材開発事業部 シニアコンサルタント 木下茂氏

 ただ、何でもいいから資格を取得すべし、という意味ではないようだ。求人企業は募集要件などに、以前に比べて職種や必要なスキルを詳細に記述する傾向があるという。そのため、資格を取得する場合も、こうした募集職種に沿ったもの、必要とされるかそれに関連したスキルか、という点が重要だという。

 イムカの人材開発事業部 シニアコンサルタントの宮脇啓二氏は、「資格に対する評価も専門化される中で、テクニカルエンジニア:データベース(情報処理技術者試験)やITIL(IT Infrastructure Library)の認定資格などは評価が高い」と述べる。そのほか「PMP(Project Management Professional)などは最近取得する人が多くなったと感じる」という。そのほかにもシステム監査技術者(情報処理技術者試験)も評価が高いようだ。そのほかでは、「ソフトウェア開発技術者(情報処理技術社試験)は昔から評価が高く、現在も評価される」など、同社が有利と見る傾向を語ってくれた。

評価される資格は

イムカ 人材開発事業部 シニアコンサルタントの宮脇啓二氏
イムカ 人材開発事業部 シニアコンサルタントの宮脇啓二氏

 求人企業が評価する資格については、人材紹介会社各社の考え、見方で多少異なる。

 例えばパソナキャレント ITコンサルティンググループ キャリアアドバイザーの遠藤貴之氏は、「国家資格(情報処理技術者試験)よりもベンダ資格」の方が評価される傾向にあるという。最近の傾向でいうと、「シスコシステムズ」のシスコ技術者認定、CCNAやCCNPなどを持っていれば、若くて経験がなくても採用される傾向があるという。また一般的にオラクルのORACLE MASTER PlatinumやGoldも評価は高いという。


 国家資格を高く評価するのはイムカだ。前述したように、テクニカルエンジニアやシステム監査技術者など、いわゆる高度系の認定資格は求人企業も高く評価するという。

パソナキャレント ITコンサルティンググループ キャリアアドバイザー 遠藤貴之氏
パソナキャレント ITコンサルティンググループ キャリアアドバイザー 遠藤貴之氏

 SAPの認定資格に関しては、見方が分かれた。イムカでは、資格の優位性は一時よりは下火になったと見る。その背景にあるのは、「プロジェクト数は増えていますが、規模は小さくなっているため」だ。人気という意味では一時よりは落ち着いてきたのではないだろうかという見立てだ。

 それに対してアビリティスタッフ、パソナキャレントはいまも評価される資格と見ているようだ。特に複数の認定資格を有している人に対する企業の評価は非常に高いようだ。

 マイクロソフトのMCPは相変わらずの人気資格だが、評価はやはり差がある。イムカは運用関係の職種なら持っていると評価されるが、開発系の職種では、それほど高い評価は得られないと見ているようだ。ほかの2社は資格を持っていると評価されるという。

資格と給料の関係は

 かなり前ならば、多くの企業で資格によって昇給や一時金などを当てにできた。現在はどうだろうか。

 基本的には、大手などを中心に、資格取得できたからといって昇給や一時金を支給する企業は減っているという(イムカ)。しかし、2次請けなどのシステムインテグレータ(SIer)では、一時金を支給する企業もまだあるという。また、SIerなどでは昇進と資格がリンクしている企業もあるという。

 取得時の一時金などを支給する企業は減っているが、研修費用や受験費用の補助制度は増加の傾向にあるという(パソナキャレント)。

IT以外の資格はいかに?

 それでは、目をIT以外の資格に目を向けてみよう。IT以外では、どんな資格が評価されるのだろうか。

 イムカとパソナキャレントがともに推薦するのは簿記だ。日商簿記検定の2級以上がお勧めとのこと。金融関係のシステム開発や基幹系のシステム開発に携わっているのであれば、業務知識を得る目的で受験するのがいいようだ。もちろん、これからこうした分野の開発に携わりたい場合も、簿記の資格取得は有利に働くという。そのほか、アビリティスタッフとイムカがお勧めするのがファイナンシャルプランナー関連の資格だ。

 そのほかでは、アビリティスタッフとパソナキャレントがTOEICを挙げる。資格ではないが、いまやITエンジニアも英語のドキュメントを目にすることは多いに違いない。そうしたこともあり、TOEICはお勧めのようだ。ただし履歴書などに記載する場合は、600点以上(パソナキャレント)や700〜720点以上(アビリティスタッフ)と、それなりの得点が必要なようだ。

 そのほか中小企業診断士やITコーディネータはどうかと聞くと、イムカでは、「中小企業診断士はIT系の人が取得しようというのは下火になったし、ITコーディネータを取ろうという人を見掛けない」と手厳しい。

 取材中、イムカで聞いたのが、MBA(経営学修士)の評価だ。一時は高い評価を受けていたMBAだが、最近はそれほど高く評価する企業は多くはないというのだ。外資系企業は別かもしれないが、最近では、MBAが取得できる大学院が国内でも多くなり、以前ほどの希少価値がないようなのだ。

 海外でMBAを取得した場合でも、どこの大学院かを必ずチェックされるという。転職市場では、海外といえどどこの大学院かによって評価はかなり異なるのが実情だという。

資格取得の勧め

 人材紹介会社各社が強調するのは、自身のキャリアに沿う、合うような資格はぜひ取得してほしいということだ。業務が忙しいと資格はなおざりになり、つい取得しないままになる。だが転職しようというときに困ることもあるという。職務経歴書に持っている技術は書くから大丈夫といっても、要領よくまとめて書く自信はあるだろうか。

 職務経歴書では、意外と多くの人の書き方に難があると指摘するのはアビリティスタッフの古屋氏だ。だから相談に訪れた人の多くに、職務経歴書の書き方を指導することになるという。

 業務に関連した技術の資格を取得しておけば、経歴の中に資格名を入れるだけで、企業はその資格から容易に技術知識や技術レベルを推測しやすくなる。そうすると持っている技術を書くにしても、資格を織り交ぜて書けばいいので、負担が減じるという。

 資格取得に関しては、どうも世代間で考え方や取り組み方が違うように感じるというのは、イムカの木下氏と宮脇氏だ。

 30代から40代に関しては、資格に冷たく、あまり評価しない人が多いという。それに対して20代の若手は、目標の一里塚として位置付け、積極的な人が多いようだという。

 最後にアビリティスタッフの古屋氏から、同社の持つクライアントにおける最近の転職試験の傾向について、面白い話を伺った。同社のクライアントには、資格ではないが、日本語の能力をテストするところがあるというのだ。「日本語能力、特に表現力は重要」だと古屋氏は強調する。最近、日本語能力が衰えているのではと心配する人事関係者がいて、それで日本語能力を見るための試験を課しているというのだ。こうした傾向が一般化するかは別として、皆さんは日本語力に自信があるだろうか。

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