Lispの仏さま 竹内郁雄の目力:【写真】天才プログラマに聞く10の質問(1)(2/2 ページ)
「天才」。世の中にはそう呼ばれている人たちがいる。本連載では、これまで数々の偉業を成し遂げてきた天才プログラマに、スキルやキャリアに関する10の質問をする。彼/彼女らのプログラマとしての考え方・生き方とは。天才の言動から見えることとは何か。
5.――いまの自分が形成されるうえで最も影響があった出来事は何でしょうか?
竹内氏 いろんなことがいっぱいあったので、何が一番影響があったのか順番は付けられません。しいていえば、小学校から大学までと、NTTでいつも好き勝手にやってきて、それを周囲がいつも我慢して(?)認めてくれたことかな。
6.――5年後、10年後に目指すキャリアは何ですか?
竹内氏 5年後……生きているかなぁ。キャリアとしては悠々自適ができれば最高。でも、相変わらず締め切りに追われて何かしているかもしれません。いまやっている未踏ユースのプロジェクトマネージャは本当に面白いので、元気のある限りやっていきたいと思っているけれど、老害もあり得るので、あまり強くはいわないことに……。
サッカーをする体力もめっきり落ちてきたので、休日の楽しみがどんどん減ってきました。なので、趣味はもっぱらオーディオに向かいつつあります。でも、実は50歳までに果たせなかった、Lispマシンと新しい言語をしこしこ作り続けることはやっていたいなぁ。1人ではできないけれど。
プログラマの次にやりたいことは、実際いまやっているように、プログラム大好き教の宣教師。
でも、面白さや楽しさを犠牲にしてまで何かにこだわることはないでしょう。若い学生に面白さや楽しさをエネルギーにして立派な仕事をしている人がいるので、「なるほど」と思ってしまいます。
7.――6のために考えている具体的なキャリアの構築方法、キャリアプランはありますか?
竹内氏 昔話だけど、NTTの研究所の中で、いつまでも現役のプログラマや研究者たるために、管理職コースを歩まされることのないようにずいぶん腐心しました。おかげでNTTを退職するまで、現場でプログラムを書き続けることができました。このような蓄積は大学に行ってもとても役に立ちました(編注:竹内氏は1971〜1997年までの26年間、現NTTの研究所に勤務していた)。
8.――いまのIT業界をどう思われますか?
竹内氏 IT系の伝統的な大きな会社に若い人を引き付ける魅力がなくなってきたのでは、と心配しています。東京大学情報理工学系研究科の学生も、外資系の金融会社やグーグルを志望する人が多くなってきました。
見ていて思うのが、いまの学生は明らかに就職活動に時間やパワーを多く割いています。大学院1年の10月から次の年の3月くらいまで学生生活の中心が就職活動になってしまっています。裏返すと就職活動のための情報集めにすごいエネルギーを使っているということ。そういう学生たちが選ぶのが上記のような外資系。日本のシステムインテグレータのような会社に魅力を感じていないようです。
でも、日本のIT業界に対して「不安になる」という受身の姿勢では駄目だと思うのです。私はオプティミスト。楽観主義じゃないと前に進めない。
9.――よくご覧になるメディアはありますか? また、お薦めの本があれば教えてください
竹内氏 テレビはサッカーが大半で、あとはニュースを時々見ます。ラジオはCS-PCMのMusic Birdの7チャンネル(Classic)。CDを聞いていなければほとんどこれをかけています。Webはそれほど見ません。雑誌はオーディオ雑誌を3種類ほど、ほとんど毎号眺めています。
開発者にお薦めの本は『ビューティフルコード』でしょうか。私にとって必携の1冊はLispのマニュアル(忘れっぽくなったからでしょう――なにしろLispは言語仕様がでかいので)。
10.――座右の銘を教えてください
竹内氏 昔は「細く短く」でしたがその夢がかなわなかったので、いまは「研究でも仕事でもどうせやるなら楽しくやろう(どっちみち結果は同じ)」。
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