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「研修の効果検証ができていない」、人材育成の現状と課題産業能率大学が調査

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 産業能率大学は7月24日、企業の人材開発に関する実態調査の結果を発表し、「企業の人材育成の現状と今後」と題した講演を行った。

 調査は2008年1月12日から2月13日にかけて、従業員数300人以上の企業を対象として行った。有効回答数は233件。人材開発の担当者を回答対象者とした。

産業能率大学総合研究所 杉原徹哉氏
産業能率大学総合研究所 杉原徹哉氏

 産業能率大学総合研究所 次世代リーダー育成ソリューションセンター長の杉原徹哉氏は冒頭で調査の問題意識に触れ、「1990年代後半、人材開発への投資の有効性が疑われた時代があったが、現在は『人材開発が競争優位性の源泉である』と再認識され始めている。そうした中で、人材開発部門への期待は大きい」と述べた。

 杉原氏はまず、人材マネジメントの方針に影響する、人事・評価制度などの現状に関する調査結果を説明。職種別・コース別制度を採用する企業が半数を占め、評価・賃金・昇進などの制度も、結果やポテンシャルを重視した「実力主義」への移行が進んでいるとした。しかし一方で、採用や人材活用の側面では、新卒採用中心で、配置や異動は会社の都合重視、キャリアパスも専門職制度を設けないなど、従来の日本的な制度や慣行を採用している企業が大半を占めているとした。

 教育投資の現状については、1人当たりの平均投資金額は年間で5万4000円であるとした。ただし、「企業によってバラつきが大きい」と補足。また、大規模な企業ほど1人当たりの投資額が大きい傾向にあり、製造業に比べると非製造業の方が1人当たりの投資額が大きいという結果となった。投資割合は若年層と中堅層が最も高いが、「そもそも母数が多いのがこの結果につながっている。むしろ、母数の差にもかかわらず、中・上級管理職クラスにも投資が行われている。1人当たりでは後者のほうが大きくなっているだろう」と説明した。

企業の教育投資の平均額
企業の教育投資の平均額

 研修の効果測定については、カークパトリックモデルをベースに、9割弱の企業がレベル1(満足度を測るアンケート調査など)、7割弱の企業がレベル2(習得度を測る試験など)を実施しているものの、レベル3(行動への影響を測るインタビューや他者評価など)やレベル4(結果を測る業績への影響調査など)の実施を行っている企業は半分に満たなかった。杉原氏はこの結果について、「レベル3や4の実施はコストがかかるため、費用対効果の側面から行われないことが多いのだろう」と分析した。

 また、杉原氏は「これからの人材開発部門には、人事連動領域に加えて、組織の戦略支援、ライン部門のパフォーマンス向上、組織風土の革新、社員のキャリア開発の4つの領域に取り組んでいく必要がある」としたが、実際の人材開発部門は現状、人事連動領域の業務のみに留まっていると調査結果から指摘。十分な活動ができていない理由は「人材開発部門の人員と能力の不足による」とした。

これからの人材開発部門に求められる役割
これからの人材開発部門に求められる役割

 人材開発部門の課題は、「効果検証ができていない」「実践的な学習が展開できていない」「人材開発スタッフの育成ができていない」という3点と杉原氏は説明。また、社内における「人材開発コンサルタント・スペシャリスト」こそが人材開発部門の目指すべき姿であると主張したが、人材開発は短期的な投資効果が見えにくいため、経営部門の理解を得ていく必要があるとした。

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