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30代前半、これだけは身に付けたいスキル30代前半、これだけは身に付けたいスキル(2/3 ページ)

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シニアアーキテクトは本質をとらえる力を持つ

イーシー・ワン 濱島基之氏
イーシー・ワン 濱島基之氏

 イーシー・ワン 濱島基之氏は「シニアアーキテクトへの道」と題して、情報システム業界の問題点と、それに対する改善策として5つのポイントを掲げた。濱島氏は「統計的に開発プロジェクトの成功確率は15%から20%程度。スケジュールもコストも、予定と比べて平均で約2倍かかっている」と、情報システム業界の現状について説明。その原因は一般には管理力不足や上流工程での計画不備、発注者側の不十分な体制や受注者側の不完全な見積もりなどといわれているが、その本質を探るには「発注側視点」「業界視点」「受注側視点」の3つの視点から分析することが必要だと主張した。

 「発注側はシステム化による業務改善を期待し、低コスト・短期での導入を求めている」と濱島氏。一方で、受注側は「高額で受注したいし、満足度を上げて次期案件や追加開発につなげたい」と考えており、「発注者と受注者で意識のずれがある」と指摘した。その結果、発注者が求める要件と乖離(かいり)した開発プロジェクトが生まれているという。また、業界視点ではさまざまな基準化・標準化の動きが浸透しつつあるが、「個別にはいいことをいっているものの、それをそのまま適用してうまくいくか、というと、それは別の話だ」(濱島氏)と語った。

 これらを踏まえて、濱島氏は「本質的な改善策」として、「プロジェクトに対する視点を変える」「顧客満足度を向上させる」「知識を集約して標準化された開発プロセスを構築する」「全方位的な視野を持った人材を育成する」「生産性を向上させる」という5つのポイントを掲げた。システムインテグレータは開発プロジェクトを「経営数値目標の達成手段」と見てしまいがちだが、実際は開発プロジェクトは事業基盤であるという視点を取り戻さなければならないと濱島氏は主張。「開発プロジェクトは『さまざまな価値を創造する場』である」という視点があって、初めて価値の創造に向けた建設的な議論ができるとした。また、「価値」の中で真っ先に取り組むべきなのが「顧客満足度の向上」であり、そのためにはプロジェクトの「計画力」と「遂行力」が肝要であると指摘。計画力は「知識の集約」、遂行力は「人材の育成」によって達成されるとした。

コンサルタントとは「意思決定に良い影響を及ぼす者」

K.I.T.虎ノ門大学院(金沢工業大学 虎ノ門キャンパス) 三谷宏冶氏
K.I.T.虎ノ門大学院(金沢工業大学 虎ノ門キャンパス) 三谷宏冶氏

 K.I.T.虎ノ門大学院(金沢工業大学 虎ノ門キャンパス)の三谷宏冶氏は「コンサルタントへのキャリアチェンジの壁と突破法」と題し、ITコンサルタントの意味や価値と、システムエンジニアがITコンサルタントにキャリアチェンジする際の注意点について語った。

 三谷氏は「ITコンサルタントとは、IT分野における企画から構築、運用・成果まで幅広くかかわる仕事」であるとした。また、「コンサルタント」の語源は「con(共に)+sadere(座る)」であると語った。高い専門性を持ち(エキスパート)、結果に責任を持って(プロフェッショナル)、「意思決定に良い影響を及ぼす者」がコンサルタントであると説明した。

 ITコンサルタントの価値は、「企画フェイズでは、要件決めへの『正しい助言』が行えるか否か。構築フェイズでは、アーキテクチャや開発体制、進ちょく管理体制の構築、および『要件』と予算・納期とのトレードオフの提示が行えるか否かで決まる」と三谷氏は説明。いずれにしても、「トレードオフの提示を適切にできるか」がポイントであると語った。

 ITコンサルティング業界は「経験が役に立つ」と三谷氏。システムエンジニアがITコンサルタントになるには、「技術寄りだったり、ある分野でタコツボ的だったり、トップダウン志向でいわれたことをやるようでは駄目」(三谷氏)と断言した。個人として、どう普段から「コンサルティング力」を上げるのかが重要であるという。システムエンジニアがITコンサルタントへの「キャリアチェンジの壁」を突破するには、「構造化力」「発展的議論力」「発想力」、そして「なぜだろうと考える心」が肝要であると三谷氏は話した。

総当たり的知識習得がコンサルタントの視野を広げる

ベリングポイント 西澤秀和氏
ベリングポイント 西澤秀和氏

 ベリングポイントには「ITコンサルタント」という職種は存在しない。なぜなら、コンサルタントとは、顧客が抱える問題を解決する職種だから。ITは問題解決を支援するツールにすぎない。ITコンサルタントという呼称は存在し得ないのである。

 コンサルタントの専門領域は、企業のどの部門をカウンターパートに選ぶかで決まる(どんな専門領域においても、ITは必要である)。つまり、所属部門が扱うべき課題が、コンサルタントの守備範囲ということになる。そして、コンサルタントとしてのスキルアップとは、対応できる部門を増やすことにある。これにより、部門横断的な課題に対応できるようになる。

 コンサルタントの強みとは何だろうか。ベリングポイントの西澤秀和氏は、(問題の)「全体像」と「理由」を把握し、問題解決に向けた的確な助言ができる立場と能力にあるとする。社外の人間だからこそ、ある問題が含まれる全体像が把握でき、また、その問題が生じるに至った理由を客観的な立場から指摘することができる。

 ITエンジニアをバックグラウンドに持ったいわゆる「ITコンサルタント」の特徴は、上述したようなコンサルタントの強みをさらに強化したものになる。プログラミング経験者は、業務の流れを処理手順にまで落とす術を知っている。情報の関連を体系化して整理する癖がついているため、コンサルタントの専門能力である「全体像をとらえる能力」に特に秀でているのである。

 一方、(ITコンサルタントの)弱点としては、専門性が深まり過ぎて垣根ができ、「ほかのことをするのに及び腰になる傾向がある」ということ。垣根をつくらず、さまざまな分野の知識を積極的に身に付け、経験を増やしていくことで、コンサルタントとしての能力は上がっていく。

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