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第1回 MSCS導入の準備〜サーバ・クラスタの基礎知識〜Windowsクラスタリング入門(1/5 ページ)

ミッション・クリティカル・システムでは、サーバ・クラスタによる可用性向上が不可欠だ。Windowsクラスタリングを基礎から学ぼう。

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Windowsクラスタリング入門
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連載目次

 昨今ではWindowsの技術者も増え、ミッションクリティカルなビジネスを支えるインフラとしてWindowsシステムが利用されることが多くなってきた。高可用性をもたらすWindowsのサーバ・クラスタの利用も増えてきている。しかしWindows技術者の増加と比較して、サーバ・クラスタには詳しくない技術者も多い。また、容易に導入できる分、適切なプランニングができていない例も見受けられるようだ。

 本連載は、これからWindowsサーバ・クラスタを導入する技術者を対象とする入門記事である。すでにサーバ・クラスタを導入されている技術者には、見直しと整理になればと思う。まずは、一般的にいわれるサーバ・クラスタとは何かを整理し、Windowsで実現できるクラスタ「Microsoft Cluster Service(MSCS)」について紹介していく。

高可用性システムの重要性

 数年前よりECサイトやASPサービスに限らず、社内システムにおいても無停止稼働が求められるミッションクリティカルなシステムが増えている。特にオンラインでのサービス展開をメインとしている企業にとっては、数分のシステムダウンが巨額の損害に通じる場合もある。社内システムにおいても、例えばメールが利用できなくなったり、ファイル・サーバが利用できなくなったりするだけでも業務が停滞し、何十人、何百人が作業中断を余儀なくされるだろう。その際の損失は非常にクリティカルな問題である。

 システムを無停止にするとはどういうことなのだろうか。本稿で取り上げるように、サーバが無停止になればよいのか。サーバを無停止にするには、具体的に何を検討しなければならないのか。まずは、それを整理する必要がある。

 一般的には、ある1点が障害などで停止すると、システム全体に影響を及ぼすポイントのことを単一障害ポイント(SPOF:a Single Point of Failure)と呼ぶ。SPOFは障害だけにかかわらず、メンテナンス時の停止によっても影響が考えられる。つまり、このSPOFをいかにして解決し、無停止に限りなく近い構成にすることが高可用性のソリューションということになる。

 システム全体として影響があるということは、サーバ本体だけでなく、システムを構成するコンポーネントのすべてがSPOFとなる。ここでいうコンポーネントとは、ハードウェアやソフトウェアそのものだけではなく、それを構成する要素、例えばネットワーク・アダプタ(NIC) 1枚についてもSPOFとなるかの分析が必要だ。例えば、一般的なアプリケーション・サーバ(Webサーバ)とデータベース・サーバ(SQL Serverなど)のシステムに対して、SPOFとなる代表的なポイントと解決策を以下の図と表にまとめた。SPOF解決の方法は、基本的に2重化、または多重化である。2重化/多重化の方法は、コンポーネントごとに、ハードウェア的、ソフトウェア的な解決手段が提供されている。


単一障害ポイント
単一障害ポイント(SPOF)とは、障害などで停止すると、システム全体に影響を及ぼすポイントのことである。ハードウェアやソフトウェアそのものだけではなく、それを構成するNICなどの要素もSPOFになり得る。

障害ポイント 解決策
ルータやハブなどのネットワーク機器 回避ルートの構築
負荷分散装置(ロード・バランサ) 2重化
ハードディスク RAID
ネットワーク・アダプタ(NIC) 複数のインターフェイス構成、ネットワーク・チーミング
電源 UPS
DNS 複数台構成(プライマリDNS/セカンダリDNS)
Active Directory 複数台構成(マルチマスタ・レプリケーション)
データベース・サーバ サーバ・クラスタ、負荷分散構成(ロード・バランス)
表1 単一障害ポイントと一般的な解決策

 システム全体としてはさまざまな点がSPOFとなり、それらを解決しなくてはシステム全体の高可用性は保てない。表1からも分かるように、サーバ・クラスタが補えるSPOFはごく一部でしかない。サーバ・クラスタ構成にしたからといって、システム全体が高可用な状態になるとはいえないことに注意してもらいたい。

 しかしながら、サーバ・クラスタを構成することのメリットは多く、表1で示したいくつかの障害ポイントをまとめて解決することもできる。例えば、ネットワーク・アダプタ、電源、ローカル・ハードディスク、サーバ上のアプリケーションやサービスなどである。これらをまとめて解決することで、それぞれに対する個別対応を排除することが可能だ。

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