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化学産業を下支えする3つのIT味わい深いシステムを開発するための業界知識(4)(2/3 ページ)

ITエンジニアの日々の業務は、一見業界によって特異性がないようだ。だが、実際は顧客先の業界のITデマンドや動向などが、システム開発のヒントとなることもある。本連載では、各業界で活躍するITコンサルタントが、毎回リレー形式で「システム開発をするうえで知っておいて損はない業務知識」を解説する。ITエンジニアは、ITをとおして各業界を盛り上げている一員だ。これから新たな顧客先の業界で業務を遂行するITエンジニアの皆さんに、システム開発と業界知識との関連について理解していただきたい。

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競争力を下支えするITとは

 多くの国内大手化学企業では、以前よりSAPを中心としたERPパッケージを導入し、積極的なIT投資を行ってきています。ただ、前述の幅広い事業内容や、事業・製品によって異なる複雑なバリューチェーン、積極的なM&Aにより、関係会社を拡大してきている経緯からも、IT整備による競争力強化の余地は、まだまだ残されているといえます。また、顧客企業のビジネススピードや要求レベルは一層高まってきており、ITを活用して迅速かつ柔軟に対応できることが求められます。

 組み立て型製造業と比較した場合、化学企業を中心とするプロセス型製造業で活用されているシステム構成は、大きくは変わりません。今回、化学企業の事業特性を踏まえ、競争力を下支えするために求められる特徴的なITを、SCM(Supply Chain Management)、営業〜研究開発、経営管理の3つの領域で説明します。

1.サプライチェーンマネジメント領域

 化学企業の主要な顧客企業である、自動車、ハイテクなどの組み立て型製造業は、第3回「組み立て型製造業、今後の要はサービスにあり」でも述べたように、早くからグローバルでの需給調整機能の強化を進めてきました。

 化学企業にとっても、自動車などの顧客企業の需給調整に柔軟に対応し、他企業との差別化を図ることが競争優位性を向上させる打ち手となります。実際に多くの化学企業で、拠点全体・グローバル全体で計画立案のタイミングを需要に引き付け需要変動に柔軟に対応する、SCM計画立案の仕組みを構築しています。この仕組み構築に当たっては、化学企業における“幅広い事業内容”を踏まえ、特定事業で構築した仕組みを単純に横展開するのではなく、各事業のSCM特性を識別し、そのタイプごとに計画立案のモデルケースを作り上げ展開します。また、計画立案業務は、往々にして属人化している場合が多いことから、SCM改革において業務内容を「見える化」し、業務標準化が可能でIT化する業務と、計画立案の制約条件など、現場担当者の長年の経験と勘による判断が必要な業務とを分類することで、最適なSCM計画の仕組みを構築しています。

2.営業〜研究開発領域

 化学企業、特に機能材料やファイン・スペシャリティケミカル領域において、競争力のある製品をスピーディに作り出すことは、競争優位を築き収益を拡大していくために非常に有効となります。つまり、顧客企業のニーズ・要望と自社の技術情報を統合して管理し、いかにマーケット・顧客ニーズに見合ったスピーディな新製品開発を行うかがポイントとなってきます。ただ、営業が取得してきた顧客情報の多くは、個人の経験や暗黙知としての活用にとどまり、営業活動や研究開発の場で有効に活用されていないのが実情です。顧客企業に積極的に提案を行っていくうえで、顧客企業の基本情報(事業戦略、製品、将来性など)やニーズ、競合の動向などといった管理すべき情報項目を識別し、ITにより一元管理できる仕組みが必須といえます。

 一方で、研究開発業務においては、事業や開発ステージに応じて組織が分離されていることが多く、組織間での情報共有を行う基盤がない、属人的な情報共有にとどまっているのが実情です。営業および研究開発において蓄積された情報を、共通のITプラットフォームで管理・共有することで、営業〜研究開発が一体となった斬新なアイデアや新規開発テーマの創出が可能となります。また、組織の枠を超えた情報を共有することで、情報の収集スピードを向上させ、社内のみならず、顧客企業、加工メーカー、協業パートナーを巻き込んだ外部との開発コラボレーションの展開も可能です。

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