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現役中学生「厨房IT」の、OS開発に明け暮れた夏休みライバルに学べ! 学生スターエンジニアに聞く(2)(2/2 ページ)

高い技術力を持って活躍する「学生スターエンジニア」たち。彼らはどのように生まれ育ち、どんなことを考えているのか。同年代のスターへのインタビューから、自分の就職活動のヒントを得よう。

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キャンプは「疲れた。けれどそれ以上に素晴らしい『つながり』が得られた」

―― 率直な感想として、キャンプはつらかったですか? 楽しかった、というのはおそらくあると思うんですが。

飯田 確かに、楽しかったのは楽しかったです。つらかったかというと……うーん、つらかったというより、いままでの人生で一番疲れた夏休みでした(笑)。1日の時間割が、かなりの充実スケジュールだったんですよ。大まかにいうと、朝6時30分起床、7時に朝食、8時30分から12時30分が午前の講義、13時30分くらいまでが昼食、13時30分から17時30分が午後の講義。夕食を食べた後、入浴タイムがあって、また講義があり、22時30分くらいに終了。1日中講義、ですね。

―― それは疲れるでしょうね。ほかの組やセキュリティコースの人たちとの交流はありましたか?

飯田 まず、初日の19時から22時くらいまで、全参加者、チューター、講師ごちゃ混ぜの名刺交換会があったので、そのときにいろいろな人と知り合いました。それ以外にも、講義終了後に会場1階の自販機の周りに集まって参加者同士で雑談したりとか。お互いの組で何をやっているかとか、今日の講義はどうだったとか、たくさんお話ししました。isidaiさんともいろいろお話ししましたよ(笑)。

―― いろいろってなんだろう……。気になる。それはともかく、交流が持てるといいですよね。では、楽しかったということについて、どういったところが楽しかったですか?

飯田 楽しかったというか、すごく充実していた感じです。間違いなく、疲れる以上の価値があるなぁ、と実感しながら過ごしていました。多くの知識が得られたのはもちろんだし、一番うれしかったのは「同じ夢や目標を持つ人たち」と友達になれたことだと思います。

 帰ってからも、キャンプで出会った人と連絡を取りあって、「一緒にオープンソースでソフト作ったりしようよ」って盛り上がってるんですよ。Bino98という人で、名古屋の高校生です。現在、彼とプロジェクトを立ち上げてやっていこうっていう話を進めてます。そういうふうに、キャンプつながりで本当に良い仲間ができたり、その人たちと新しい活動を始めたりできるというのは、「いいなぁ」って思います。

―― それは、キャンプが一番、狙っている部分ですよね(「セキュリティ&プログラミングキャンプ2009、開講」参照)。本当に素晴らしいです。一生ものの仲間になれると思うし、みんな若いし、モチベーションもすごく高いし。そういう意味で、キャンプは成功したんだなと思います。

飯田 そう思います。キャンプ参加者って、みんなほとんど初対面なんだけど、やっぱり5日間も一緒に生活して、頑張っていると、終わるころにはすっかりなじんでるんですよね。エレベータで顔を合わすと、ほとんど知らない人でもすぐあいさつして打ち解けちゃう。

テキストと「修了証書」
キャンプで使用したテキストと「修了証書」

―― 普段、学校の友達など身近なところで、そこまで本格的にプログラミングの勉強をしていたり、いろいろな勉強会に参加したりしているという人はいますか?

飯田 周りにはなかなかいないですね。それよりも、ネット上でそういった人たちを発見して、「ああ、こんな人いるんだ」と思うことが多いです。それに、学校だとこれから卒業、進学していくに当たって、きっと進路も枝分かれしていく友達が多いんですよね。ネットがきっかけでつながり始めた仲間って、僕が学校を卒業してもつながりはそのまま続けられると思うんです。そのつながりも大事にしていきたいです。

―― 最近は、ネットで知り合ってイベントを企画して、イベント当日に初対面……ということも珍しくないみたいですね。

飯田 最近だと、pastaさんとか原上ソラさんとか、自分と近い世代の人もすごく活躍していて、刺激を受けます。ライバルでもあるし、仲間としてやっていきたいと思いますね。

―― 来年以降は、キャンプにチューターとして参加しようとは思いますか?

飯田 参加したいですね。来年以降もキャンプは進化していくだろうし、すごい人たちが集まるだろうし、ぜひチューターとして応募したいです。そして、キャンプ卒業生としてこれから参加してくる後輩の手助けをしていきたいですね。

厨房ITの野望とは

―― キャンプでつながった仲間、Bino98氏と新しいプロジェクトを……というお話がありましたが、そのプロジェクトはどんな活動をしていく予定なんですか?

飯田 最初は「Twitterのクライアントを作ってみようか」とか話していたんですが、それだとすでにたくさん出てるんですよね。それよりも、せっかくなら一からオリジナルなものを作りたいと思って。これから何の波が来るだろうとか、いまはまだないけど、これからはやるものって何だろうとか、最近の時代の流れなどを見ながら考えているところです。

―― じ、時代の流れ……恐ろしい。ちなみに、いまの時代の流れをどう読んでますか?

飯田 とにかく技術の進歩が速い、と感じますね。しかも、進歩すればするほど、そのスピードがさらに加速しているとも思う。これをどう読んでいこう、と考えているところ。まだ具体的に何を作る、というところにはたどり着いていないです。

―― 飯田さんの原点であるOSはどうですか? 新しいOSを作ろう、という動きにはならないんでしょうか。

飯田 OSの開発もやっていきたいんですが、OSもいろいろ出てきていると思うんです。そのプロジェクトでは、もっと根本的に新しいものを作りたいですね。新しい概念、というか。OS以外でも、「こういうのがあったらいいな」と思うと大体「すでにある」んですけど、そこを頑張ってオリジナルなもので攻めていきたいです。

―― それは、キャンプの最後に伊藤直也さんが話していたこととつながりそうですね。「ココログは自分が一から作ったわけじゃない、はてなブックマークは一から作ることができた」という言葉。

 ただ、例えばTwitterなら、サービス自体の概念は新しいかもしれないけれども、技術的には決してオリジナルなものが使われているわけじゃないですよね。既存のWeb技術を使っている。クラウドとかSOAなどが叫ばれている現代としては、それはそれでいいと思うんです。「組み合わせの時代」というか。

 それでも、飯田さんはその根本的な技術の部分から、オリジナルに作り上げていきたいということですね。

飯田 まさにそういうことだと思います。

技術者としての将来像は?

―― 飯田さんはまだ中学3年生で、これから高校に進学し、その中でまたいろいろと進路を考えていく段階だと思うのですが、現時点では、将来の職業として技術者になりたいと思っていますか?

飯田 はい。開発者になりたいですね。自分のやりたいと思えること、開発したいと思える開発ができるといいな、と思います。そのためには、あまり大きい会社じゃなくて、小規模な会社がいいかもしれません。

―― 先ほどのお話にもありましたが、何か独創的なサービスや技術を作り上げるような技術者になりたいということですか?

飯田 そうですね。やはり、企業の規模が大きければ大きいほど、どうしても個人じゃなくて組織で動かなきゃいけなくなると思うんです。できれば、個人の個性が生かせるような職場で、作りたいと思うものを作っていきたいです。

―― 「新しいものを技術や概念のレベルから根本的に作り出す」ということになると、プログラマというよりむしろ研究開発職に近いのかもしれませんね。基礎研究所とか。もちろん、まだまだこれから飯田さんの志向や興味がどんどん変化していく可能性もあると思うので、ぜひいろいろな道を考えていただければと思います。

飯田 ありがとうございます。いまのところは、開発に没頭できるような、「ギーク」と呼ばれるような存在になりたいと強く思っています。または、スタジオブックマークの伊藤さんのように、フリーランスとしてエネルギッシュに、フットワーク軽く活動する姿もいいなぁ、と感じますね。

―― ああ、なるほど。今回のインタビューで、「目標としている人は?」ということを質問しようと思っていたんですが、まさに伊藤さんが目標になりますか?

飯田 目標……というと、そうですね、伊藤さんやよしおか(ひろたか)さんといったギークな方ですね。でも、彼らを抜かそうとは思ってないんです。自分が将来、伊藤さんやよしおかさんのレベルに達したときには、彼らはもっと上の場所にいるはずなので。彼らを抜かすというよりも、自分の周囲や、そのときそのときの環境の中で、一歩リードした存在でいられるといいなぁと考えています。

―― お話を聞いていると、確かに飯田さんは「同じ路線で先人を抜かしていく」というより、「新しい路線の頂点」にいそうな気がしますね。そういう意味では、使っている技術ややっている仕事の内容は別の話として、存在として伊藤さんやよしおかさんが目標になるんでしょうか。

飯田 そうですね。伊藤さんやよしおかさんがこれまでにやってきたことや、その成果を参考にして、今後の自分に生かしたいと思います。

―― ああいった存在を目指すということになると、日本だけじゃなくて、海外も視野に入れて活動をしていこう、というふうに考えていますか?

飯田 はい。グローバルに活動したいな、とも思うし、現状では「日本発の技術」「日本で一から生まれたサービス」ってそんなに目立ってないんじゃないか、と思うんですね。

 海外に行くと、「Canon」や「TOSHIBA」の看板、広告はよく目にします。日本の技術力は高いと思うんです。でも、ネット企業のような新しい発想が必要なことって、日本ではあまりないんじゃないか、って。そこを自分が担っていくことができれば、ということを強く思います。

―― それも、既存技術の組み合わせじゃなくて、それこそハードやOSに近い部分から、根本的にオリジナルなものを生み出していく、という志向なんですよね。中学校や高校でプログラミングに没頭している人って、もっと(OSI7層モデル的な意味で)上のレイヤにのめり込む人が多いようなイメージだったんですけど、飯田さんは真逆で驚いています。真逆というより、「全レイヤ」という感じもあるのかな。

アジアの電器屋さんで日本のIT業界の未来を思う

―― では、プログラミングや勉強会以外で力を入れて取り組んでいることはありますか? 例えばエレクトーンとか(笑)。

飯田 小学生のころから、テニスが好きでやっています。部活じゃなくて、テニスクラブに入ってやっていました。最近忙しくなってクラブには通ってないんですが、テニスは続けています。あと、旅行ですね。カンボジアやタイを旅行するのが好きで、毎年1人で行っているんです。

 タイの空港では入国審査時に写真を撮るのですが、その時に使われるカメラが、たしかロジクールの「AF QCAM-200R」っていうWebカメラで、「こんな市販のWebカメラでセキュリティ上、問題ないの?」と思うことがありました。

―― いわゆるバックパッカーですか? 活動的ですね! 飯田さんって、勉強会でお会いしても、ブログやTwitterで見ていても、こうして話していても「おとなしそう」な印象を受けるのですが、実はアウトドアもかなりいけるクチなんですね。

飯田 でもやっぱり、アジアに旅行に行っても、電機屋さんに行ったり、現地の本屋でコンピュータ系雑誌や書籍を見て回ったりはしちゃいます(笑)。以前、タイでC#の本を立ち読みしている人を見掛けたとき、「プログラマなのかな」とか「話し掛けようかな」とか、ウズウズしたことがありますよ。

―― えっ。話し掛けるというと、タイ語も勉強してるんですか?

飯田 いいえ、全然してないんですけど、「java! java!」とかいったら通じないかな、と思って(笑)。

―― (爆笑)

飯田 でもまじめな話、アジアのPCショップなどに行って現地の技術者らしき人たちを見ると、「この先IT業界でこの人たちとどう絡んでいくんだろう」とか考えちゃいますね。日本にいて、ただプログラミングができるだけじゃダメなんじゃないかな、とか。自分が就職するころには、さらにアジアと日本の関係も変わっているんだろうな、とか。

―― 旅行に行ったときにはアジアのIT事情を考えるわけですか。確かに、現時点ですでに中国やインドをはじめ、オフショア開発がかなり盛んだし、飯田さんが就職するころにはまた事情が変わっているでしょうね。しかし、いまからそういったところを意識されているとは、さすがです。

取材風景
中学生とは思えないほどしっかりとしている飯田さんに驚く筆者

今後の活動予定は「まずはOSC!」

―― 最後に、今後の意気込みを語っていただけますか。

飯田 まずは来年、キャンプのチューターとして頑張れるように、引き続き勉強していきます。あと、Bino98さんとのプロジェクトも、近日中に本格的な活動を始めていく予定なので、しっかりとやっていきたいと思います。それ以外には、10月に日本工学院専門学校で開かれる「オープンソースカンファレンス(OSC)2009 Tokyo/Fall」でライトニングトーク(LT)をやりたいと思っています。

―― おお、OSCでLTやるんですか。それは、どこかのブースやセミナーの一員として参加する予定なんですか?

飯田 いえ、特にどこかの団体で出るという予定ではないんですよね。「学生の勉強会への参加」について話したいなぁと思っているんですけど。で、どうやって出展しようかなぁと……。

―― それ、めちゃくちゃいいですね。一緒にチーム作って講演登録しちゃいましょうか。

飯田 おおー! すごくやりたいです。ぜひやりましょう。

―― それについてはこのインタビューの後で具体的に話を進めていきましょう。これも1つのつながりですね。よろしくお願いします。今日はありがとうございました。

飯田 こちらこそよろしくお願いします。ありがとうございました。

「情熱と勢い」だけじゃない

 以上、「ライバルに学べ! 学生スターエンジニアに聞く」第2回でした。いかがでしょうか。

 彼のすごいところは、中学3年生という若さならではの情熱や勢いを持っていながら、それだけではなく同時に、自分の価値観をしっかり持っているという点だと思います。ただガムシャラに進んでいくだけではなくて、いろいろなことを考えたうえで、「自分の希望をかなえるために」行動しているのです。彼の夢ややりたいことというのはすごく大きなことなんだけれど、彼の口から出てくる言葉には、「この人ならやれそう」と思わせる、確かな説得力があるんですよね。

 こんなふうに熱っぽく、しかも筋道立てて自分の夢や人生を語ることができる彼は、きっと魅力的な存在になっていくのだろうと思います。そのグローバルな視点や考え方は、IT業界への就職を目指す学生の皆さんにとって、良い刺激になったのではないでしょうか。筆者は大いに刺激を受けました。

 na-toiこと飯田さん、最後までお読みいただいた皆さん、どうもありがとうございました! また次回、お会いしましょう。お楽しみに!

おまけ:OSC2009 Tokyo/Fallにセミナー枠で参加します

 取材後、飯田さんとともにトンカツを食べながら、OSC2009 Tokyo/Fallに参加する件を相談しました。そして、その日のうちにOSC事務局に参加申し込みをしました!

 OSC2009 Tokyo/FallのWebサイトの「参加グループ」にある、「学生カンファレンス同好会(gconf)」です。2日目の10月31日(土)のうち、どこかのタイミングでセミナー枠として45分間を使い、普段勉強会に参加したり主催したりしている学生たちが(もちろん、飯田さんも筆者も)、「学生の勉強会への参加」についてLT形式で発表する予定です。

 「学生カンファレンス同好会(gconf)」と同じく参加団体として記載のある「電設部」は、筆者が所属している日本電子専門学校内の非公式部活動です。電設部では、10月30日(金)、31日(土)の両日でブース出展を行う予定です。こちらもぜひチェックしてみてくださいね!

 見どころのたくさんあるOSC2009 Tokyo/Fall、皆さまぜひご来場ください! よろしくお願いいたします。

【学生記者募集】

IT業界就職ラボでは記事の企画・取材・執筆を行う学生記者を募集しています。大学生、大学院生、高等専門学校生で、IT業界に興味のある方が応募条件となります。執筆者には謝礼をお支払いいたします。ご興味のある方はjibun@atmarkit.co.jp宛に「学生記者募集」という件名でご連絡ください。編集部にて面談を行い、可否を判断いたします。


著者プロフィール

塚田朗弘(つかだあきひろ)

日本電子専門学校 高度情報処理科 3年生。

大学卒業後、紆余(うよ)曲折を経て日本電子専門学校に入学し、2010年3月に卒業予定。

学校ではチューターとしてオープンソースシステム科やITスペシャリスト科といった他科の実習室管理、実習補佐を担当する傍ら、非公式部活動「電設部」でIT勉強会プロジェクトのリーダーを務める。

IT勉強会プロジェクトでは、学生によるIT勉強会の普及と、IT勉強会への学生の参加を促進すべく奮戦中。

所有資格はテクニカルエンジニア(データベース)、テクニカルエンジニア(ネットワーク)、ソフトウェア開発技術者、ORACLE MASTER Gold Oracle Database 10g、UMLモデリング技能検定L3など。

ブログ:学内IT勉強会のススメ



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