高い技術力を持って活躍する「学生スターエンジニア」たち。彼らはどのように生まれ育ち、どんなことを考えているのか。同年代のスターへのインタビューから、自分の就職活動のヒントを得よう。
こんにちは! 日本電子専門学校 高度情報処理科3年の塚田朗弘(id:atcorp)です。このたび、IT業界就職ラボの新連載「ライバルに学べ! 学生スターエンジニアに聞く」を執筆することになりました。
まずは簡単に自己紹介を。わたしはシステム開発やプログラミング、データベース技術が好きな、ごくごく普通の専門学校生です。普段はチューターとして他科の実習室管理や授業の補佐をしたり、電設部という非公式部で学内IT勉強会を主催したり、一般の社会人主催の勉強会に参加して交流したり、ということをよくやっています。学内IT勉強会は2009年中には一般公開する予定ですので、そのときは皆さん、どうぞご参加ください。
就職活動をするに当たって、「業界分析」「企業分析」「自己分析」の3つが大事、というのは、もはやスタンダードです。それぞれの分析がうまくいかず、悩んでいる人や学生は多いのではないでしょうか。
そんな中、学生時代から強烈なアイデンティティを発揮して、すでにIT業界で活躍しているような「学生スターエンジニア」に話を聞き、その考え方やITへの取り組み方を学び取ろう、ライバルがどんなことを考えているのかをもっと知ろう、というのがこの連載の趣旨です。卒業年次生の方も、そうでない方も、IT業界に興味のある学生にとって価値のある、少しでも有意義な連載になればと思います。よろしくお願いします。
石森大貴さんは、1990年生まれの現役大学生で、現在は筑波大学に在学中です。
高校生のころからAbelProjectというレンタルサーバサービスを運営し、サーバやネットワークセキュリティについて非常に高いスキルを持っています。また、「セキュリティキャンプ2007」に一般参加後、2008年にはチューターとしてキャンプの講師補助を務めました。今年の8月に開催される「セキュリティ&プログラミングキャンプ2009」でもセキュリティコースのチューターとして参加予定です。
まさに第1回にふさわしい「学生スターエンジニア」である石森さんに、ざっくばらんにインタビューしました。
では、インタビュースタート!
―― まず、近況についてお聞きします。いまは筑波大学に通っているんですよね。つくばに引っ越されたとお聞きしたのですが。
石森 はい、筑波大学に在学中です。近況としては、セキュリティ&プログラミングキャンプ2009にチューターとして参加することが決まっています。ちなみに、今年のチューターの最年少は、なんと16歳だそうですよ!
―― 16歳でしかもチューターですか! すごいな。すごいといえば、プログラミングコース主査のよしおかひろたかさんに話を聞いたんですが、今年の講師陣はすごい充実度ですよね。
石森 すごいですよね。そういえば、今日(編注:取材日の7月10日)がキャンプ一般参加者の選考発表日ですね。
―― 僕の学校の友達も、何人か朝からドキドキしていました(笑)。
石森 僕の周りでも6人くらいドキドキしていたみたいです(笑)。
―― 石森さんは高校時代からAbelProjectを運営されていますよね。サーバやセキュリティ……というか、コンピュータに興味を持ったのはいつごろからで、どんなきっかけだったんですか?
石森 ええと、幼稚園の……。
―― えっ、幼稚園!?
石森 はい。幼稚園のとき、家にワープロがあって、確か1年くらいでタイピングをマスターしたんですよ。最初は仮名入力だったんですけど、そのうちローマ字入力になって。
―― 早いですね、いろいろと(笑)。幼稚園っていったら、そもそも言葉もおぼつかないかもしれない、くらいの時期じゃないですか。
石森 同じころにエレクトーンを触り始めました。いまでも弾いているんですよ。どうやら「キーボード」というものが好きらしくて。
―― なるほど、指で鍵盤をたたいたりするのが好きだと。
石森 そうです。で、小学3年生のときに、お小遣いでPCを買いました。
―― 小学3年生っていうと、10年くらい前ですよね。
石森 そうです、ちょうど10年前。
―― じゃあ、初めて買ったPCのOSはWindows 98あたりですか。
石森 はい、Windows 98でしたね。それまでは、学校にあったWindows 95と、富士通のFM TOWNSを触って遊んでいるくらいでした。Windows 98のPCを買ったとき、Windowsスクリプティングホストの本も一緒に買って、プログラミングをして遊んでいました。
―― 小学3年生でプログラミングデビューですか。PCを買うだけじゃなくて、そこで一気にプログラミングに入るというのは勢いがありますね。
石森 いまは、プログラミングはそんなに得意じゃないんですけどね(笑)。
―― そうなんですか。小学生でパソコンを使うとなると、例えばゲームをやりたいとか作りたいとか、そういう遊び目的ではなかったんですか?
石森 ゲームは……「RPGツクール」というゲームを買って遊んでいたんですが、しばらくしたら飽きちゃいました。
それから、小学5年生くらいのころにインターネットを使い始めて、ハマってました。まだダイヤルアップの時代で、電話料金の請求がひどいことになって親に怒られたという……。
―― 僕もまったく同じ経験がありますね(笑)。通話状態ですからね、ダイヤルアップ。テレホーダイとかありましたね。電話料金もそうだし、インターネット接続中=通話状態だから、「塚田さんのところはいつ電話しても話し中だ」ってことになって、それでまた親から怒られたり。
石森 ああ、同じです(笑)。
石森 その後、小学6年生のときだったかな。学校のクライアントPCがWindows 2000 Professionalで、サーバがWindows 2000 Serverだったんですよ。そのとき、クライアントPCから職員室や校長室にあるサーバが見える(=アクセスできる)状態になってて。本当はちゃんとネットワークが分けられて、見えないはずなんですけど……。
―― それは……学校のネットワーク管理がまずい状態になっていたということですね。
石森 そうです。で、ある日、校長室にあるサーバの管理者権限、取れちゃったんですよ。
―― 「取れちゃったんですよ」って。また軽くいいますね。
石森 はい、取れちゃったんです。
―― そのときからセキュリティに興味が?
石森 そうですね。あと、映画の影響がありますね。よく映画で「ハッキングが」とか「ウイルスが」とか、出てくるじゃないですか。昔に見た映画で、ちょっとタイトルは分からないんですけど、「フロッピーディスクに感染するウイルス」が問題になって、ストーリーが進んでいくという話があったんですよ。それを見て、面白いなあって思ったのもきっかけの1つですね。
―― そういうのを見て、一種のあこがれというか、「かっこいいなあー」と。
石森 そうそう。「フロッピーディスク感染型ウイルスいいなぁー」と思ってたら、世間でフロッピーディスクが使われなくなっちゃった(笑)。
―― もう標準ではついてないですからね、FDD。しかもいまの話だと、セキュリティに興味を持ち始めたのは、そもそも映画で「クラッキングをする側」にかっこよさを感じて、ということになるんですね。
石森 そうなりますね(笑)。
―― でも、セキュリティを知っているってことは、攻撃の仕方を知っているってことですもんね。
石森 そうなんですよ。表裏一体です。
―― 「近くにきっかけを与えてくれた人がいて……」というのはなかったんですか?
石森 小学3年生のときの担任の先生がコンピュータ好きな人で、その先生の影響はあると思います。
―― そういう、「コンピュータって楽しいんだよ」って教えてくれる先生がいるといいですよね。どんなことをやってる先生だったんですか?
石森 普通の先生だったんですけど、「学校のPC、どんどん触っていいよ」っていってくれたんです。それで、僕は少しPCに慣れてたし、好きだったんで、どんどん触らせてもらっていました。ほかの先生はあんまり生徒にPCを触らせてくれなかったんですよね。「壊すからダメ」って。
―― でも学校に置いてある教育目的のPCですよね?
石森 そう。そうなんですけど、なぜか「ダメー!」って(笑)。
―― その先生がいて良かったですね、それは。素晴らしい先生だ。
石森 すごく良かったと思います。PCを買うとき、「選ぶの手伝ってあげるよ」っていってくれて。当時はまだCPUが500MHzとかの時期。いろいろと手伝ってくれました。
―― 幼稚園のころからエレクトーンに触っていたとのことですが、エレクトーンは習ったり、勉強したりはしたんですか?
石森 習っていました。エレクトーン自体はいまも続いています。発表会に出て演奏したり、学校で演奏会をやったりしています。
ほかにも、ジャスコで演奏したり。ジャスコに、ピアノとかエレクトーンとかを演奏する「なんとか広場」っていう場所があるじゃないですか。そこで演奏してます。
―― たまにジャスコや大きめのショッピングセンターに行くと見掛ける「演奏してる人」なんですね。
石森 そうそう(笑)。それ以外にも、地域のお祭りで演奏する機会があって。「また弾いてるんだ」って声を掛けられます。
―― 音楽の方でもちょっとした有名人じゃないですか! まさかそんな人が本格的にサーバを管理してるとは、みんな思わないでしょうね。音楽の道に進もう、とは考えなかったんですか?
石森 音楽でもよかったんですよ。何でも面白がるタイプなので。幼稚園のとき、花も好きだったから、「花屋もいいなあ」とか考えてました。
―― どんなジャンルの曲を演奏するんですか?
石森 最近だとアニソンですね。「エヴァ」がはやってるじゃないですか。それで、「エヴァの曲を弾いてくれ」って依頼がきたり。
―― ジャスコで。
石森 そう、ジャスコで(笑)。
―― 中学以降はどんな感じだったんですか?
石森 僕は英語が好きで、中学校で英会話を始めました。街にいる外国人によく話し掛けていました。
―― すごくアクティブですね。
石森 高校のときには、クラスの友達に「夏休み、アメリカに遊びにいこうよ」って誘われて、1カ月くらいホームステイしてましたね。
―― 現在、実際にITエンジニアとしての仕事をしていて、英語は必要だと思いますか?
石森 すごく思います。例えば、UNIX系のコマンドで「man」コマンドってあるじゃないですか。
―― あります。ああ、あれをやると確かに……(笑)。
石森 英語がバーっと表示されますよね。あれが読めないと困る。
―― 石森さんとしては、「会話する」より「読む」方が多いんでしょうか。マニュアルとか、論文とか、技術書とか。
石森 確かに読むことも多いですけど、会話する機会も結構ありますね。海外の技術者と話す機会が結構あるので。そういうときは英会話の経験が役に立っています。
―― ありがとうございます。いままで以上に英語を勉強する気になりました。
―― それにしても、多趣味で多才ですね。まだまだ趣味がありそうな気が……。
石森 買い物が好きですね。衝動買いが多い。ドメインも衝動で取る、みたいな感じです(笑)。
―― ううん、ドメインの衝動買いってのは珍しいですねえ。
石森 こないだも、SSL証明書を5年分、衝動的に買いました。
―― えええ。SSL証明書を衝動買いする人は普通いないような……。
―― さて、散財のお話が出たわけですが、アルバイトはされているんでしょうか?
石森 今年の夏休みはアルバイトをしない予定です。3月まではサイバーディフェンス研究所でWebアプリケーション診断のアルバイトをしていました。
―― それは確か、ブログのブラッディ・マンデイの記事がきっかけで話が進んだんですよね(編注:石森さんが執筆するCNET Japan読者ブログ「元現役高校生サーバー管理者の考察日誌」の「『ブラッディ・マンデイ』を考察する」シリーズのこと。TBS系テレビドラマ「ブラッディ・マンデイ」の番組中に登場するコマンドクラックシーンを詳細に考察した内容で、当時石森さんが現役高校生ということも重なって一部で話題になった。サイバーディフェンス研究所は同ドラマの技術監修を担当)。
石森 はい。最初はTBSの人が読んでいて、サイバーディフェンス研究所の人も読んでくれたんだそうです。それで、セキュリティ&プログラミングキャンプの講師を通じてお話がきたんです。
―― そうだったんですか。いろいろな人脈が生きたんですね。
石森 そうなんですよ。2月3日に東京に呼ばれて、アルバイトの面談を受けました。最初はこっちがお願いしてたんですが、あちらも人手が欲しかったらしくて、「3月に来ちゃいなよ、バイトしなよ!」といってくれて、その場ですぐ話が決まりました(編注:石森さんは宮城県出身)。
―― あの記事はいろいろなところで話題になっていましたが、やはり影響は大きかったですか?
石森 そうですね。あの記事は25万以上のアクセスがあったんですよ。
―― 僕も最初はあのブラッディ・マンデイ考察の記事で石森さんを知って、まんまとファンになっちゃったんですよ。「すっげーなあ、この高校生」っていいながら楽しく読んでました。
石森 ありがとうございます。
―― CNET Japanで読者ブロガーを始めたのは、どういういきさつだったんですか?
石森 NTTデータ先端技術の根津(研介)さんが、「君はもっと目立つところで情報発信した方がいいよ!」といってくれたんですよね。それで、その日のうちに応募しました。
―― 衝動買いならぬ「衝動申し込み」だ。
石森 そう、衝動申し込み(笑)。まさにそうですね。思い立ったらすぐにやっちゃう、ということが多いですね。行動力はやたらあると思います。
―― 思いが熱いうちに行動に移すというのは大事ですよね。
石森 そう思います。その日のうちにやる。じゃないと、冷めちゃうとか、忘れちゃうとか、もったいないですから。
―― あの記事は、単純に興味があって始めた企画だったんですか?
石森 はい。なんていうか……本当は、そんなにコアな技術情報を書くつもりはなかったんですよ。高校生向けの「サーバの安全な構築の仕方」みたいな、簡単な内容にしようと思っていました。でも、ある日なんとなくテレビを見てたら、ブラッディ・マンデイが始まって、コンソール画面が流れて、「あ、ls(編注:UNIX系のOSで使われるコマンド)じゃないじゃん! 高度なコマンドが流れてる!」って(笑)。
―― 反応しちゃったわけですね。書かざるを得ない、と。で、ツッコミどころもあって。
石森 そうそう(笑)。
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