リンクステートルーティング(OSPF)の設定と確認:ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座(24)(1/2 ページ)
本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNA(Cisco Certified Network Associate)を解説します。2007年12月に改訂された新試験(640-802J)に対応しています。
今回は、リンクステートルーティングプロトコルである「OSPF」について解説します。第23回「RIPによるルーティングテーブルの作成」で紹介したディスタンスベクター型のルーティングプロトコルは、ホップ数の制限や収束が遅いなどの特徴がありましたが、リンクステートルーティングプロトコルはそれらの制限をなくしてより大規模なネットワークに対応できるように設計されています。
ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座 各回のインデックス
- 第1回 新CCNA試験について知ろう
- 第2回 ネットワークのABC、OSI参照モデルとプロトコル
- 第3回 データはどうやって伝わるの?
- 第4回 LANの基礎を丸かじり
- 第5回 データ同士の通せんぼ??コリジョンてなぁに?
- 第6回 TCP/IPを制するものはネットワークを制す
- 第7回 TCPで、確実&効率よくデータを送受信しよう
- 第8回 サブネットマスクの計算をマスターする
- 第9回 どこまでがネットワーク部? クラスフルとクラスレス
- 第10回 シスコ ソフトウェアの基礎を学習する
- 第11回 Cisco IOSモードの設定
- 第12回 Cisco IOSのモードの設定情報と識別情報
- 第13回 インターフェイスの設定とルータの初期化
- 第14回 ネイバーの検出とCDPによるデバイス管理
- 第15回 Telnetを使用したリモートデバイスの情報収集
- 第16回 SDMによるルータの設定と管理
- 第17回 MACアドレスとフレームで、スイッチの基本動作を学ぶ
- 第18回 スパニングツリープロトコル、動作の仕組み
- 第19回 スイッチにVLANを設定する
- 第20回 VLAN操作を容易にするVTPの機能
- 第21回 ポートセキュリティの設定コマンドと確認
- 第22回 ルータの経路学習とスタティックルートの設定
- 第23回 RIPによるルーティングテーブルの作成
- 第24回 リンクステートルーティング(OSPF)の設定と確認
- 第25回 高速なコンバージェンスを実現するEIGRPを学習する
- 第26回 可変長サブネットマスク(VLSM)と経路集約
- 第27回 標準アクセスリストについて学習する
- 第28回 拡張アクセスリストについて学習する
- 第29回 無線LANの基礎について学習する
- 第30回 無線LANセキュリティの必要性と対策
- 第31回 NATとPATの設定方法を学ぶ
- 第32回 IPv4の枯渇に備えよ??IPv6の特徴と必要性
- 第33回 VPNの基礎を学習する
- 第34回 WANカプセル化プロトコルについて学習する
- 第35回 フレームリレーの基本を学習する
OSPF概要
OSPFは自律システム内で使用されるリンクステート型のルーティングプロトコルです。ディスタンスベクター型のRIPよりも大規模ネットワークで使用できるように設計されており、収束時間が短いことが特徴です。リンクステート型はルーティングテーブルを交換するのではなく、最初に「Helloパケット」と呼ばれるパケットをお互いに交換し、OSPFを使用している隣接ルータを検出します。この隣接ルータをネイバーといいます。その後、各ルータのインターフェイスの情報を交換します。「リンク」はルータのインターフェイス、「ステート」はインターフェイスの情報です。そのリンクステート情報は「LSA」(Link State Advertisement)と呼ばれ、インターフェイスの種類、IPアドレス、ネットワークのタイプなどが含まれています。そのLSAを寄せ集めてネットワーク全体の地図である「LSDB」(Link State DataBase)を作成します。その後、SPF(Shortest Path First)アルゴリズムから各ルータを起点とした最短パスツリーを計算し、最適パスをルーティングテーブルに格納します。
OSPFは大規模ネットワークで使用できるよう設計されていますが、大規模なネットワークでは、交換されるリンクステート情報の数が多くなり、それによってリンクステートデータベースのサイズも大きくなります。その結果CPUやメモリを多く消費することになるので、OSPFではエリアという概念を設けて、大規模ネットワークでより効率よくルーティングできるように考えられています。1つのエリアの中のルータ台数を減らすことにより、トラフィックが減少し、リンクステートデータベースのサイズが小さくなります。また、ある1つのエリア内でネットワーク障害が発生した場合、それを通知するアップデートはそのエリア内で流れるので、結果的に収束時間も短縮されます。
エリアは番号によって識別され、同じエリア内にいるOSPFを設定したルータ同士は同じLSDBを持つことになります。OSPFを使用して複数のエリアを作成する場合、エリア0と呼ばれるエリアを使用し、そのほかのエリアをエリア0に接続する必要があります。エリア0はバックボーンエリアともいい、各エリア間でやり取りされるトラフィックはエリア0を経由することになります。
確認問題1
問題
OSPFの特徴について正しいものを2つ選択してください。
a.リンクステート型ルーティングプロトコルである
b.ディスタンスベクター型ルーティングプロトコルである
c.ハイブリッド型ルーティングプロトコルである
d.エリアを使用して収束を高速化する
e.エリアによりブロードキャストドメインを分割する
正解
a、d
解説
OSPFはリンクステート型のルーティングプロトコルです。従って選択肢aは正解です。ディスタンスベクター型はRIP、ハイブリッド型はEIGRPが該当します。エリア分割することにより収束時間を短縮することができるので選択肢Dは正解です。ブロードキャストドメインを分割するのはルータです。
DR(Designated Router)/BDR(Backup Designated Router)
LAN環境のように、複数のデバイスが同時に通信を行うことができるようなマルチアクセスネットワークでは、サブネットごとにDRとBDRの選出が行われます。DR/BDRとは自身が接続されているマルチアクセスネットワークを代表して、LSAの交換をとりまとめるルータです。マルチアクセスネットワークで、DR/BDRの選定がない場合、ルータの数が増えるほど、やりとりをするリンクステート情報の数が膨大になってしまいます。そこでOSPFを設定する各ルータの中から代表ルータであるDRとバックアップ代表ルータであるBDRを選出することにより、やりとりをするリンクステート情報を減らすことができます。DR/BDR以外のルータは224.0.0.6のマルチキャストアドレスを使用して、DR/BDRあてにLSAを送信します。そして、その情報をDRが224.0.0.5のマルチキャストアドレスを使用して全ルータあてに送信します。DR/BDRを選出することによりLSA交換の効率化につながります。なお、ルータ間を1対1で接続するようなポイントツーポイントネットワークでは、LSAを交換するルータは必ず対向ルータになりますので、DR/BDRは選出されません。
DR/BDRの選出は以下のとおりです。
<DR/BDRの選出プロセス>
(1)OSPFプライオリティが最大の値を持つルータがDR、次に大きい値を持つルータがBDR(インターフェイス単位に設定)。デフォルトは「1」、「0」にするとDR/BDRには選出されない。
プライオリティが同じ場合は、
(2)ルータIDが最大の値を持つルータがDR、次に大きい値を持つルータがBDR
ルータIDとは、OSPFルータを識別する32ビットの数値
<ルータID選出プロセス>
1.手動設定
2.ループバックインターフェイスのアドレス(最大の値)
3.有効な物理インターフェイスのアドレス(最大の値)
※1〜3は優先度が高い順
確認問題2
問題
DR/BDRの説明として、正しいものを2つ選択してください。
a.エリアごとに1台のDRが選出される
b.マルチアクセスネットワークでは、サブネットごとにDR/BDRが選出される
c.どのようなネットワークでもDR/BDRが選出される
d.DRあてにアップデートを送信する時は、224.0.0.5のマルチキャストアドレスが使用される
e.DRから全ルータあてにアップデートを送信する時は、224.0.0.5のマルチキャストアドレスが使用される
正解
b、e
解説
マルチアクセスネットワークでは、サブネットごとにDR/BDRが選出されます。エリアごとではありません。従って選択肢bが正解です。DR/BDRが選出されるのはマルチアクセスネットワークのみで、ポイントツーポイントネットワークでは選出されません。DRから全ルータあてにアップデートを送信するマルチキャストアドレスは「224.0.0.5」、そのほかのルータからDR/BDRあてにアップデートを送信するマルチキャストアドレスは「224.0.0.6」です。従って選択肢eが正解です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.