検索
連載

秋の情報処理技術者試験を振り返る特集:IT資格動向ウォッチ(3)(1/3 ページ)

今年、制度改訂後初の情報処理技術者試験が行われた。前編では、秋試験(高度試験、ネットワークスペシャリスト(NW)、ITストラテジスト(ST)、システムアーキテクト(SA)、ITサービスマネージャ(SM))を振り返る。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 情報処理技術者試験は10月の秋試験が終わり、これで新試験制度の下ですべての試験区分が実施されたことになります。ITパスポートの新設、高度試験を中心とした試験区分の見直しが図られた新試験ですが、果たして出題内容に変化はあったのでしょうか。今回は、秋試験全般について振り返ることにします。

 秋試験の内容に触れる前に、まずは新試験に至った背景をおさらいしておきましょう。

試験改定の概要

試験改定の経緯

 情報処理技術者試験の改定は、経済産業省が推進する高度IT人材育成の基本戦略「高度IT人材育成プラットフォームの構築」の一環として行われています。高度IT人材とは、「ITを中心とする高度な専門知識を持ち、ビジネスの場で活用する人」のことです。「課題解決や付加価値の創造、ビジネス革新を実現し得る創造的な実務能力を発揮できる人材」であり、今後のわが国の経済、社会システムの発展を支えていく中核として不可欠な人材としてその育成が急務であると考えられています。

 高度IT人材の育成(高度IT人材育成プラットフォーム構築)には、

  • 高度IT人材モデルとスキルの定義、共有
  • ITベンダ・ユーザーも含めた体系
  • スキル獲得の仕組み(育成手法)
  • スキルの客観的評価を行う仕組み

が必要であり、これらの枠組みを定めるために、『共通キャリア・スキルフレームワーク』が作成されました(平成20年10月に公表)。共通キャリア・スキルフレームワークでは、 キャリアとして3つの人材類型(さらに6つの人材像)と7段階のレベル(各人材に必要な能力と果たすべき役割の程度)を、また知識体系としてBOK (Body of Knowledge)が定義されています。

 共通キャリア・スキルフレームワークは、従来独自に発展してきた3つのスキル標準から成り立っています。すなわち、(1)ITスキル標準(ITSS:システムベンダ系人材が対象)、(2)組込みスキル標準(ETSS):組込み系システム開発人材が対象)、(3)情報システムユーザースキル標準(UISS:情報システム利用者の立場からITに携わる人材が対象)と、情報処理技術者試験などIT人材の評価指標が参照すべき共通モデルです。共通キャリア・スキルフレームワークを用いることで、各スキル標準がキャリア・スキルを相互参照します。また情報処理技術は試験でキャリアレベルの判定(レベル1〜4のみ)を行うことが可能となりました。今後、人材育成・評価への活用増加が望まれます。

試験改定のポイント

 試験改定については、独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)の発表した「情報処理技術者試験制度見直しの考え方」で、以下7つの変更ポイントが掲げられていました。

(1)共通キャリア・スキルフレームワークに準拠した試験制度
(2)共通キャリア・スキルフレームワーク レベル1に対応する試験の創設
(3)ベンダ側人材とユーザ側人材の一体化
(4)組込みシステムに関する知識・技能の重要性の拡大への対応
(5)高度試験の整理・統合
(6)最新の技術動向を反映して出題範囲の抜本的見直し
(7)受験者の利便性の向上

 これらの意義・詳細などについては、IPAの資料あるいは昨年の記事「報処理技術者試験、新制度の全貌が明らかに」をご覧いただくとして、ここでは簡単にまとめます。

・試験区分が、共通キャリア・スキルフレームワークの人材類型とレベル(1〜4)に対応

 各試験区分は、共通キャリア・スキルフレームワークに準拠して、表1のようにキャリアレベルと対応しました。ITパスポート(IP)から応用情報技術者(AP)までの基本系3区分は、ITユーザー、IT開発者のいずれにも対応する試験となっています。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

 試験の出題範囲についても、共通キャリア・スキルフレームワーク知識体系(BOK)に対応し、午前試験の出題範囲が、表2のように再構成されました。ITパスポートから応用情報技術者の午前試験、高度午前?試験の出題範囲はすべて共通(全分野が対象)で、レベル(知識の深さ・技術水準)で差が設けられていることが特徴です。高度午前II試験は、各試験区分に固有の専門知識が問われるため、出題分野は異なります。

表2 共通キャリア・スキルフレームワーク(BOK)と試験出題範囲の対応
表2 共通キャリア・スキルフレームワーク(BOK)と試験出題範囲の対応(クリックすると拡大)
※数値の記入された項目が、当該区分の出題範囲を表す。 1〜4は技術レベルを表し、4が最も高度、上位は下位を包含する。
※(4)は出題範囲のうちの重点分野を表す。

 表2は、知識の中分類までしか掲載していませんが、詳細な内容については、 IPAの「試験要綱(出題範囲)Ver1.1」でダウンロード可能なので確認してください。小分類とその知識項目例(主要なキーワード)も掲載されていますので、各分野の内容を把握するために目を通しておくとよいでしょう。試験要綱は、このほかにも、試験体系、試験実施形式や採点方式、各試験区分の対象者像、業務と役割、期待する技術水準、午後出題範囲など有用な情報がまとめられていますので、ダウンロードしておくとよいでしょう また、IPAの同サイトに掲載されている「シラバス」には、各試験区分に要求される知識と技能が詳細に説明されており、高度試験午後問題でどのような内容が問われるのかを知る上で参考になると思われます。

・試験実施に関連した変更点

 試験区分ごとに、次のような特徴があります。

(ITパスポート)
 午前形式の問題100問解答。

(基本情報技術者)
 マネジメント・ストラテジ系分野を午前・午後とも出題。午後試験に表計算を追加。プログラム言語(表計算含む)は、1問選択解答に減少。

(応用情報技術者)
 マネジメント・ストラテジ系分野を午前・午後とも出題。午後II試験は廃止。午後試験(旧午後?試験相当)は出題12問すべてが選択問題。

(高度試験)
 午前試験が、午前?(共通知識)、午前II(専門知識)に分割。午前?は全高度区分で共通の試験に。また午前?試験については、免除制度が導入され、応用情報技術者・高度試験の合格・午前?試験で合格基準突破のいずれかの条件を満たせば、以後2年間の午前?試験の受験が免除される。午後?試験は、選択解答数が2問に減少(解答時間は同じ)。

(採点および合格基準)
 すべての試験で100点満点の素点方式を採用(ITパスポートは1000点満点)。合格基準は配点の60%以上(午後IIの論述試験はA〜Dの4段階評価でAが合格)。

 以上、主だった点のみ列挙しましたが、詳細な内容については、情報処理技術者試験センター(JITEC)のWebサイトや「試験要綱」で確認してください。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る