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秋の情報処理技術者試験を振り返る特集:IT資格動向ウォッチ(3)(2/3 ページ)

今年、制度改訂後初の情報処理技術者試験が行われた。前編では、秋試験(高度試験、ネットワークスペシャリスト(NW)、ITストラテジスト(ST)、システムアーキテクト(SA)、ITサービスマネージャ(SM))を振り返る。

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秋期試験の総括

受験状況

 情報処理試験の受験者は、昨年度まで毎年減少していましたが、新制度に移行した本年度は一転して大幅に増え、応募者数は前年比7万4000人増の約61万人でした。これは3年前と同程度の水準です。増加傾向となるかどうかはいまだ分かりませんが、新試験への関心の高さを物語っています。また試験区分ごとの応募者では、表3に示すとおり、ITサービスマネージャ以外はすべて前回比増となっています。中でもITパスポート、基本情報技術者、応用技術者は、前回20年春と比較して、それぞれ約2万5000人、約1万7000人、約6000人増(昨年ソフトウェア開発技術者試験と比較しても約1万人増)と基本系3区分の応募者の伸びが顕著でした。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

各試験区分の出題概要

 今回は、秋期だけに実施される試験区分についてまとめています。春期試験でも実施される、基本情報技術者、応用情報技術者、情報セキュリティスペシャリストについては、次回に触れることにします。

高度試験

 新試験では、午前試験が分割されました。試験区分共通の知識(技術レベル3)を問う午前?、各試験区分特有の専門知識(技術レベル4)を問う午前IIと明確に性格分けが成されています。

・高度共通午前I

 春試験と同じく、ズバリ! 応用情報技術者午前問題の完全サブセットです。出題分野は、春試験とまったく同じ、テクノロジ系17問(56.7%)、マネジメント系5問(16.7%)、ストラテジ系8問(26.7%)でした。午前?試験は、応用情報技術者と同じ技術レベル3とされていますが、用語選択形式の問題、過去問題と類似問題の出題比率が高く、また理論的・技術的に難解な問題が出題されていないため、標準よりも少し低いです。この傾向は春試験でも同様でした。春試験の午前?突破率は受験者の8割程度でしたが、秋試験も同程度と予想しています。午前?試験の免除対象者が増えることになりますから、来年以降、午前?試験の受験者は徐々に減少していくと思われます。

・午前II試験

 春試験では出題範囲から満遍なく出題され、専門分野の比重が低い傾向でした。また過去問題の流用も半数以上と高いことが特徴でした。秋試験は、一転して各区分ともに専門分野が中心に出題され(25問中16〜23問)に、新規問題・過去出題テーマをレベルアップした問題が増えています。春試験よりも難易度は高まり、午前II試験突破率(春は平均9割超)は多少下がることが予想されます。

ネットワークスペシャリスト(NW)

 旧テクニカルエンジニアと出題範囲、難易度ともほぼ同レベルと公表されていましたが、そのとおり出題範囲、内容、設問形式などに変化はありません。

(午前II試験)
 出題分野はすべてテクノロジ系ですが、ネットワーク17問(68%)、セキュリティ4問(16%)と重点分野が主体となっています。HTTP のGET/POSTメソッド、WebDAV、認証VLANなどが新規テーマですが、既出テーマの出題でも視点を変えるなど、専門性と新規性が考慮された出題内容でした。また用語形式、計算問題、特徴や仕組みの理解を問う問題、ネットワーク構成図から解答を導く問題などがバランスよく配分され、多面的に理解を図る構成と考えられます。全体として難易度は標準的です。

(午後I試験)
 出題テーマは、「ネットワークの障害解決」「メールシステムの移行」「eラーニングシステムの増強」とオーソドックスなものでした。最新技術に関する知識というよりは、一般に広く利用されている技術について、ある程度深い知識を持ち、設問に適用する能力が要求されています。全般にレイヤ2に関する出題が増えていました。

 旧試験と解答時間は同一で問題選択数が1問減ったため、1問あたりの解答時間は増えましたが、単純な知識問題が減少し、条件設定を複雑にして理解力や思考力が求められる問題が増えています。結果として、問題ボリューム、設問数・解答数は旧試験と変わらないものの難易度はやや高めであったといえます。

(午後II試験)
 出題テーマは、「無線LANの構築」「サーバの移設」でした。出題の技術内容そのものに大きな変化はありません。より具体的で詳細なレベルの技術知識が問われたり、運用管理のスキル・ノウハウが含まれる(問2)など、ネットワーク運用管理の実務経験によって差が出る設問が見受けられました。難易度は、旧テクニカルエンジニアと同レベルかやや高いといえます。

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