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第9回 強化されたIIS 7.5(後編)Windows Server 2008 R2の真価(1/4 ページ)

IIS 7はモジュールの追加で機能を大幅に拡張できる。FTPやWebDAV、URL書き換え、SEO対策など、代表的な追加機能を解説。

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  Windows Server 2008 R2の真価 ―― 実質新世代サーバOSの真の実力を知る ―― 
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連載目次

「Windows Server 2008 R2の真価」は、Windows Server 2008の後継OSである、Windows Server 2008 R2の注目機能について解説するコーナーです。


始めに

 前編では、Windows Server 2008 R2に搭載されているIIS 7.5の開発に至るまでの経緯や新機能および変更点に関して整理をした。後編ではIIS 7.5の本体ではなく、プラグインとして利用する拡張機能(IIS Extensionsとも呼ばれる)について、その提供方法や代表的な拡張機能を紹介する。

IIS 7.xの拡張機能とその提供方法

 前編で触れたように、IISの拡張機能は新しいIIS 7(IIS 7.0およびIIS 7.5の両方を指す。以後まとめてIIS 7.xと呼ぶ)のモジュール構造によって実現されている。IISの開発チームは今後、次のように開発を進めていく。基本的には、各拡張機能単体のプロジェクトを立ち上げ、パイロット版として小チームで開発を開始する。その後、本採用になったものが正規にテスト工程を経て、CTP版(Community Technology Preview版)、ベータ版として出荷され、最後に製品版として出荷される。もう1つ注意が必要で、さらにその後、日本語対応させるための工程がある。現在の開発手法では、各言語版(ロケール)は、簡単にいうとリソースの翻訳で対応している。だがIISの拡張機能については、まずは出荷することを最優先するという方針になっているため、最も世界での利用者が多く、開発時にテストも終わっている英語版が最初に出荷される。一方でOS/IISの標準機能への取り込み工程というのが、その次の段階として控えている。

 出荷方法が一番複雑に推移したのがFTP 7なので、この例で見てみよう。

 Windows Vista/Windows Server 2008の「役割」であるIIS 7.0に付属しているFTPは通称「FTP 6」である。IIS 6.0付属のものと何ら変わりはなく、管理ツールもIIS 6.0用の管理ツールが必要になる。次にIIS開発チームは拡張機能としてFTP 7.0の開発を開始し、単体の拡張機能として「http://iis.net/」サイトでベータ版の提供を開始した。そしてFTP 7.0の英語製品版出荷後にWindows 7/Windows Server 2008 R2の開発が進行し、並行してFTP 7.0のバージョンアップであるFTP 7.5の開発が行われた。この間にFTP 7.0に発生した問題に対して更新プログラムの提供も行われている。そしてWindows 7/Windows Server 2008 R2にFTP 7の標準搭載が決まり、FTP 7.5がIIS 7.5本体の標準機能になるとともに、FTP 7.5の拡張機能単体としての提供も始まった。この時点でWindows 7/Windows Server 2008 R2に含まれているFTP 7.5は日本語化されていたが、単体のFTP 7.5の日本語版は少し遅れて提供が開始された。ここまでそろうことでIIS 7.0(つまりWindows Vista/Windows Server 2008)にも日本語のFTP 7.5をインストールできるようになった。


FTP拡張機能の出荷フロー図(FTP 7.xの例)

 このように、単体開発された拡張機能は単品で出荷されるとともに、プラグイン構造であるために、マイナー・バージョンアップ前のIIS 7.0も対象とした出荷が可能となる。その上で、ユーザーの要望が多いものは次世代の標準機能としてOSやIIS本体に取り込まれていく。

 さて、日本で一番心配になるのは製品サポートであろう。IIS 7.xの拡張機能はIIS 7.x本体のサポートに準じることになっているので心配は無用である。ただしこのようにモジュールのプラグイン構造になっていることで、製品サポートの難度は上がっている点は注意する必要がある。いままでは「IISのバージョンを教えてください」と聞けば済むところが、「IISのバージョンと利用しているモジュールや拡張機能を教えてください」となるからだ。

 次に提供方法についても触れておく。単体の拡張機能はまずベータ版の段階から「IIS拡張機能[英語]」のサイトで提供が開始される。ここには日本語による説明はないので、日本語ミラーサイトが用意されている。TechNetオンラインにあるIIS TechCenterの拡張機能ページだ。

 本家のサイト(http://iis.net/)で日本語化されたモジュールを入手する場合には、各拡張機能ページの下の方に複数ある言語リンクを探さないといけない。一方、この拡張機能のページであれば、日本語の説明文もあるし、拡張機能のリンク先も日本語のものを指しているので、日本語環境で利用する場合にはこのページを活用していただきたい。

新しい統合インストーラ

 前編では、IIS 7.0に関する出荷後のユーザーからの要望についていくつか列記した。IIS TechCenterの拡張機能ページは、運用管理やきちんとしたサーバ構築には不可欠なものであり最適なのだが、開発者や試行段階ではもっと手軽に環境を作ってみたいという要望が多くあった。よく考えると、さまざまなものをいろいろなところから入手してダウンロードする大変さはIISに限ったことではない。

 そこでマイクロソフトが取ったアプローチは、新しく「Web Platform Installer(以下WebPI)」という統合インストーラを開発/提供することだった。WebPIのVer.1はIIS 7周りの環境作りに特化していたが、現在提供されているVer.2ではさらに進化している。進化している大きなポイントは、Webアプリケーション、特にオープンソースのインストールをもサポートしている点だ。

 WebPIの原理はWindows Updateによく似ている。つまり、最新情報は常にカタログとしてRSSフィードで提供されており、その内容に従って表示されている。当然、最初のページで表示されている新着情報も内容に応じて変わるということになる。


Web Platform Installer 2.0起動後の初期画面
Web Platform Installerを使うと、Web開発に必要なサーバ群(IISやSQL Serverなど)やコンポーネント、開発ツール、オープンソースWebアプリケーションなどを簡単にインストールできる。

 WebPIの詳細な機能の紹介や運用方法などについては、次の記事やサイトを参照していただきたい。

 WebPIでインストール可能なアプリケーションはWindows Webアプリケーション ギャラリーに登録されている。


Windows Webアプリケーション ギャラリー
WebPIでインストールされるアプリケーションはこのサイトからインストールに関する情報を取得し、自動的にインストール作業を行う。

 最初に日本語環境構築を意図してこのギャラリーに掲載されたのがWordPress、次にXOOPS Cube Legacyである。両方とも、有名なPHPベースのアプリケーションだ。今後掲載される日本語対応アプリケーションがどんどん増えてくるのを期待している。

 XOOPS Cube LegacyのWebPI対応の様子やWebPIを使ったインストール方法についての情報は、次のサイトや、先の紹介記事を参照していただきたい。

 WebPI 2.0を使えば環境構築作業は非常に簡単になるため、マイクロソフトの環境構築の1つの手法として、今後も使われることになるだろう。その一例が前編のコラム「Windows Server AppFabric―.NET の実行環境としての IIS 7.5」で取り上げたWindows Server AppFabricだ。台数の多い環境では単体ダウンロードの方が便利かもしれないが、開発環境の準備などではWebPIが活躍することになる。Windows Server AppFabricがエンタープライズのタブからインストールができることからも分かるとおり、WebPIは社内環境での環境構築も想定している。


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