自己イメージを変える実体験を持とう!:理系学生のための「就活」お悩み相談室(9)(2/2 ページ)
いよいよ就職活動が本格化する。面接や自己分析などがうまくいかなくて、悩む場面も多くなるだろう。学生相談を担当するカウンセラーが、就活生の悩みに答える。
2. 解決の道筋は、1つではない
「接客が少しでもできる自分」になりたいとします。まずは、いまの得意な仕事領域、事務の仕事の中でならば、最低限これならできるということ、例えば「笑顔で話し掛ける」「あいさつを心掛ける」などをしてみましょう。苦手領域の克服を、同じ領域で埋めなくてもかまいません。難しいことをして克服しようとしなくてもいいのです。勉強やバイトでなくとも、趣味や娯楽など、自分になじんだもので、少しずつやりたいことを実現していく方が楽しいでしょう。1つのことに自信がつくと、いつの間にか別の場面でも、以前より自信をもってふるまうことができるというわけです。
3. ステップ・バイ・ステップで段階的に取り組む
なりたい自分に近づくためには、いま何ができるかを細かく分割し、段階的な進行をイメージします。登山なら、最終目標はエベレストをイメージしつつ、低めの山から、少しずつ高い山に挑戦する感じです。身近にいる最もよくできる人を例に、いきなり高いイメージを持つと、挫折の危険があります。
分割した課題のうち1つでも実現したこと、わずかでも「楽しい」「役に立てた」と思えたことがあれば、手帳にメモをしたり、満足感を得られた日に花丸をつけたり、写真を撮って、視覚的に記録を残し、自分の変化を確認してください。できれば信頼できる恋人や両親、カウンセラーなどと喜びを共有するとなお、変化に実感が持てます。
4. 素直に誰かの指導を仰ぐ
実際に行動を起こしてからも、不安があればぜひ、先輩や大人に具体的な指導を仰いでください。ただし、「こうすればもっとよくなるよ」といった効果的なアドバイスができる大人は減っているようなので、皆さんの方から何に困っているのか、具体的に分かるように尋ねましょう。素直に教えを請うのは、人に好かれる1つの武器になります。頼られて嫌な人はいないはずです。
生まれ持った能力で何でもこなせる人は、幸せかもしれません。しかし、たやすくできたことが、その人の力になるとは限りません。「挫折」を克服した人こそが、実感を持って自信をつけられるのではないでしょうか。「若い」ということは、自己イメージをこれからいくらでも変えられるということでもあるのです。
参考文献
- 村瀬嘉代子『統合的心理療法の考え方』金剛出版、2003年
- 橋本文隆『問題解決力を高めるソリューション・フォーカス入門――解決志向のコミュニケーション心理学』PHP研究所、2008年
- 宮田敬一『解決志向ブリーフセラピーの実際』金剛出版、1997年
筆者プロフィール
松浦 慶子
臨床心理士・日本カウンセリング学会認定カウンセラー。
国際基督教大学心理学科卒業、筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻修了 。大学、専門学校での学生相談や講師、精神科睡眠障害外来での医療相談、EAP機関・ピースマインドにて社員や家族のカウンセリングなど、幅広く相談活動を行っている。
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