お願い、おわび、催促の文書は相手の立場に立って:文章コミュニケーション・リファクタリング!(7)(2/3 ページ)
「文章下手」が原因で、コミュニケーション不全に陥ったことはないだろうか? 言葉足らずで相手の誤解を招いたり、指示がまったく伝わっていなかったり……開発現場を改善するための「文章コミュニケーション」方法を紹介。
おわびは文書だけで済ませてはいけない
本連載の第2回『「何でもメールで済ませる」とはまってしまうワナ』で説明したように、おわび(謝罪)は口頭で伝えるのが原則です。重要な、または深刻な問題を起こしてしまったときは、電話でおわびした後、相手を訪問して直接おわび(謝罪)すべきですし、比較的軽い問題でも、電話で話しておわび(謝罪)するべきです。
しかし、電話をかけたときに、窓口となる担当者や関係者が不在などの理由で連絡が取れないことがあります。そのようなときは、取り急ぎ文書(主にメール)でおわびの一報を入れることが重要です。
当初の約束とは異なる文書を送ってしまった場合や、文書に記述の誤りがあった場合などの軽微なミスについておわびするときも、原則通りまずは電話でおわびを口頭で伝えるべきです。電話で話せなかったときは、文書(メール)でおわびを送り、その後に、電話で相手をつかまえて口頭でおわびするようにします。
深刻な問題を起こしてしまったときも、原則通りです。例えば、製品の納期が大幅に遅れるとか、納入したシステムの瑕疵により迷惑をかけてしまったり、損害を与えてしまうという場合です。まずは電話でおわびするように試みます。それができなかったときは文書(メール)でおわびの言葉を送り、その後に、電話で相手をつかまえて口頭でおわびして、さらにアポイントメントを取って、相手を訪問して、直接会って、おわびの言葉を伝えるべきです。
このたびは誠に申し訳ありませんでした。
どうやら、プログラムに誤記述があったようです。プログラミングは人間がするものですから、どうしてもミスが発生してしまいます。かつての“2000年問題”しかり、バグのないプログラムはないというのが実情です。
本日、担当者に修正プログラムのインストールに伺わせますので、システムの使用は今しばらくお待ちください。
今後ともよろしくお願いいたします。
この例は、おわび(謝罪)の文書ではなく、言い訳と弁明の文書になっています。おわびの文書では、言い訳や弁明は絶対に書いてはいけません。また、文章の冒頭を見ると、単に「このたびは誠に申し訳ありませんでした」としか書いていません。これでは、読み手はどんな問題について謝罪しているのか明確に把握できません。
直前に生じた問題に対する謝罪だろうということは推察できますが、おわびの文書を書くときに、そのような不明確で不親切な表現は禁止です。おわびの文書(メール)では、どの問題についてのおわび(謝罪)しているのか、おわびしている対象となる問題を具体的に記述しなければなりません。
また、おわびの対象となる問題が発生した原因と、今後の方針(対策など)を明確に記述していないのも感心しません。取り急ぎメールで送信するおわびの文書であっても、問題や障害の調査報告書と同様に、問題の原因と今後の対応策(詳細なものではなく方針、方向でよいでしょう)を明確にすることは基本です。
また、上記のような表現では、「メールだけで謝罪を済ませようとしている」と読み手に受け取られてしまいます。後で電話をかけて謝罪したり、後日訪問して謝罪するならば、それが読み手にも分かるように明確に記述しなければなりません。「電話で話せなかったので取り急ぎメールを送った」ということ、「後で再度、電話をかけること(または、後日、訪問したいので都合を聞きたい)」ということを明確に記述します。
このたびは当社が納入したシステムに瑕疵があり、貴社にご迷惑をおかけしましたこと、深くおわび申し上げます。
まず電話でおわびを差し上げねばと、先ほどお電話を差し上げましたが、ご不在とのことでしたので、メールにてご連絡をさせていただきました。
緊急に原因を調査しましたところ、プログラムで、アルファベットの大文字と小文字を書き間違えていたことが判明いたしました。非常に初歩的なミスであり、あってはならないことです。
本日、修正プログラムのインストールに伺わせていただきます。
今後はこのような不手際がないように、厳重に品質の管理を行っていく所存です。
メールにて恐縮ですが、取り急ぎおわびをさせていただきます。
後ほどあらためてお電話させていただきます。また、後日、あらためておわびと調査報告に伺いたく、お電話の際にご都合をお聞きしたいと存じます。
今後とも変わらぬお引き立てのほどをよろしくお願いいたします。
電話ですませることができる程度のおわびでも、基本は同じです。
このたびは「A社製ソフトウェア◎◎についての調査報告書」を、内容に誤記述があるままでお送りしてしまい誠に申し訳ありませんでした。
まず電話で差し上げねばと、先ほどお電話を差し上げましたが、ご不在とのことでしたので、メールにてご連絡をさせていただきました。
一か所とはいえ貴社の判断に大きな影響を及ぼす、非常に重要な部分の誤記述であり、ご迷惑をおかけしましたこと、深くおわびを申し上げます。
正しい記述に修正した調査報告書を本メールに添付してお送りしています。
今後はこのような不手際がないように、さらに注意深く業務に取り組む所存です。
メールにて恐縮ですが、取り急ぎおわびをさせていただきます。
後ほどあらためてお電話させていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
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