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LTE(Long Term Evolution)Windows Insider用語解説

最近、スマホの新製品や新たな通信サービスの紹介などでよく聞く「LTE」。何やら携帯のデータ通信がとても速くなるとか。その特徴や背景、最新動向を解説。

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 LTE(Long Term Evolution)は携帯電話の新たな通信規格の一種で、執筆時点で主流の第3世代(3G)や第3.5世代(3.5G)に対し、第3.9世代(3.9G)に分類される技術である(国際電気通信連合がLTEを4Gと呼称することを認可したことから、最近ではLTEを4Gと呼ぶ事業者が増えている)。3G/3.5Gの技術をベースに通信速度を高めており、規格上の最高通信速度は受信300Mbps/送信75Mbpsに達するという。すでにNTTドコモが「Xi(クロッシィ)」という名称でLTEによる通信サービスを開始しており、最高で37.5Mbps/上り12.5Mbps(いずれも屋外での速度)で通信できるという。対応製品も登場している。


LTE対応のスマートフォンの例
NTTドコモのXi(クロッシィ)に対応した富士通製のAndroid搭載スマートフォン「ARROWS X LTE(F-05D)」。2011年12月に発売される予定とのこと。

LTE登場の背景

 LTEは、NTTドコモが2004年に提唱した「Super 3G」という携帯電話の通信仕様が基になっている。これは、3Gで利用している周波数帯を長期間、効率よく利用し続けること、および3Gから4Gへのスムーズな移行のため、3Gと4Gの橋渡しとなることを目的としていた(参考情報: NTTドコモの報道資料「Super 3Gの実証実験を開始」)。4Gでは、100Mbpsクラスの通信速度と、音声も含めてすべてIP化された通信などが想定されている。この4Gを実現するための技術の一部を3Gや3.5Gに対して導入することで、性能や利用効率を高めつつ、3Gの周波数帯を長期にわたって有効に利用するということだ。こうしたことから、Super 3Gは4Gの直前、すなわち3.9Gの技術と位置付けられていた。やがてSuper 3GはLong Term Evolution(長期的な進化)という名称で、3G(W-CDMA)の標準化団体「3GPP」によって標準化され、仕様が定められた。前述のように、最近になってLTEを「4G」として扱ってもよいことになったため、LTEは4Gの一種と分類されることもよくある。

 また近年になって、スマートフォンの普及とそのアプリケーション利用などによって、携帯電話のデータ通信量は急速に拡大していることから、通信キャリアにとって通信帯域(容量)の拡大が重要な課題となっている。その対策の1つとして、電波利用効率に優れたLTEが注目を集めている。

LTEの特徴

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 LTEの特徴としては、その高速性が挙げられる。規格上では最高で受信300Mbps/送信75Mbpsと、光ファイバなどの有線通信に匹敵する速度である。執筆時点でサービス提供中のNTTドコモの「Xi」の場合、最高で受信37.5Mbps/送信12.5Mbps(一部施設の屋内では受信75Mbps/送信25Mbps)の通信速度を発揮するという。

世代 通信キャリアのサービス名 規格・仕様 最高速度
受信 送信
3G FOMA(NTTドコモ) W-CDMA 0.384Mbps 0.384Mbps
Softbank 3G(ソフトバンクモバイル) 0.384Mbps 0.064Mbps
CDMA 1X(au) CDMA2000 1x 0.144Mbps 0.064Mbps
3.5G FOMAハイスピード(NTTドコモ) HSPA 14Mbps 5.7Mbps
3Gハイスピード(ソフトバンクモバイル)
CDMA 1X WIN(au) CDMA2000 1xEV-DO 3.1Mbps 1.8Mbps
ULTRA SPEED(ソフトバンクモバイル) DC-HSDPA*1/HSPA+*2 42Mbps 5.7M/5.8Mbps
EMOBILE G4(イー・モバイル)
3.9G  Xi(NTTドコモ) LTE 37.5Mbps*3 12.5Mbps*3
Softbank 4G(ソフトバンクモバイル) AXGP*4 76Mbps*5 10Mbps*5
携帯電話サービスの通信方式と速度
「最高速度」には基本的に製品レベルの最高速度を記している。3Gや3.5Gに比べると、LTEを採用したXiは2倍以上の速度を利用できることが分かる。その一方で、DC-HSDPA/HSPA+といった3.5Gの拡張技術を利用したサービス(ULTRA SPEEDやEMOBILE G4)は、受信時の速度がLTEと同等以上に達している。Softbank 4Gは2012年2月の本サービス開始予定。
*1 DC-HSDPA: Dual Cell High Speed Downlink Packet Accessの略。3.5Gの技術をベースに、複数の周波数帯を同時に利用することで受信時の速度を高める技術
*2 HSPA+: High Speed Packet Access Plusの略。3.5Gの技術であるHSPAをベースに、さらなる速度向上を図った技術
*3 一部施設の屋内では受信75Mbps/送信12.5Mbps
*4 AXGP: Advanced XGP(eXtended Global Platform)の略。LTEと互換性のあるデータ通信仕様
*5 サービスとしての公称最大速度は受信110Mbps/送信15Mbps

 またLTEでは、無線通信における遅延時間が5msec以下と明確に決まっているのも特徴の1つだ(従来は特に規定されていなかった)。これは音声や動画を遅延なく伝えることで、音声/ビデオ会議などのアプリケーションの品質を高めるのに役立つ。さらに、前述のようにLTEは電波利用効率がよいとされる。同じ周波数帯域幅であっても、3G/3.5Gに比べてLTEはより高速に通信できるので、その分だけ多くのユーザーを収容できる余地がある。

 一方、音声の伝送方式については3Gと特に変わらない。速度の向上や遅延時間の短縮といったメリットはLTEのデータ通信のみが受けることになる。

LTEの高速性を支えている技術・技法

 以上のような高速通信を実現するために、LTEでは3G/3.5Gと比べてさまざまな改良および新技術の導入が行われている。例えば、一般的には利用可能な周波数帯域幅が広いほど通信速度を高められるが、最大5MHzだった3.5Gの周波数帯域を、LTEでは最大で20MHzまで拡大している。

 また通信用アンテナの本数を増やして、それぞれで同時に通信することでも速度は高められる。LTEでは送受信のアンテナをそれぞれ4本まで装備できる。

 無線通信ではデジタル信号を無線に適した形へ変換(変調)して送信するしくみになっている。このとき、1回の変調で送信できるデータ量を増やすことでも通信速度を高められる。3.5Gでは1回の変調につき4bitを送信できるところを、LTEでは6bitを送信する。

利用するには機器/基地局のLTE対応が必要

 LTEが3G/3.5Gの技術をベースにしているとはいっても、これらの間に直接的な互換性があるわけではない。LTEに対応していない既存の3Gや3.5Gの機器/基地局では、まったくLTEを利用できない。LTEの高速な通信を利用するには、LTEに対応した機器(携帯電話やデータ通信アダプタ、モバイル・ルータなど)が必要になるほか、基地局もLTEに対応している必要がある。

 ただしLTEに対応した機器は、3Gまたは3.5Gによる通信機能も実装されているのが一般的だ。そのため、LTE未対応の基地局しかないエリアであっても、通常は3G/3.5Gで通信できるようになっている(もちろん通信速度はLTEより遅くなる)。


LTE/3.5G両対応機器の例
これはNTTドコモのXi対応のデータ通信カード「F-06C」。LTEのエリア内ではもちろんLTEの速度で通信できるほか、LTEのエリア外でも3.5G(FOMAハイスピード)または3G(FOMA)で通信できる。

各通信キャリアにおける今後のLTEの動向

 以下、携帯電話の通信キャリアごとにLTEの導入状況や導入予定を簡単にまとめておく。

NTTドコモ

 前述のようにXiの商用サービスをすでに始めており、2011年10月にはXi対応のスマートフォンやタブレットを多数発表している(参考情報: NTTドコモの報道資料「2011−2012冬春モデルに24機種を開発」。今後はXi対応エリアを順次拡大していくとしている。

au

 LTEと同じ3.9Gに分類されるモバイルWiMAXのサービスを提供しているが、それとは別に2012年12月からLTEの商用サービスを開始する予定とのことだ。

ソフトバンクモバイル

 執筆時点で総務省が通信キャリアの選定を進めている700MHz/900MHz帯の携帯電話向けシステム導入において、900MHz帯を確保してLTEを導入したい意向を示している。また、これとは別に「TD-LTE」と互換性のあるデータ通信仕様「AXGP」によるサービス「Softbank 4G」を、2012年2月から本サービスとして始める予定とのことだ。TD-LTEとは、送受信の各通信を時間で分ける時分割多重方式を採用したLTE規格の一種で、中国の大手事業者であるチャイナモバイルなどがすでに採用している。

イー・モバイル

 700MHz/900MHz帯の携帯電話向けシステム導入において、これらの帯域を確保して2012年以降にLTEのサービスを展開したいとしている。


 このように国内の主要な携帯電話の通信キャリアは、こぞって次世代の通信規格にLTE採用の意向を示している。ビジネスでスマートフォンやノートPCなどによるモバイル通信を活用することが珍しくなくなった現在、LTEの動向は今後のモバイル通信サービス/機器の選定などに大きな影響を与えるので、よりいっそう注視すべきだろう。

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