DC間ネットワーク仮想化を支える通信網の強み:イベントレポート(2/2 ページ)
OpenFlowを使ったネットワーク仮想化を盛り込んだクラウドサービスを展開するNTTコミュニケーションズ。これら技術を最大限に生かすべくDCの拡大、通信インフラの拡充を進めている
シームレスなデータセンター接続を可能にする通信インフラを持つ強み
展示ブース入り口には、海底ケーブルが展示されていた。同社が独自に敷設している海底ケーブルの本物と、敷設専用船の模型だ。
震災の際、オンライン上ではTwitterなどによる安否確認や災害状況確認が盛んに行われたことは記憶にあることだろう。あの時、北米大陸にあるTwitterのサーバシステムを経由した通信が問題なく実現したのは、この海底ケーブルによるところが大きい。
震災に際はもちろんダメージを受けたが、幸いにも日本・北米間の重要な通信インフラについては複数のケーブルで安全性を担保していたわけだ。ダメージを受けたケーブルについては、展示模型のような専用の補修船を使って地道な作業が行われたという。
また、同社の通信環境は遅延が少ないことがウリの1つになっている。下の図にあるように、東京―シンガポール間で64ミリ秒、東京―シカゴ間で127ミリ秒程度の遅延だという。
上の写真にもあるように、直近では2012年8月に開通したASE(Asia Submarine-cable Express)による東南アジア地域の通信環境改善が行われている。
東南アジア地域は日本企業の進出が盛んな地域の1つである。金融取引の多いシンガポールや香港はもちろん、自動車産業の集積が進むタイや巨大な国内市場に期待が集まるインドネシアを筆頭に日本の商社らが積極的な開発を進めている。
これらの地域で本格的な現地法人を立ち上げる際に最も懸念される問題の1つが通信インフラである。簡単な拠点として小さなオフィスを構える程度であれば問題はないだろうが、移転や現地法人の本格展開、現地企業との取り引きといった場面では、日本国内拠点と現地との間で流通する情報量は格段に増える。同社の通信インフラ投資が東南アジア地域に向けられているのは、こうした市場の声を反映してのものだろう。
同社が提供するクラウドサービスなどもこの通信インフラの上に載る。クラウドサービスでは、サーバ側への通信がどれくらい遅延なく行えるかが選択基準の1つとなり得る。この点に、通信インフラそのものを自社提供できる同社のITサービスの強みが現れているといえよう。
もう1つの注力領域:BYOD
もう1つ、同社の注力している領域にBYOD(Bring Your Own Device)がある。同社では、2011年から自社内でBYODを実際に導入して検証、ノウハウを蓄積してきた。
仮想デスクトップ環境の提供などと合わせ、個人携帯電話端末の業務利用についても実践している。
社員の私有端末の中で、どのようにプライバシと業務情報を切り分けるかは大きな課題だが、通信会社としての同社の強みは、すでに音声通話などで企業向けのサービス(050plus、0035など)を展開してきたことにある。
「社内では2011年9月から管理系のスタッフを中心に検証を実施した。携帯端末貸与による基本使用料負担がなくなったのはもちろんだが、IP電話を活用することで、通話料金自体も削減できた」(NTTコミュニケーションズ 経営企画部 BYODソリューション推進室 室長 三隅浩之氏)
下の写真は、同社が現在展開している通話サービス「0035」を使ったデモだ。スマートフォン搭載の通話機能ではなく、専用の通話アプリケーションから接続する。
このサービスでは、IP電話、0035ビジネスモードの両方で通話ができる。IP電話は通話品質とのトレードオフがあるが、社内連絡などの用途に活用できる。0035ビジネスモードからの接続は通常の携帯電話同等の通話品質を保ちつつ、回線利用料金については業務用途と見なされ、契約企業側に請求される仕組みだ。
いずれの場合でも、相手側に通知される端末電話番号は業務用番号となり、個人端末側の番号が秘匿できる。
同サービスは2013年春をめどに「電話帳」のクラウド集約機能などを追加していく予定だという。
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