SAPジャパンは2月20日、同社のERPを含む業務アプリケーションのスイート製品「SAP Business Suite」をHANA上で動かすことを可能にした「SAP Business Suite powered by SAP HANA」(以下、BS by HANA)を発表した。5月末より一般への提供を開始する。SAPジャパン 代表取締役社長 安斎富太郎氏は「BS by HANAは、当社のハッソ・プラットナーが2006年に大学生と次世代のERPについて語った際に出てきた『インメモリ上でERPを動かしたい』という発想が結実したものだ。当時は技術的制約で20年は無理だろうと考えられていたが、10年かからずに実現した。これはまさに次世代のERPと呼ぶにふさわしい」と開発背景を説明した。
遂にSAPのERPがHANAに対応
SAPは同社のスイート製品「SAP Business Suite」をHANAに対応させ、最適なパフォーマンスを発揮させるために、従来のBusiness Suiteに対して400カ所以上のカスタマイズなどを施した最新版「SAP ERP 6.0」をリリース。例え、20年前に導入した同社ERPであっても、ERP 6.0にアップグレードすることでHANAへの対応が可能だという。また、既存のERPシステムをHANA上に移行するためのツールも用意する。
安斎氏は「すでに数百社がデータベースをHANAに移行した実績がある。それらのノウハウを提供することで容易に移行が可能だ。BS by HANAにすることで、ビジネスイノベーションを起こすだけでなく、業務プロセスの改善等によって運用コストを30%〜50%削減するのも夢ではない」と移行実績とメリットを強調した。
HANAに最適化するために400カ所をカスタマイズ
今回、BSに施された400カ所のカスタマイズは、Business Suiteで特に重かった処理やボトルネックになりがちな処理に対して、データベース上で直接アプリケーションを処理をする“プッシュダウン処理”を採用。より迅速な処理を可能にしている。
しかし、処理が速くなるだけでは“業務改革”と呼べるような結果は生まれにくい。「実際のビジネスに対してBS by HANAがどのような恩恵を与えることができるのか?」について、SAP社内でも数百人の社員が社内SNSを利用してアイディアを出し合っており、顧客や協力企業を交えて、さまざまな可能性を模索しているという。
また、実際に導入した際のメリットに対するアセスメントサービスも用意。現在利用しているSAPアプリケーションの使用ログ(ワークロードモニタ:ST03N)をSAPに提供すると、SAPがそのログを分析し、BS by HANA導入によってメリットを受ける具体的な業務プロセス(23種類)とその根拠となるトランザクションコードやその元となるデータベーステーブルの一覧を作成し、アセスメントレポートとして1週間程度で提供する。
また、BS by HANAをより最適な環境で提供するためにコードの最適化サービスを提供する。前述のようにHANAに最適化するためにBSに施された400カ所のカスタマイズ以外に、ユーザーがカスタムで実施しているスクラッチ部分に関しても、最適化についてのレビューやアドバイスを提供する。また、IT部門や運用パートナーに向けて、HANAを運用するためのトピックを掲載した運用マニュアルも提供し、運用負荷低減を図る。
同社 リアルタイムコンピューティング事業本部長 馬場渉氏は、「DBをHANAに変えるだけで数倍は速くなるが、アプリケーションも最適化することで数千倍の性能を引き出せる。Business SuiteはすでにAWS上で動くが、BS by HANAはまだだ。今後、BS by HANAもAWS上で乗るはずだ。さらに仮想環境でも認定していくなど、今後もHANAはオープンプラットフォーム戦略を推進していく」と語った。
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