オープンクラウドに舵を切るIBM、OpenStack/TOSCAでIaaS/PaaSの相互運用性を強化:ベンダロックインのないクラウドの第2ステージへ
日本IBMは5月13日、同社製品・サービスに対するオープンクラウドの積極的展開に向けた記者説明会を開催した。クラウド間の相互運用性を高めていく狙いだ。
日本IBMは5月13日、同社製品・サービスに対するオープンクラウドの積極的展開に向けた記者説明会を開催した。同社は今後、クラウドサービス「IBM SmarterCloud」において、「OpenStack」や「OASIS TOSCA」といったオープンスタンダードを推進し、IaaS/PaaSでのクラウド間の相互運用性を高めていく狙いだ。
現在、日本IBMも含め、Amazon Web Services(AWS)、Google、Microsoft、Salesforce.comなど、多くのベンダからIaaSやPaaSのサービスが提供されている。しかし、これらベンダ間で相互運用性は完全には確保されているわけではない。PaaSなど、より上位のレイヤをクラウド移行する際にはベンダ環境に依存することが考えられ、ロックインの心配などが付きまとうため、クラウド間の相互運用性や移植性に対してユーザー企業の期待が高まっている。
さらに、日本IBM スマーター・クラウド事業部 理事 クラウドマイスター 紫関昭光氏は、「IBMとしてはITシステムを、勘定系などを扱うSystems of Recordと、よりダイレクトにカスタマに向き合うSystems of Engagementに分けて考えている。後者については、より早いサイクルでの開発やデプロイが求められており、これらについては標準かつオープンな環境を採用することで実現できると考えている」と語る。
こうした背景から、米国IBMは3月4日、同社のすべてのクラウドサービスとソフトウェアをオープンクラウドアーキテクチャベースにすると発表(関連記事)している。
具体的には、2009年にシスコシステムズなどと共同で発表した「Open Cloud Manifesto」、仮想マシンイメージの標準フォーマットである「DMTF OVF」、オープンソースのクラウド基盤を整備する「OpenStack Foundation」、XML関連の標準化団体であるOASISが策定しているPaaS環境間連携規格「OASIS TOSCA」、開発プロセス・ツール間相互運用に向けRESTベースの仕様を策定している「OSLC/W3C LDP」、クラウド開発環境の開発プロセス標準化を推進する「OMG CSCC」という、6つのオープンスタンダードをIBM SmarterCloudにおいて推進し、製品・サービスに順次実装していく。
その中でも特にIBMが注力するのが、OpenStackとTOSCAという2つのオープンスタンダードへの対応だ。
OpenStackとは、ご存じのとおり、IaaSを構築するための仮想マシンや仮想ストレージなどのITインフラを提供する、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア。IBMをはじめ、Hewlett-Packard、Rackspace、SUSE、Red Hat、Canonicalなどの大手ベンダが支援しており、クラウドプロバイダー間における相互運用性・移植性の確保に期待されている。
IBMでは、「OpenStackの標準APIにより幅広いクラウドリソース(ハイパーバイザ、ネットワーク、ストレージなど)へのアクセスを可能にしていく」(紫関氏)という。
TOSCAとは、PaaSレイヤの標準化を目的とした標準で、正式名は「Topology and Orchestration Specification for Cloud Applications」。2012年1月16日に技術委員会が発足した。2013年3月にバージョン1がリリースされおり、紫関氏は「TOSCAがクラウドのカギとなる」と期待感を示した。
TOSCAでは、OSやデータベース、ミドルウェアなどのコンポーネントをサービステンプレートとして定義できるようにしている。これにより、PaaSレイヤにおけるサービスとアプリケーションの相互運用性・移植性を向上している。「IBMでは、TOSCAに準拠することでインターオペラビリティ、ポータビリティ、コンポーザビリティを高めようとしている」(紫関氏)
同社は、TOSCA対応の製品第1弾として、「IBM SmartCloud Orchestrator」を5月中にも正式に発表する予定だ。クラウドインフラ上にさまざまなサービスを組み合わせて導入できるようにするもの。また、「IBM PureApplication System」でも年内にTOSCAをサポートする。
「現在はベンダ間の溝が深く、移行が難しいために、ユーザーはクラウドベンダを決めかねている状況だ。そうした中、ベンダロックインのない、クラウドの第2ステージへと進んでいくことを期待している。IBMでは、標準化にコントリビュートしていくことで、クラウドの発展をリードしていければいい」(紫関氏)
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