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GEは自社の事業をどう変革しようとしているのかIndustrial Internetとは何か

ガートナーのユニークなアナリスト、スティーブ・プレンディス氏は、あらゆる産業がデジタル化していくといい、ゼネラル・エレクトリック(GE)を例に挙げた。GEの「Industrial Internet」への取り組みが、単なるPR活動でないことは明らかだ。では、GEは何をやろうとしているのか。公表されている資料から、改めて調べてみた。

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 ガートナーのアナリスト、スティーブ・プレンディス(Steve Prentice)氏は、「ITコンシューマライゼーション」という言葉を生み出した人だ。特定の技術よりも、ITと社会の関係に関する大きなトレンドを把握し、啓蒙することを仕事にしている。

 そのプレンティス氏にインタビューしたところ、同氏は現在の最大のトレンドは「普遍的なデジタル化(Ubiquitous Digitalization)」だと話した。筆者は、一般消費者に対面する企業でなければ、ビッグデータもデジタル化も、あまり関係はないのではないかと、ふと思ってしまうが、同氏は一部の企業ではなく、あらゆる産業がデジタル化していくといい、ゼネラル・エレクトリック(GE)を例に挙げた。

 GEはジェットエンジンなど「重厚長大」的事業を中心とした伝統のある企業だ。だが、同社はITの世界における活動を活発化している。2012年後半に、同社は「Industrial Internet」を推進していくとして、米国カリフォルニア州のシリコンバレーにソフトウェア開発センタを設立、周囲のベンチャー企業との関係を強化するためのイベントも開催した。また、2013年4月には、ヴイエムウェアとEMCが設立したデータ活用アプリケーション開発プラットフォームベンダ、Pivotalに出資すると発表した。これら一連の取り組みは、少なくとも単なるPR活動でないことは明らかだ。では、GEは何をやろうとしているのか。公表されている資料から、改めて調べてみた。

 GEの2012年度財務報告書は、「当社はソフトウェアおよびアナリティクスに大規模な投資をしている。製造業がソフトウェア業界にいなければならないことを、当社は知っている。当社の製品群に関連するアナリティクス、リアルタイムデータ、運用ソリューションを、GEのコア・コンピテンシの1つとしたい。当社は、自社の今後1年におけるサービス事業が、データを抽出・分析できる機能を備えたスマートな機器群の構築に左右されると認識している。当社はアナリティクスのリーダーになる。それが顧客にとってのGEの価値を高めるからだ。これがIndustrial Internetの力だ」(筆者訳、以下同)と述べている。

 この財務報告書では続いて、「Power of 1%」という言葉を用い、「当社の顧客のすべてが、資産のパフォーマンスを1%でも改善できれば、顧客は年間利益を200億ドル増やすことが可能だ。当社のいる世界では、小さな違いが大きな成果を生み出す」と説明している。

 では、具体的には何をやろうとしているのか。GEがよく引き合いに出す航空機のジェットエンジンの例でいえば、エンジンに取り付けたセンサの情報に基づき、必要な時に必要なレベルでのメンテナンスや修理を実行すればよくなる。このため、まず不測のエンジントラブルによるフライトのキャンセルで、利益を失うことが減るという。また、現在の米連邦航空局による規則では、一定の飛行時間に達すると、必ずエンジンの点検整備をしなければならない。将来は、データに基づいてこうした規則を変更するよう働きかけることも考えられるという。

 より具体的な例としては、米フロリダ州のAventura Hospitalという病院が、GE Healthcareの「AgileTrac」というRFIDを使った患者追跡システムにより、入院の待ち時間を68%減らすことに成功したという。

 407床の同病院は、患者の平均年齢が74歳で、入院患者の85%が救急外来という。このため、ベッドに空きができると、できるだけ早く次の患者に病室を割り当てる必要がある。ところが現実には、退院の手続きに時間が掛かったり、担当者がまとめて処理するケースが多く、空きがあるのに入れないという問題を抱えていた。

 そこで患者にRFIDタグを装着。通常リアルタイムのバイタルサインデータとのひも付けのために装着しているこのタグを、退院時には病室の特定場所に戻すルールにしている。これがリアルタイムで検知され、清掃担当者は(退院手続きが終わっていなくとも)迅速に病室の掃除にかかることができるという。同病院は退院専用ラウンジも設置、家族の出迎えを待つ退院患者は、このラウンジで待ってもらうようにして、ベッドを効率的に利用しているという。


IT INSIDER No.10では、ガートナーのカリスマアナリストにインタビューしました

 この例はビッグデータ解析というほどではないが、リアルタイムでデータを取得し、これに基づくアクションを行うことで、効率を高められるとともに、待ち時間減少という形で顧客の満足度を高められる可能性を示している。

 GEはこのようにモノや人をつなぎ、取得した情報をリアルタイムで利用するソフトウェアツールを展開することで、同社が関わる航空、電力、ヘルスケア、鉄道、石油・ガスの5分野にわたり、顧客の活動の生産性や効率を向上していくという。

 GEやその他の非IT企業のデジタル化について、ガートナーのスティーブ・プレンティス氏が語った内容を、IT INSIDER No.10 「カリスマITアナリストが語る、全産業を覆うデジタル化の波」にまとめました。ぜひお読みください。

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