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WWDC 2013キーノート(Safari編)ドリキンが斬る!(3)(1/3 ページ)

WWDC常連のドリキンがエンジニア視点で書きつづる。第2弾はSafari編と題して「OS X Mavericks」に搭載されるSafariの新機能紹介から、今後のグーグルとの関係までを妄想する。

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 気が付けば、「Apple World Wide Developers Conference 2013(WWDC 2013)」から既に約1カ月が経過してしまいました(汗)。前回のOS X編に続き、サンフランシスコで現地時間6月10日に開催された基調講演のレポート第2弾を、引き続きドリキン視点でお届けします。


Safariの発表を担当したソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのクレイグ・フェデリギ氏(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

Safari編

 「Safari」は、次期OS「OS X Mavericks」の新機能の一部として紹介されたため、正確には前回のOS X編で語るべき内容でした。しかし、個人的には、アップルの考えるSafariの方向性と、グーグルの考える「Google Chrome」の方向性に違いが現れてきており、非常に興味深かったのと、今後のWebテクノロジの方向性にまで影響する大きな分岐点に見えたため、あえて別枠にして取り上げます。

 この記事の読者にSafariの説明は不要かもしれませんが、その歴史を少しだけ紹介します。

Safariの歴史


Safariの最新版が搭載する主な機能(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 Safariは、アップルの開発した、OS Xに標準搭載されているWebブラウザです。

 Safariが登場する前、OS Xの標準Webブラウザはマイクロソフトの開発する「Internet Explorer for Mac」でした。2003年に入り、アップルはLinux系オープンソースプロジェクトのKDEに含まれる、KHTML/KJSブラウザエンジンをベースとした「WebKit」という新たなWebブラウザ用レンダリングエンジンの開発を発表しました。

 WebKitは現在、オープンソースプロジェクトとして開発が進められています。

 マイクロソフトがInternet Explorer for Macの開発を中止したことに合わせ、SafariはWebKitをレンダリングエンジンに採用した初のWebブラウザとして、同年にOS Xの標準Webブラウザとして採用されました。

 当時、Webブラウザといえば第2次ブラウザ戦争が起こる直前、Internet Explorerが絶大なシェアを誇り市場を独占していました。Netscape時代から地道に進化を続けていたMozilla FoundationのWebブラウザも、Firefoxと名前を変えて登場し、完成度が上がって、ぐんぐん人気が上がり始めたのもこの時期です。

 そんな状況で、KHTML/KJSをベースにしていたとはいえ、開発初期のSafariは完成度も機能も低く、正直な所、他のWebブラウザに比べると、標準Webブラウザと呼ぶにはかなり未熟な状態でした。

 ただ、従来のWebブラウザが、長い開発の歴史の中で進化し、過去の互換性に苦しみながら肥大化を続け、パフォーマンスの向上や新機能の開発に苦しむ一方で、過去の互換性にとらわれずシンプルな実装から始まったSafari/WebKitは、ハイペースで進化を続け、HTML5という言葉が流行り始めるころには、HTML5の互換性が最も高いWebブラウザの1つになるまで成長しました。

 その過程で、グーグルも、オープンソースであるWebKitをレンダリングエンジンに採用した新たなWebブラウザ、Google Chromeの開発を発表しました。オペラも長く築き上げてきた独自のレンダリングエンジンをWebKitに切り替えるなど、WebKitベースと呼ばれるWebブラウザが広まりました(最近オペラはレンダリングエンジンをWebKitからBlinkに切り替えました)。


WebKitを搭載したデバイスは15億台にも及ぶ(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 スマートフォン市場では、iOSもAndroidもWebKitベースのWebブラウザを採用したことで、WebKitが実質スタンダードなレンダリングエンジンとなりました。

 なので、個人的にも、もうブラウザ市場はWebKitベースなWebブラウザで落ち着くのかなと思い始めていたのですが、そんなに簡単に話がまとまらないのがWebブラウザ市場の面白い/ややこしい所です。

SafariとGoogle Chromeの方向性の違い

 ここにきて、WebKitを利用しているブラウザごとの方向性や主張に相違が出てきました。特にメインでWebKitを開発しているアップルとグーグルの方向性の違いが表面化し、なかなか1つのプロジェクトとして収集するのが難しい状況になってきました。

 グーグルはHTMLに足りないと思った機能は積極的に取り入れ、次々とGoogle Chromeに実装し、その有用性を実践して証明しつつ標準化するという、かなりアグレッシブな姿勢を取っています。

 一方のアップルも、新しい仕様の実装は積極的に行っています。ですが、OS X/iOSプラットフォームへの最適化を優先し、Windows版Safariの開発は停止しました。新機能の追加もグーグルのスピードに比べると遅くなっています。

 そういった中、今年4月、グーグルがWebKitから派生した新たなプロジェクト「Blink」を発表しました。Google Chromeは今後レンダリングエンジンをWebKitからBlinkに切り替える予定です。この動きはブラウザ業界に衝撃を与え、これをもって第3次ブラウザ戦争が勃発したとまでいわれています。

 そんな騒ぎのあった直後のWWDCであったことに加え、最近大きな動きを見せなかったSafariの新機能発表ということもあり、個人的にはとても興味深く、わざわざOS Xと項目を分けて取り上げたという次第です。

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