来年は「U-50」大会も? シニアの血も沸く夏の戦い:SECCON 2013 横浜大会レポート(2/2 ページ)
2013年8月23日、「CEDEC 2013」に併せてパシフィコ横浜で開催されていた「SECCON 2013」第1回地方大会が閉幕した。本戦の「CTF」に加え、その予選としてSQLインジェクションチャレンジやバイナリかるた/アセンブラかるたなど、趣向を凝らした競技が開催された。
2014年3月に開催される決勝戦への切符をつかんだのは……
これらの競技でそれぞれ上位の成績を収めた参加者が23日の決勝戦に進み、5時間に及ぶCTF(Capture the Flag)にて順位が決定された。
競技は、チーム戦ではなく個人戦であることもあってか静かに進んだ。参加者らはバイナリエディタや「OllyDbg」などのデバッガ、あるいは「IDA」や「WireShark」といった、CTFには必須のツール類を搭載したPCを持ち込み、用意された問題に取り組んだ。
この結果優勝を勝ち取ったのは、CTFで1564点を獲得したkusano氏。優勝者には2014年3月1日より東京電機大学にて開催される全国大会のシード権が与えられる。優勝したkusano氏は「会社の上長から『必ず勝ってこい』と言われていたので安心した」と一言。会場は笑いに包まれた。
若いものには負けられない?! スペースインベーダー作者×ゲームセンターあらし作者が語る「黎明期」
表彰式に合わせ、SECCONの特別審査員を務めたアミュージング代表 兼 タイトー 技術アドバイザーの西角 友宏氏、そして京都精華大学マンガ学部マンガ学科キャラクターデザインコース選任教員のすがや みつる氏によるトークセッション「レトロゲームの攻防戦」が行われた。西角氏は「スペースインベーダー」の開発者として、すがや氏は「ゲームセンターあらし」の作者として歴史に残る人物だ。
セッションはまず、実行委員を務めるNTTデータ 宮本久仁男氏が来場者に「『スペースインベーダー』をプレイしたことがある人」「『ゲームセンターあらし』を読んだことがある人」と問い掛けるところから始まった。片や、、アセンブラすら高価で遅く、機械語を直接操っていたマイコン世代。片や数GB単位のメモリを積んだPCが当たり前という世代なのだが、想像以上に多くの手が上がっていたことが印象的だった。
西角氏によると、スペースインベーダーを製作した当時は、アセンブラの実行にすら多くの時間がかかっていたという。「エディタで打ち込んで、アセンブラを読み込んでアセンブルをするのに、1KBにつき2時間かかっていた。いまでは信じられないでしょう」と語る。
そのため機械語でのコーディングとなったが「バグがあったときに割り込めない。下にずらすこともできないので、空いている場所へジャンプ命令を入れる。結果、スパゲッティみたいなコードが出来上がった。完成したあと、よく『解析されないよう、難読化がされている』と言われたが、実はそんなことはない(笑)」。
折しもSECCONでは機械語を元にアセンブラ命令が記された札を取る「アセンブラかるた」が開催されていたが、実行委員長を務めるサイボウズ・ラボの竹迫氏がその競技について触れると、西角氏は「Z80のコードなら参加できるかも」と力強く答えた。
そのほかにも、竹迫氏が「スペースインベーダーの最初の3バイトがNOP命令だと言う話を聞いた」と質問すると、西角氏はそれに対し「そのとおりで、もともとその位置にはデバッグのためにジャンプ命令を入れていた。完成後、その位置にNOPを置いた」と答えた。
「炎のコマ」はCPUクロックの限界に挑戦したもの?
一方、すがやみつる先生といえば、漫画に出てくる必殺技「炎のコマ」を思い出すマイコン少年も多いだろう。スペースインベーダーが取り上げられたのは第2回で、当時は編集者から1万円札を渡され、それがなくなるまでスペースインベーダーを研究しろ、と言われたそうだ。
その必殺技である炎のコマの着想について、すがや氏は「Z80のクロックサイクルが当時は1MHz(編集部注:1GHzではない)だったので、1秒間当たりにオン、オフが100万回行われていることになる。ならばそれを上回ればバグが起きるだろう、という理屈で、『魔球』とかと一緒(笑)」と笑う。
ところが「その後すぐにクロックサイクルが2MHzに上がってしまった。その後の必殺技はスポーツ新聞を編集者と一緒に読んで、プロレス技を参考にした」と裏話を語る。ゲームセンターあらしのヒットにより、ゲーム業界でも話題になり「メーカーに取材に行くと、『父ちゃんの仕事はこれだ!と胸を張っていえるようになった』と感謝されたこともあった」というエピソードも披露された。
ゲームセンターあらしがヒットすると、その後はマイコンにも手を伸ばしたそうだ。「秋葉原の「ビットイン」(注:ラジオ会館に存在したNECのショールーム。参考)に通っていた。その後シャープのMZ-80を買って、プログラミングに熱中した。朝までプログラミングし、3時間後寝てマンガを書くという生活で、それで目を悪くした。ある日、家族にパソコンを粗大ゴミに出されてしまうことになった」(すがや氏)。その後ポケコンを購入し、引き続きどっぷりとプログラミングにはまることになる。
シニア版SECCONも視野に?
スペースインベーダーには「名古屋打ち」や「レインボー」という裏技が存在する。これらは意図して作られたものではなく、「バグ」という扱いだそうだ。「バグなのですが、裏技として知られることになった。これが発生すると暴走する可能性もあるので、本当にヒヤヒヤした」(西角氏)。
これは、その当時におけるハッカーとの対決に近いもののようで、「ほかにも何か出るのではないかと当時は夜も眠れなかった。リセットを引き起こす可能性もあるので、1つ間違えるとゲームができなくなってしまう」と述べる。その後、レインボーは続編であるスペースインベーダーパートIIにて正式に「技」として認定されることになる。
今回、SECCONにて特別審査員を務めた西角氏は「大変勉強になった。若い方たちが一生懸命新しいことにチャレンジすることは非常に意義があることだと思う。私もけっこう年をとったが、この分野を勉強していこうと思う」と述べた。
またすがや氏は「興味深く拝見させてもらった。この年になったが、最近はPythonをやっている。セキュリティを考えないといけないなあと感じた。皆さんに破られないように頑張りたい」と述べ、会場は大きく沸いた。
実行委員長の竹迫氏はこのコメントを受け「来年はシニア向け、U-50のクラスを作るのも面白いかもしれない」と述べ、トークセッションは終了した。パソコン以前、マイコン以前からこの業界で楽しむ「重鎮」たちのトークは、年齢も時代も感じさせない「エンジニア魂」にあふれていた。
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