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System Center 2012 R2で構築する次世代ITインフラ【徹底解剖】System Center 2012 R2(2)(2/2 ページ)

クラウドを導入する上で、懸念材料の1つに「運用管理の煩雑化」を挙げる企業は多い。その懸念を払拭する運用管理ツールが「System Center 2012 R2」になる。今回はSystem Center 2012 R2でプライベートクラウドを構築する際のポイントを解説する。

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[Step 3]ポータルの作成――App Controller

 SCVMMで仮想化基盤の管理環境を整備したら、次はSystem Center App Controller(SCAC)でセルフサービスポータルを構成する。SCACは日本語版をインストールしても、英語のインターフェースとなるので注意が必要だ。ただし、SCACのインストールメディアには言語パックが同梱されているので、日本語の言語パックをインストールすればインターフェースは日本語化される。

 SCACには、SCVMMで作成したプライベートクラウドやパブリッククラウドのWindows Azureを登録する。これにより、ユーザーは仮想マシンを作成する際、特定の仮想化基盤にホスティングするかどうかを意識することなく、シームレスにプライベートクラウド、パブリッククラウドをSCACのコンソールから操作できるようになる。その場合、仮想マシンを展開するベースとなるのはVMテンプレートであり、ユーザーはVMテンプレートの中から適切なものを選択して仮想マシンを作成することができる。

 ただ、一般ユーザーが使用するためにはある程度、仮想化ホストの展開の知識が必要となることは否めない。そこで、マイクロソフトはWindows Azureと同様の管理インターフェースを、SCVMMで構成されたプライベートクラウドにおいて利用可能にするモジュール「Windows Azure Pack(WAP)」を提供している。

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図4:Windows Azureの技術をパッケージ化し、プライベートクラウドでも同じ管理インターフェースを利用可能にした「Windows Azure Pack」

 WAPではサービス管理ポータルを介して、「Webサイトクラウド」「仮想マシンクラウド」「サービスバス」の3つのクラウドサービスを複数テナントに提供することができる。また、サードパーティから提供されるモジュールを追加することで、機能を拡張することも可能だ。

Webサイトクラウド

 Windows Azureで提供されているWebホスティングサービスと同じ機能を提供。ギャラリーからオープンソースアプリケーションを選択するだけで、すぐにWebアプリケーションを展開できる。

仮想マシンクラウド

 Windows ServerとSystem CenterによるIaaS(Infrastructure as a Service)ソリューション。あらかじめ作成したVMテンプレートを選択することで、さまざまなワークロードに対応した仮想マシンを展開できる。

サービスバス

 アプリケーション間の連携でやり取りされるメッセージを管理する。

 今回はIaaSを提供する「仮想マシンクラウド」を紹介する。仮想マシンクラウドを提供するには、以下のコンポーネントを準備する必要がある。

  • サービス管理とポータルAPI:管理者とテナントに対し、WebポータルとAPIを提供。「テナントポータル」「管理者ポータル」「管理API」の3つのロールで構成
  • SPF(Service Provider Foundation):SCVMM管理サーバーのREST OData APIを公開。SPFはOrchestratorのメディアで提供されているが、Orchestratorと同じサーバーにインストールする必要はない。SCVMM管理サーバーとの併置も可能。WAPはOData APIを利用してSCVMMと連携する
  • SCVMM管理サーバー:仮想化環境の管理、運用を行うサーバー
  • 仮想化ホスト:SCVMM管理サーバーと連携して、仮想マシンの展開と実行を行う

 WAPはWebPI(Web Platform Installer)を使用してインストールする。WebPIはWebプラットフォームをWindowsコンピューター上に構築するためのインストーラーであり、マイクロソフトやオープンソースのWeb製品をカテゴリーや検索から探し出し、簡単にインストールすることができる。WebPIは以下のマイクロソフトのWebサイトからダウンロードできる。

■Microsoft Web Platform Installer 4.6

[URL]http://www.microsoft.com/web/downloads/platform.aspx

 WebPIはIISの管理ツール(IISマネージャ)と連動しており、IISの管理コンソールの操作メニューより「新しいWeb Platformコンポーネントの取得」から起動できる。

[Step 4]自動化および監視と保護――Orchestrator、Operations Manager、Data Protection Manager

 仮想化基盤が実稼働の段階に入ると、これを運用管理するためのさまざまなタスクが発生する。運用管理タスクの一部は、System Center Orchestrator(SCO)で自動化することで、作業負荷を軽減できるだろう。例えば、Windows Azureの管理では、SCOに「統合パック(Integration Packs)」を追加し「活動(アクティビティ)」を増やすことで自動化することができる。

■System Center 2012 R2 - Orchestrator Component Add-ons and Extensions

[URL]http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=39622

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図5:追加したWindows Azureの活動(アクティビティ)

 サーバーの監視にはSystem Center Operations Manager(SCOM)を使用する。SCOMでは、監視に必要な項目や問題解決方法などが組み込まれた「管理パック(Management Pack)」を利用することで、監視のベストプラクティスを容易に実践できるようになっている。Windows Azureを監視するための管理パック「System Center Management Pack for Windows Azure」が用意されているので、これを入手してインストールすればよい。

■System Center Management Pack for Windows Azure

[URL]http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=38414

 System Center Management Pack for Windows Azureでは、あらかじめ監視対象のWindows Azureサブスクリプションを登録するが、その際はWindows Azure管理証明書が必要になる。さらに、クラウドサービス、仮想マシン、ストレージアカウントも指定する必要がある。

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図6:Windows Azureを監視する2つのトポロジー

 Windows Azure仮想マシンを監視する際、SCOMと仮想マシンが直接通信する必要があるので2つのトポロジーが考えられる。1つはWindows Azure仮想マシンにSCOMを導入する方法。もう1つはWindows Azureとオンプレミス間をWindows Azure仮想ネットワークで接続する方法になる。

 仮想化環境の保護にはSystem Center Data Protection Manager(SCDPM)を使用するが、Windows Azureへバックアップすることも可能だ。ただし、直接Windows Azureへバックアップするのではなく、既にバックアップされたデータをWindows Azureへアップロードする形になる。バックアップ可能な項目は、NTFS形式でフォーマットされたボリューム上のファイル/フォルダーのみで、ベアメタル回復、システム状態、アプリケーションのバックアップには対応していない。従って、Windows Azureへのバックアップは純粋なデータのみが対象となる。

 ここまででプライベートクラウドの基礎部分は、ほぼ出来上がったことになる。System Center 2012 R2の全てのアプリケーションを利用しなくても、Windows Azureと連携したプライベートクラウドを運用管理できる基盤は用意できることがご理解いただけただろう。System Center 2012 R2には多くのアプリケーションが含まれているが、まずは使えるところからスモールスタートで始めてみてはいかがだろうか。

筆者紹介

阿部 直樹(あべ なおき)

エディフィストラーニング株式会社所属のマイクロソフト認定トレーナー。Active Directory、Network、Security、Hyper-V、Clusterなどを担当。マイクロソフト トレーナー アワード(2010年)およびMicrosoft MVP for Hyper-V(Apr 2010 - Mar 2014)を受賞。個人ブログ『MCTの憂鬱』でマイクロソフト関連情報を発信中。


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