世界制覇をもくろむLINE――ベールを脱いだプラットフォームの全体像とは:LINE Developer Conferenceまとめリポート(前編)(2/3 ページ)
LINEは4月15日と17日の両日、世界初となる「LINE Developer Conference」を開催。LINEプラットフォームの全体像を明らかにした。本稿では、その中でもLINEプラットフォームを統べるChannel Gatewayとは何か、LINEビジネスコネクトの仕組みとは、インフラをどのように高速化しているのかなどについてお届けする。
LINEプラットフォームを統べる「Channel Gateway」の全体像
ここからは、同社 開発1センター LINE技術推進室の田中洋一郎氏が「All about LINE Platform」と題して行った講演の内容を紹介する。
LINEのプラットフォームというと、LINE GAMEを稼働させるためのGAME Platformがよく知られており、その上で動作するゲームアプリはすでに50以上も提供されている。実は、その下に同社が「Channel Gateway」と呼ぶプラットフォームが存在しているのだ。
LINEでは、LINE GAMEやファミリーアプリだけではなく、LINEと連携して機能するアプリやサービスのことをチャネルと呼んでいるが、Channel Gatewayは、LINEと各チャンネルの間を橋渡しする役割を担う。つまり、ゲーム特有の機能を取り払った汎用的なプラットフォームといえる。
Channel Gatewayは、認証(Authentication)とAPIという大きく2つの機能で構成されている。
OAuth 2をベースにした「認証」
まず認証について見ると、例えば、PCを使って「LINE STORE」を利用する場合、PC画面上のLINE LOGINボタンを押せば、LINEアプリのログイン画面に遷移し、そこでLINEアカウントのメールアドレスとパスワードを入力することによってユーザー認証が完了。その後、ユーザー認証を要求したLINE STOREのサイトに戻ってサービスの利用を開始するという流れになる。この認証処理には標準認証プロトコルのOAuth 2をベースにした仕様を採用している。
一方、スマートフォンでLINEを使っているユーザーが、例えばLINE GAMEの1つであるLINE POPを利用する場合、LINE POP上でLINE LOGINボタンを押すと、LINEが立ち上がってアプリ認証画面が表示され、そこで、「同意する」ボタンを押すだけで認証と認可が完了、メールアドレスとパスワードを入力することなしに簡単にLINE POPの利用を開始できる。
この処理では、アプリがLINEに対して認証認可要求を投げ、ユーザー識別子とともにユーザーが同意した権限に応じたアクセストークンをLINE側から受け取り、アプリは、このアクセストークンを使って、Channel Gatewayが提供するAPIを使用可能になる。
1日当たり最大1億6千万アクセスの「API」
Channel Gatewayが提供する代表的なAPIとしては、認証を要求したユーザーIDや顔写真、ニックネームを取得できる「Profile API」、友達のリストとそれぞれの友達のプロフィールを取得できる「Friend list API」、友達にメッセージを送るための「Send message API」、タイムラインにポストするための「Post Timeline API」の4つがある。
Channel Gateway上では、これらのAPIは、HTTPS通信によるRESTful APIとして提供されるが、iPhoneとAndroid向けにSDKも提供されており、スマートフォンのアプリ開発者はRESTful APIを意識せずに各APIを利用できる。
これらのAPIはどの程度利用されているのか。例えば、Friend list APIで見ると、そのアクセス数は1日当たり最大で1億6千万の規模に達しているという。
さらに企業システム向けにプラットフォームを広げる「LINEビジネスコネクト」
LINEのプラットフォーム活用の可能性をさらに広げる機能として期待できるのが、今年2月26日に発表された「LINEビジネスコネクト」と呼ばれるサービスである。これは、一般の企業向けに、メッセージ配信やクーポン配信といったLINEの公式アカウントの機能を企業システム側で利用できるAPIを提供するものだ。
「LINEビジネスコネクト」もChannel Gateway上で上記、認証や各APIと同じレイヤーで展開され、現在すでにテレビ番組『いっぷく!』『トーキョーライブ24時〜ジャニーズが生で悩み解決できるの!?〜』で試験的な取り組みが行われたという。
例えば宅配ピザショップの場合、人気商品のスタンプを用意することで、ユーザーは公式アカウントにスタンプを送るだけでその商品を注文できる。また、レンタルビデオ店では、返却日の直前にLINEでメッセージを送ったり、タクシー会社では、LINEから位置情報を送ってもらって配車を行ったり、テレビ局では、ユーザーがテレビ局の公式アカウントに送信したメッセージを番組放映中にテレビ画面上に表示したりすることも可能になる。
LINEビジネスコネクトが実際にどのように情報をやりとりするのかを、宅配ピザショップの例で見てみよう。
まずユーザーがピザ注文用のスタンプを押すと、そのメッセージがLINEサーバーに送られ、LINEサーバー上でSignature(電子署名)が算出されて、その電子署名とともに、スタンプが送られてきたことを企業のサーバー(BOT Server)に通知する。企業サーバー側では、署名が正しいものであることを確認した上で、企業のオーダーシステムに注文を配信し、実際にピザを配達するという流れになる。
LINEビジネスコネクトを利用する際に、企業側に設置するBOT Server側ではどの程度のプログラミングが必要になり、どの程度の通信負荷が掛かるのだろうか。
ユーザーのメッセージをそのまま返すエコーサーバーの場合、BOT Server側で記述するコードは、電子署名の確認も含めて数十行程度で済むが、受け取ったメッセージをキューに入れるなどして各メッセージに対する返信やその他の処理を後回しにして結果だけを迅速に返す、などの工夫が必要になる。
開発者のための「LINE Developers」サイトも用意
この他LINEプラットフォームでは、ゲームアプリやファミリーアプリの開発者、LINEビジネスコネクトの利用者のために、チャネルアプリの登録方法や開発方法、APIリファレンスなどを紹介する「LINE Developers」サイトを用意している。
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