面接という「商談」を成功させるためには:経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(3)(1/2 ページ)
面接は最初の5分で成否が決まる? ――12回の転職を経験した山崎さんが指南する、転職必勝法とは?
面接の成否は最初の5分で決まる
読者は、面接というものを、何回受けたことがあるだろうか。就職や転職での面接もあれば、プロジェクトの商談が面接のような場になることもある。こうした事情は、文系もエンジニアも大同小異だろう。ビジネスパーソンは、面接と無縁ではいられない。
筆者も面接とは縁の深い職業人生だった。これまでに12回も転職したので、面接を受けた回数は平均的なビジネスパーソンよりも多いだろうし、面接をする側に回ったことも数多くある。面接によってキャリアやビジネスが動くなら、むしろ、面接というものは商談だと言ってしまっていい。もちろん情報収集活動としてはあまり精度の高い手段ではなく、人材を正しく評価し損なうケースも少なくない。しかし、「納得のためには面接が必要だ」と思うのが、一般的な人情なのである。
面接は冒頭の5分間が特に大切だ。一般に、面接が短時間でも、長時間でも、採用される人物はほとんど同じだといわれている。長時間の面接は時間の無駄なのかと問われたなら、「そうだ」というのがほぼ正解だ。
面接をする側の典型的な心の動きは、仮に30分面接するとした場合、最初の5分で候補者に対する「仮説」を作り、残りの25分は、この仮説を確認する時間だ。最初の5分で「この人物はいいかもしれない」という仮説を持ってもらえない場合、後の25分の努力が報われる可能性はゼロではないが、かなり小さい。
面接官にとって、面接は「試着」
面接では、最初の5分に向けて集中力を高める必要がある。時間に余裕を持って臨むことが大事だし、「相手に好印象を持たれる自分」をイメージして、自己暗示をかけてから面接室のドアを開けよう。
面接は、される側から見ると自分(の労働力)を売るための「商談」に近いが、面接官側の心の動きを例えると、洋服を買う時の「試着」に近い。カタログで商品の概要を評価し、店舗で商品の外観を見ていいと思い、自分にフィットするか、着た「感じ」がいいかを、実際に着てみて評価する。面接は、面接する側が、候補者を「自分(たち)の仲間にふさわしい」と思うかどうかを確かめる儀式なのだ。
ここで、人間同士の「フィット感」を持ってもらうために有効なのは、相手に対する「敬意を伴った興味」が伝わることだ。そのためには、相手の話を正確に聞き、そのことが相手に伝わらねばならない。
よくありがちなミスは、質問で聞いている内容と答えが正確に対応しないことだ。「その方面では、最近の技術的なトレンドはどうなっていますか?」という一般的な話題に対して、「私が興味を持っているのは……」と自分の興味について話を返してしまうような受け答えは、答えている側では調子よく話せているつもりでも、相手の側に違和感が残ることが多い。
面接ではなく普通の会話でもそうだが、相手の話を「熱意を持って誠実に聞いています」というメッセージが伝わることが重要だ。
そのためには、事前に相手について深く調べておくことが大切だ。筆者は、ある大学で授業を持っているが、就職活動に臨む学生たちに、志望企業のWebサイトの「IR(投資家向け広報)」ページにある、有価証券報告書や決算短信を読むことを勧めている。会社紹介や人材募集のページには、会社にとって都合のいいことしか出ていないことが多いのに対し、ビジネスを判断できるデータや会社の評価に直結する重要事項は株主向けの情報公開の中に必ず盛り込む必要があるからだ。
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