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プロダクティビティの革新に力を入れ開発者にチャンスを提供――MS新CEOナデラ氏マイクロソフトの新たな「2つのコア」とは

日本マイクロソフトが2014年10月2日に開催した開発者向けイベント「de:code Special Edition」に、マイクロソフトの新CEOサティア・ナデラ氏が登壇。今後のマイクロソフトのビジョンと日本の開発者に対するメッセージを語った。

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 日本マイクロソフトは2014年10月2日、東京都内で開発者向けイベント「de:code Special Edition」を開催した。日本の開発者に対して、同社の最新技術と今後の戦略を披露する同イベントには、米マイクロソフトのCEOであるサティア・ナデラ氏が参加した。

 ナデラ氏が登場したのは「マイクロソフト本社のエグゼクティブが語るエンジニアの未来」と題したオープニングセッション。日本マイクロソフト執行役 開発者エクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部長である伊藤かつら氏からの質問に答える形で、ナデラ氏は今後のマイクロソフトのビジョンを語った。


日本マイクロソフト 執行役 開発者エクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏(左)と米マイクロソフト CEO サティア・ナデラ氏(右)

マイクロソフトの新たな「2つのコア」

 ナデラ氏は冒頭、聴衆に対して「マイクロソフトの新たなコア」は、「プロダクティビティソリューション」と「プラットフォーム」の2つであると述べた。

 「プロダクティビティソリューション」は、「Microsoft Office(以降、Office)」をはじめとする、生産性向上アプリケーションを中心としたソリューションを指す。ナデラ氏は「現在のOfficeの成功に満足するのではなく、新たな発明やシナリオ、アプリケーションを通じて、モバイルファースト、クラウドファーストの世界でプロダクティビティを推進していく」とした。


Office Lensを使っているところ(「OneNote for iPad update: iOS 7 and Office Lens」より引用)

 こうした方向性を端的に表している革新的なプロダクトの例として、ナデラ氏はiPad向けのノートアプリ「OneNote」と連携して使えるカメラアプリ「Office Lens」や、Excel向けのBIツール「Power BI」などを挙げ、「研究開発を通じて、われわれは今後もプロダクティビティの革新に力を入れていく」と述べた。

 「プラットフォーム」は、OSとしての「Windows」を中核として構築される、多様なデバイスやクラウドにまたがったエコシステムのことを指す。ナデラ氏は、このエコシステムに関わるユーザー、企業のIT部門、そして開発者といったさまざまなステークホルダーの利害を調整し、調和させることで「Windowsの価値が提供できる」とした。

 「もちろん、これまでは調整のバランスが良くないこともあった。そうした状況を改善するために、われわれはユーザーから学びたいと考え、それに取り組んできた。Windows 10では、この取り組みをさらに進捗させる。幅広いデバイスに対応できるプラットフォームとして、開発者にアプリケーションを構築してもらえる機会を広げていきたい」(ナデラ氏)

 併せて、Microsoft Azure上でのLinuxサポートなどについて触れながら、マイクロソフトのアセットだからといって「全てがWindowsというわけではない」と強調。「開発者にとって魅力的なプラットフォームを構築し、既存のコードやインフラをそこに持ち寄ってもらうことが重要。開発者の皆さんが最大限の想像力を発揮できる形で、われわれのプロダクトを使ってほしい」とした。

 また、特にIoTの分野については、利益を生み出すのはハードウェアではなく、生みだされるデータをベースとしたサービスであるとを強調。マイクロソフトは、Windowsをベースとしたエンドポイントと、データが蓄積されるクラウドの双方を持っている点が強みだとした。特にAzure上で展開できる高度なデータ分析機能、処理機能をうまく活用することにより、IoT分野で新たなサービスを構築できるとした。


マイクロソフトのコア

開発者にとっての「マイクロソフトの価値」

 「特に開発者にとってのマイクロソフトプラットフォームの価値は何か」という伊藤氏の問いに対し、ナデラ氏は「より多くの顧客へのリーチ」と「ユニバーサルなプラットフォームであること」の2点を挙げた。

 同社のフレームワーク上で開発を行うことによって、デスクトップとクラウドをシームレスに連携させたシステムやサービスを展開できる点を強調すると共に、開発作業についても「Visual Studio」やそのオンライン版である「Visual Studio Online」を通じて生産性を高められるとした。また、日本において「Azure Media Services」をはじめとする同社技術を活用している企業として楽天を挙げ、「日本において確立されたブランドを持つ企業がマイクロソフトの技術を活用していることを心強く思う」と述べた。

 さらに、Webや新たなデバイスなど、プラットフォームが多様化している現在の状況において「Windows以外のプラットフォームでしか開発経験のない多くの開発者にとっても、マイクロソフトの技術が重要な理由」として、ナデラ氏は「Microsoft Azure(以降、Azure)上で提供される、バックエンド構築に役立つ豊富な機能と高いサービスレベル」と、フロントエンドで幅広いデバイスとユーザーにリーチできる「Universal Windows Application」を挙げる。

 「タブレットデバイスの普及が進み、市場ではWindows以外にも、iOSやAndroidといったプラットフォームが広く使われている。ただし、フロントエンドがどのようなものであっても、重要なのは信頼できるバックエンドをパブリッククラウド上に持つこと。マイクロソフトのクラウドでは、より高いレベルのサービスを提供する。同時に、Linuxをはじめとするオープンソースソフトウェアや、Unityのような既存の環境がわれわれのプラットフォーム上でサポートしていくことも重要なテーマだと考えている」(ナデラ氏)

 また、ナデラ氏は来日前に発表したばかりの「Windows 10」についても言及。そのコンセプトとして「管理性の高さ」に加えて「ユーザー体験の一貫性」を挙げた。

 Windows 10では、タブレットやスマートフォンのようなモバイルデバイス、一般的なPC、テレビといったさまざまなデバイス間でのユーザー体験に加えて、個人や企業といったユースケース間でのユーザー体験においても、Windowsとしての「一貫性」を確保しようとしているという。

 ナデラ氏は、開発者にとってのWindows 10は、あらゆるデバイスで動作するアプリケーションを開発する「ユニバーサルアプリケーションプラットフォーム」であることが重要だと強調。Visual Studioがそうしたアプリを高い生産性で開発するための環境となっていく、とした。

 すでに、マイクロソフト自身も新たなOfficeをユニバーサルアプリとして開発しつつある点に触れつつ「Windows 10は大きなチャンスとなる。すでにプレビューを開始しているので、すぐに評価と開発を始めてほしい」とアピールした。

 また、日本での最新版のリリースが待たれているスマートフォン向けプラットフォーム「Windows Phone」については、「市場に完全なポートフォリオを整備するために検討を続けており、OEMメーカーからのサポートも期待している。ぜひ多くのフィードバックを寄せてほしい」とした。

「マイクロソフトは開発者にチャンスを提供する」

 最後にナデラ氏は、日本の開発者に対するメッセージを述べた。

 学生やスタートアップといった立場で開発を行っている人にとっては、現在マイクロソフトが提供している「Azure」のようなクラウドサービスや「Windowsストア」といった仕組みが「どんな立場の開発者であっても、作ったアプリケーションをグローバルに展開することを可能にしている」とする。また、そうした人々をサポートするための「BizSpark」「DreamSpark」「Microsoft Solution Accelerators 」といった豊富なプログラムを同社が用意している点に触れ、「開発者にとって、今は絶好のチャンス。マイクロソフトもそれを全面的にサポートする体制を用意しているので、ぜひ活用してほしい」と訴えた。

 また、エンタープライズの開発者に対しても、近年のクラウドファースト、モバイルファーストの潮流の中で、そうしたモダンな開発に対応できる技術や製品のポートフォリオを備えている点を強調。同時に、「サービスレベルやデータセキュリティについて厳しい要件が求められるエンタープライズ分野であればこそ、マイクロソフトの技術が役に立てるはずだ」とした。

 「今日は、日本の開発者の皆さんとお話しできることを大変楽しみにしてきた。マイクロソフトは、これまでの歴史の中でも、日本の顧客、開発者の皆さんから多くのフィードバックを受け、それを基に成功を収めてきた。そして、これからもモバイルファースト、クラウドファースト、IoTといったさまざまな新しいニーズが生まれる中で、日本の開発者の皆さんの高い要求を満たしつつ、チャンスを提供していきたいと考えている。皆さんからのフィードバックを楽しみにしている」(ナデラ氏)

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