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スタートレックのカーク船長は、良いリーダーか?ジョブズ流vs.サントリー流、理想のマネジメントはどっち? (IT経営者対談 後編)(1/2 ページ)

マイクロマネジメントと「好きにしなはれ」マネジメント。どちらが良いのか悪いのか、SDEの福田さんとクレイジーワークスの村上総裁が話し合った。

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 かたやエンターテインメント界で活躍するリア充経営者、かたや人付き合いが苦手なプログラマー兼経営者。接点がないように見えた二人だったが、共に天変地異の被害者や貧しい地域への支援活動を続けているという共通項があることが分かり、対談してみたら、意外や意外とても気が合ってしまった(前編「氷水をかぶるより先にできることって何だろう」はこちら)。

 今回は関西出身のお二人から見た「トウキョウのビジネス」について、そして実在の経営者やスタートレックのカーク船長を例にとってマネジメント論を語り合った。

福田 淳

ソニー・デジタルエンタテインメント代表取締役社長。スカパー! の衛星放送「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに携わる一方で、さまざまなチャリティ企画に携わってきた。東日本大震災発生時には、クリエイター100人の協力を得て携帯コンテンツへの課金を現地に寄付する「SAVE MIND, 100 CREATION」を実施した他、モザンビークでの医療活動に携わる「元ギャル」を、携帯小説の売り上げなどを通じて支援している。アイスバケツチャレンジにも参加。

村上 福之(総裁)

クレイジーワークス、代表取締役 総裁。アイティメディアの「オルタナティブ ブログ」上で、東日本大震災やタイの洪水など、大規模な天災が発生するたびにネット上で寄付を募り、集まった義援金を手渡しで届けてきた。8月に発生した広島/福知山の土砂災害に対しても「氷水かぶるより水かぶってる人を助けようと思います」とブログ上で寄付を呼び掛け。9月20日に広島に届け、現地でのボランティアに参加したという。

基準が明確な「関西」、「分からない」に価値がある「トウキョウ」

福田 そういえば村上さんは関西人ですよね。僕、関西人は無条件に好き(笑)。関西人がいいなって思うのは、正しいか正しくないかは分からないけれど、評価の基軸がはっきりしているから。

総裁 せやね。基準が「好きか、嫌いか」「おもろいか、おもろないか」それくらいしかないから。

編注:前編に続き、関西弁多めでお届けします。

福田 分かりやすいですよね。その点トウキョウの人って、何か営業しに行ったら「すごいですねー、この技術。スタッフもすばらしいし、最高ですね、プレゼンテーション」って言われてその気になって、次の日に「こんな見積もりでどうでしょう」とか何とか持っていくと、「あ、関心ございません」って返される。「ええ、昨日のあの熱意は何だったの?」「あ、それ、『しゃこじ』(社交辞令)、それくらい分かれよ」となるんですよ。関西に行ったら、プレゼンしてるそばから、ダメなときはダメじゃないですか。「しょうもない、おもろない」とか言われて。

 ちなみに、北京も同じなんですよ。ある社長に「会いたい」って言われたので話に行ったら、始まってたった15分で「金にならないな、バイバイ」って言われました。最初は失礼なやつだなと怒ったんですが、後から考えてみれば、あんなに合理的な奴はいないぞって。ミーティングだから1時間しなきゃいけないっていうのは間違ってるぞ、合わなかったら15分でサラバって、何てすがすがしいんだと。そういう意味で「福田さんって北京が合ってますね」なんて言われたり(笑)。

総裁 あ、関西人って、アジアに行くと意外と合うかな。あと、トウキョウの人はポジティブシンキングが多いじゃないですか。訳の分からないセミナーに行って、「7つの習慣」とか読んで、「私はできる!」とか何とか……で、行き着くところは、駅前とかで名刺交換とかしちゃったりして。

福田 大人になっても、それが抜けない人が多いかもしれませんね。僕ね、昔「パーティーに行ったらなるべく多くの名刺をばらまけ」って先輩に言われたんですが、でも果たしてそれに意味あるんかな、と。1人のキーマンを見つけることの方が難しいし、それが見つけられたら成果があると思ってる。

総裁 キーマンってだいたい1〜2%ですよね。パーティに100人いたら会うべき人って2人か3人くらい。


総裁「これからはマルチメディアですよ」(きりっ) 福田「えー、ほんまにー?」

福田 トウキョウで働くっていうこと自体がコスプレっぽいんですよ。ビジネスマンとしてスーツを着ているというコスプレ。土日の感覚で月〜金をやっている関西人とは違って、月曜日の朝になったら、日経新聞を読んで「これからはマルチメディアですよ」(きりっ)とか言ったりする(笑)。

総裁 トウキョウって、見たことも聞いたこともないものだから金を出すという感覚もありますよね。今だと「ビッグデータ」。みんなよく分かっていないけれど、たぶん分かってないからお金を出す。

福田 広告で言うと、今は「インバウンド」ですね。「キュレーション」っていうのはもう恥ずかしくなってきたけれど、インバウンドはあと2カ月くらいは保つんじゃないかな。アイスバケツは2週間くらいだったけれど。

総裁 何か分からへんもんに平気で金を出すという……。

福田 そういう「変な懐の深さ」はありますよね。サンフランシスコのスタートアップも、ああいう感じじゃないですかね。でも関西人は根本的にPowerPointとか得意じゃないから、プレゼンの途中でメモ出して計算始めて、話も最後までさせてくれずに「で、なんぼ掛かんの、もうかんの?」って堅実な話になるじゃないですか。

総裁 関西のえらい会社の社長さんって、すごく大きいフォントで3行くらいに資料をまとめてないと読んでくれないですよね。

キュレーションとかバイラルとかソーシャルゲームとか

福田 僕の会社は、プラットフォームに投資しないでコンテンツをこつこつ作ることで、小さく低体温で10年生きてきたわけですよ。その点、最近のバイラルサイトってパクリも当り前ですぐに炎上しているわけですよね。だけど彼らの年齢を考えたら、生まれたときからネット社会。「コピペって普通だよね」って、罪の意識を持ってやってないことが分かった。でもその後の危機管理が悪かった。だからそういう会社には「大人」が必要だなと思います。今後、ああいうキュレーションとかバイラルメディアとかって、どうなるんだろうって思いますよね。

総裁 キュレーションメディアやバイラルメディアってそんなに長持ちするものでもないと思ってます。

福田 僕は昔カンヌで映画やテレビの買い付けをやっていたけれど、山師のような人がいっぱいいてね。値段もあってないようなもんでした。なんぼでもいいんですよ、1円でも1億円でも。

 ソーシャルゲームと似てるんですよ。「これがヒットしたからマネしようか」って言う人がいるじゃないですか。でも二番煎じって、そんなにもうからない。ソーシャルゲームってもうかる人ともうからない人の差が最大限離れているわけなので、これが成熟したマーケットとは思えないんですよ。

総裁 今、スマホでソーシャルゲームってしんどいですよ。開発費を掛けて、マーケティングやって、CM作って、それでももうかるかもうからないか分からないって、そんなんあるかー、って言いたくなりますわ。関西人だったら、その辺りは堅実にもうからないならやらない。

福田 僕にとって、どんな企業にも必要な人材はクリエイター。次に優れたマーケターが必要なんですが、マーケターや編集者の多くは大企業に勤めていることが多いので、クリエーターのことを軽視するわけですよ。「もうおまえの旬は終わったで」って。でもマーケターの旬の方が先に終わっているんですからね。

総裁 かっこいい言い方をすれば、コンテンツアグリケーター的な仕事ですかね。

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