デジタル戦略を担うリーダーの資質とCIO、情シス:「Google」があなたの産業を揺り動かす
調査会社ガートナーは2014年10月末に東京で開催した「Gartner Symposium/ITxpo 2014」で、「一般企業のデジタル化をけん引するのはCIOだ」と提言した。だが、これはあまり単純な話ではない。
調査会社ガートナーは2014年10月末に東京で開催した「Gartner Symposium/ITxpo 2014」で、「一般企業のデジタル化をけん引するのはCIOだ」と提言した。だが、これはあまり単純な話ではない。
ガートナーは数年前から、あらゆる産業が、遅かれ早かれデジタル化の洗礼を受けることになると訴えてきた。これは、例えば2013年に、「『クルマがクルマでなくなる日』、全産業デジタル化の衝撃」や「『Google Car』が勝つかどうかにかかわらず、自動車産業は変質する」でお伝えしたとおりだ。ポイントは、ほとんど全ての産業において、ビジネスの中核に関わるようなデジタル化が進むという言い方にある。
現在のところは、「ほとんど全ての産業」がデジタル化の影響を受けているとは到底言えない。しかし、例えば電子タバコの2013年における世界市場規模は約30億ドル(世界保健機関の報告書による)に達したという。テニスラケットやゴルフクラブにセンサーを埋め込んだ製品は、既に一般向けに販売されている。また、米ゼネラル・エレクトリック(GE)をはじめとした重機関連企業にとって、機器から吸い上げた情報の活用は現実的なテーマとなっている。農業へのIT活用の取り組みもますます活発化している。ヤフーやディーエヌエーは遺伝子解析サービスを開始した。そして、米グーグルはいうまでもなく、自律運転車をはじめとして、さまざまな業界あるいは社会問題をデジタル技術で解決する取り組みを進めている。
これらを踏まえれば、ガートナーの「全産業デジタル化宣言」が的外れだと言い切れる人はいないはずだ。
CIOは本当にデジタル化のリーダーになれる?
では、「一般企業のデジタル化をけん引するのはCIOだ」という言い方はどうなのか。これについては、ガートナーのアナリストの中でも、ニュアンスが異なるようだ。
「一般企業のCIOが、自社事業のデジタル化の可能性について目をつぶったままでいれば、そのうち自社の動きに取り残されてしまう」という認識については、どのアナリストもほぼ一致している。「デジタル化=IT化」ではない。だが、デジタル化は、例えばモノをつくり、それを売ることを中核事業としてきた企業にとって、サービスを生み出す重要な契機となる。そうしたサービスは、必ずITをベースとしたものになるだろう。
自社がITをベースとしたサービスを拡大し、将来はこれが自社の重要な収益源になる可能性があるとしたら、CIOはこれを無視したままで、従来通りの仕事をし、「自社におけるITの責任者だ」と言い張り続けられるのか。ITの責任者でないならば、CIOとは、そして情報システム部門とは何なのか、ということになる。
つまり、「一般企業のデジタル化をけん引するのはCIOだ」という言い方は、「従来の延長線上で仕事をしていくだけでは、CIOおよび情報システム部門は一般企業にとってどんどん価値を持たない存在になっていってしまう」ということを意味している。
ガートナーは、CIOならば自動的に自社デジタル化のリーダーになれると言っているわけではない。どちらかといえばその逆だ。現在のCIOの多くは、デジタル化リーダーに求められる資質を有しておらず、よほどの努力をしないかぎり、その将来はますます不透明になっていくといおうとしている。
IT INSIDER No.35「企業のデジタル戦略を担うリーダーの資質とは」では、ガートナーのアナリスト、マーク・ラスキーノ氏に、企業のデジタル化の本質、デジタル戦略を担うリーダーの資質、そしてCIOはどう位置付けられるのかについて聞きました。お読みいただければ幸いです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.