「ゲームギフト」とリワード広告アプリの違いは?:ものになるモノ、ならないモノ(60)(1/2 ページ)
スマホゲームのエコシステムをご存じだろうか。リワード広告アプリのようなギリギリの仕組みとはちょっと異なる、「三方一両得」を実現しているメディアを取材してみた。
ノーマークだった。普段ゲームに親しまない筆者は、スマートフォン(スマホ)ゲーム市場の昨今のにぎわいに驚きを隠せない。一言でいうと“バブル”だ。言われてみれば、テレビのCMで、なじみのないゲーム会社の名前を目にすることが多くなった。
モバイルゲームのテレビCMというと、ガラケー時代のソーシャルゲームで一世を風靡(ふうび)したグリーやモバゲーのCMが、スマホ時代ではパズル&ドラゴンズやモンスターストライクといったゲームの名前が思い浮かぶ。だが、スマホゲーム市場が拡大していることで、新興のゲーム会社にも潤沢にお金が回っているのだろう、新顔がテレビCMに登場している。
ここに、ある関係先から入手した興味深い資料がある。Google Playの総合売上順位と月間想定売上の関係を示した表だ。驚いたことに、50位以内にランクインすれば月商1億円以上だという。1位に至っては月商50億円である。これはGoogle Playだけの数字なので、iOS版もリリースしていれば、その分も上乗せされる。
Google Play総合セールス順位 | 月間想定売上(円) |
---|---|
1位 | 50億 |
2位 | 40億 |
3位 | 13億 |
5位 | 7億 |
10位 | 5億 |
15位 | 3.5億 |
20位 | 2.5億 |
25位 | 2億 |
30位 | 1.6億 |
40位 | 1.2億 |
50位 | 1億 |
75位 | 7000万 |
100位 | 3000万 |
150位 | 1500万 |
200位 | 1000万 |
Google Playの50位以内にランクインすれば月商1億円以上。1位は50億円だ。ランキング上位常連の「モンスターストライク」でミクシィが復活した理由が分かる。 |
毎日1000万円の収益――スマホゲームにまつわる驚きの数字たち
この数字の裏付けを得ようと、ある大手ゲーム制作会社の役員に話を聞いた。社名やタイトル名を伏せることを条件に、アドオン課金の状況が集計された画面を示しながら「ランキング10位付近のゲームタイトルで、ARPU(1ユーザーあたりの収入)が1日約20円で、50万ユーザーが利用するイメージ」だと教えてくれた。
1日1000万円の収益だ。月商約3億円。しかも、これで終わらない。定期的にアプリ内でキャンペーンやイベントを実施する。イベントというのは、通常のゲーム動線とは別に特別なプレー場面を提供する仕組みのことだ。事前告知を行い、お昼休みなど、ユーザーがスマホを手に取りやすい時間帯にぶつけて開催する。
そして、イベント内でしか手に入れることができないキャラクターを有料配信するなどしてユーザーの購買意欲をかき立て、アドオン課金につなげる。イベント時間中は「ARPUが100円〜140円に跳ね上がる」(大手ゲーム会社の役員)ので、このようなイベントを月に5〜6回実施すれば、「月商は5〜7億程度」(同)になるという。先ほどのランキングと月商を対比した表とピタリと一致する。
ひとたび人気タイトルの仲間入りをすれば、セールスランキングの上位に張り付いたままであることが多いので、高いライフタイムバリュー(LTV)を実現し、大きな収益を見込める。そうなると制作や開発に投下する金額も増加傾向になる。前出のゲーム会社役員は「約2億円の予算で40〜50人体制」のタイトルもあると明かす。
また、後述する「ゲームギフト」という広告媒体アプリを提供しているAppBroadCast代表取締役の小原聖誉氏は、「約5億円の予算で100人の開発体制で勝負をかけるタイトルも登場している」と教えてくれた。こうなるとソニーのプレイステーションなど、少し前の家庭用ゲーム機と同じ規模だ。
Webベースで開発していたガラケー時代のゲームと、ネイティブアプリで提供するスマホゲームでは、開発体制やプログラマーのスキルセットが大きく変化しているので、一概に比較することはできないだろう。ただ、ガラケー時代のソーシャルゲームの開発費は「勃興期で2000万円程度、最盛期でも7〜8000万円程度」(ゲーム会社役員)だったので、スマホゲームにおける開発費の高騰ぶりがうかがい知れる。
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