スマートデバイスからのログ、病院DB、医療機器から得る画像――医療現場のビッグデータ活用を実践する3社の事例:ヘルスケアだけで終わらせない医療IT(3)(1/3 ページ)
医療、ヘルスケアに関連したテクノロジビジネスやスタートアップの動向を、エンジニアやビジネスマンに対して紹介するイベント「Digital Health Meetup Vol.2」のピッチセッションから3社の医療ベンチャーが開発したサービスやアプリの事例をお伝えする。
編集部より
IoTやウェアラブル機器の普及で広まりつつあるヘルスケアIT。しかし、そこで集まる生態データは電子カルテや医療で生かされていないのが、現状だ。@IT特集「ヘルスケアだけで終わらせない医療IT」ではヘルスケア/医療ITベンダーへのインタビューやイベントリポートなどから、個人のヘルスケアだけにとどまらない、医療に貢献できるヘルスケアITの形を探る。
今回は、医療、ヘルスケアに関連したテクノロジビジネスやスタートアップの動向を、エンジニアやビジネスマンに対して紹介するイベント「Digital Health Meetup Vol.2」のピッチセッションから3社の事例をお届けする。
前々回紹介した「医療政策の動向から読み解く、これからの医療・介護業界」、前回紹介した「医療革命! 医師のIT活用とその未来について」に続いてのセッションは、スタートアップが自らを売り込むライトニングトークのような形式の講演であるピッチセッションだ。
「Digital Health Meetup Vol.2」では、医療、ヘルスケア関連のテクノロジサービスを提供する3社の企業が、自社のサービス内容を、それぞれ10分で参加者にアピールする場が設けられた。本稿では、その内容について順に紹介する。
スマートデバイスをセンサーとして患者のログを治療に生かす
1人目の登壇者は、HealintのCEO兼共同創設者であるFrancois Cadiou氏だ。シンガポールに拠点を置くHealintでは、ビッグデータ分析に基づく「片頭痛」改善アプリ「Migraine Buddy」の提供とサービスをグローバルで展開している。日本では「頭痛ろぐ」という名称で、iOSとAndroid向けにアプリがリリースされている。
突然頭が激しく痛む片頭痛を持病としている人は多くいるが、その原因は全ての患者に共通しているわけではない。脳や血管に異常があるために頭痛が起こるケースもあるが、むしろそうした外科的な要因で起こる片頭痛は“まれ”で、多くの場合、睡眠不足のような生活習慣だったり、食べた食事や、天候などが引き金となったりする人もいる。そのため、片頭痛の患者は医師から、頭痛が起きた日時や状況を継続的に記録する「頭痛日記」の作成を勧められることが多い。それに記された情報から、頭痛の原因を探り出せる可能性があるためだ。
「頭痛ろぐ」は、スマートデバイスを使ってこの記録を行い、患者に片頭痛が起きた状況に関するデータを世界規模のビッグデータとして蓄積する。それを分析することで、患者個人が抱える片頭痛の原因を特定しやすくするとともに、新薬の開発などにも生かせるのではないかという。
Cadiou氏は以前、製薬会社に勤務していたが、直接患者にアプローチできない点で壁を感じたという。「センサーなどを通じて、患者の身体に起こっている状況をデータとして取得するというアプローチによって、その状況を変えられる」と思ったことが、Healint設立のきっかけになったという。
「頭痛ろぐ」の「センサー」に当たるのは、スマートデバイスだが、これは患者が常に持ち歩くもので、世界中のどこにいてもネットワークを通じて情報を収集できるというメリットがある。「頭痛ろぐ」は、神経内科医と共同で開発を行った。その有効性が片頭痛患者の口コミで広がれば、収集できるデータはさらに増え、そこから意味のある新たな知見を探り出せる可能性は増す。
Healintが展開する、病気情報の蓄積と分析のプラットフォームは、片頭痛以外の病気や体調不良に関しても応用が可能なものだ。Cadiou氏は、同社が提供するサービスを通じて「病気治療に対する考え方、医療の在り方そのものを考え直す」ことを推進したいとする。同社では、データ分析に知見を持つデータサイエンティストとプログラムを世界規模で募るとともに、こうしたアプローチに関心を持つ日本の研究者や病院の協力を求めているという。
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