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OpenStackを使うと、結局何を効率化できるのか?特集:OpenStack超入門(7)(1/2 ページ)

インフラ整備のスピード・柔軟性、運用効率を飛躍的に高められるOpenStack。では具体的に、日々の構築・運用作業はどう変わるのだろうか? 日本OpenStackユーザ会 会長の中島倫明氏が分かりやすく解説する。

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 本特集では、これまでにさまざまな観点からOpenStackの持つ機能や考え方、メリット、事例について紹介してきました。ここでいったん、これまでの情報を統合して、「OpenStackを使うと実際に何が変わるのか?」という点について現場のエンジニア視点でまとめてみたいと思います。

 OpenStackを導入して、「これまでにないスピードと柔軟性でビジネスを支える」「抽象化によって効率を図る」というのは、実際にインフラを支える現場の人間にとって、どのような変化をもたらすのかを、従来の環境との対比で見ていきましょう。

Webサーバーの増設、物理、仮想、OpenStack環境ではどう変わる?

 突然ですが、あなたは企業のインフラ担当で、アプリ開発チームから以下の要望を受けたとします。

やあ、中島さん。今稼働中の社外向けサイトのWebサーバーを増設したいから、前のサーバーと同じ設定で3台ばかりサーバーを用意しておいてくれないかな?

 ここでは、より話を具体的にするため「Webサーバーの増設」という題材を取り上げます。この会社ではサーバーやストレージ、ネットワークといったインフラ環境はインフラ担当者が準備を行い、その後アプリチームに引き渡しを行います。

 この作業を行う場合に、仮想化以前(物理サーバー環境)、サーバー仮想化環境、そしてOpenStack(クラウド)環境という3つの環境では、それぞれにどのような作業が必要でしょうか? この環境間での作業の差を見ていくことで、OpenStackが何を効率化するのか、そしてその効率化は何によってもたらされるのか、という点を理解することができると思います。

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図1 以上のような「Webサーバーの増設」を行いたいとき、仮想化以前(物理サーバー環境)、サーバー仮想化環境、そしてOpenStack(クラウド)環境では、作業にどのような違いが出てくるのだろうか?

物理環境時代の構築作業

 もし自社の環境が物理サーバーのみで構成されているとしたら、今回のWebサーバーの増設にはどのような作業が必要になるのでしょうか?

 まずサーバーを購入する必要がありますので、要件からスペックを決めて発注を行います。この際に、設置するデータセンターのラックの空き状況や電源容量、ネットワークの要件から搭載先のラックも決めておく必要があります。そしてサーバーが到着したら、データセンターへの搬入を行い、ラックへ搭載し電源容量を考慮した上で電源へ接続しますが、この段階ではまだ電源を入れることはできません。電源を投入する前に、接続するネットワークに合わせて、ネットワークケーブルを結線して事前に割り当てるIPアドレスを決めておく必要があります。

 ここまでの作業が完了したらサーバーの電源をONにして、作業手順書に従いOSをインストールし、各種OS設定(IPアドレスなど)を行った後に、アプリ開発チームへとサーバーを引き渡します。単純にサーバーを準備すると言っても、多数の作業と決め事が必要となることが分かると思います。

サーバー仮想化時代の構築作業

 次に、自社が既にサーバー仮想化の基盤を導入している場合を見てみましょう。

 この場合はサーバーを発注する必要はありません。まず要件から仮想サーバーに割り当てるリソース(vCPU/メモリ/ディスクサイズなど)を決めます。次に仮想化基盤のハイパーバイザーホストのリソース使用状況を確認し、仮想マシンを配置するホストを決めます。そして接続するネットワークで利用するIPアドレスを割り当てて、仮想マシンを作成します。このとき、テンプレートOSなどが準備されていればクローンすることでインストール作業は簡略化できます。最後に起動したOSにネットワークの設定などを行い、アプリチームへの引き渡しを行います。

 復習のために物理環境とサーバー仮想化の環境では、どのような変化が発生しているのか見てみましょう。

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図2 物理環境とサーバー仮想化環境における作業の違い

 図2を見ると、サーバーのスペック選定や、搭載先のラックの調整、ケーブルの結線といった作業がサーバー仮想化ではなくなっています。これらの作業は実際に物を動かしたり、つなげたりする「物理的」な作業だと言えます。つまりわれわれはサーバー仮想化を導入することで、物理的な作業量を大きく減らすことができます。

 また作業ではありませんが、OSインストールなどの作業を簡略化できたり、ここでは記載されていませんが、稼働率の低いサーバーを仮想化し、1台の物理サーバー上に集約することで物理的な台数を削減することもできます。一言でまとめるなら、われわれはサーバー仮想化を導入することで、「物理」に関連する作業を効率化してきたと言えます。

 ここまでの内容は、今日において広く浸透したサーバー仮想化のメリットをなぞったものですが、少し視点を変えてみましょう。

 図2を見てみると、サーバー仮想化を導入したことによって増えている作業があることに注目してください。それはどのくらいのリソースを仮想サーバーに割り当てるかを決定し、その仮想サーバーをどのハイパーバイザーホストに配置するかを決める作業です。この作業は、現在ハイパーバイザーが消費しているリソースの量と配置する仮想サーバーのリソースという二つの情報から「人の判断」によって実施される作業になります。サーバー仮想化の世界では、物理的な作業が軽減されていますが、「新たに人が判断する必要のある作業が増えた」とも言うことができると思います。

 次にクラウド時代の構築作業の話に移りますが、この「人の判断」がクラウド以前、以後を分ける大きなポイントとなりますので、この点に注目して読み進めてみてください。

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