事例! 事例! 事例! 女社長がとった忍耐強い日本参入作戦:Go AbekawaのGo Global!〜MarkLogic編(前)(2/2 ページ)
注目のグローバルIT企業トップに話を伺うインタビューシリーズ。今回は、エンタープライズ NoSQLの先駆者として市場をリードするテクノロジ企業「MarkLogic」の日本支社長、三浦デニース氏に話を聞いた。
日本は「当たり前」への要求水準が高い
阿部川“Go”久広(Hisahiro Go Abekawa)
アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、キャスター・リポーター
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語トレーナー、コミュニケーションに関する執筆、講座、講演も行っている
阿部川 日本市場に参入して何年になりますか? マークロジックの日本市場での強みは何だとお考えですか?
三浦 日本にオフィスを開設したのは2011年の夏ですので、もう4年になりますね。日本はとても「当たり前」への要求水準が高い市場です。データを失うことは決して許されませんし、データの機密性、有用性などが大変高い水準で求められます。わが社の製品は、非構造化データや混合データに対応し、同時に、従来のシステムと共存して使用できます。つまり、既存のシステムやIT投資はそのままに次世代の技術を付加して利用できるのです。
ただ、データベースの移行は大変大きなリスクを伴いますし、組織は膨大なデータを持っていますから、全面的な移行には5年くらいかかります。私たちは顧客に「従来使っているシステムの利用は止めないでください」と申し上げています。従来の方式はそのままで、チームの業務もそのままで、単に次世代データ ベースのレイヤーをもう一つだけ追加して、Marklogic サーバーを使ってみるのです。
小さくスタートすればリスクは最小で、新たな機能から付加価値となる効果を納得していただけます。加えて、MarkLogicの特徴を生かすとビジネスの成長に合わせてシステムを拡張できますし、メンテナンスも従来のものに比べて簡単に行えます。「小さく始めて、結果を出して、満足していただく」、それが当社の考えです。わが社は我慢強いので、顧客が満足するまで売り急ぐようなことはしません。
阿部川 日本市場参入まで何年もかけたぐらいですから、我慢強さは証明済みですね。
三浦 おっしゃる通りです。(笑)
ユーザー事例! ユーザー事例! ユーザー事例!
阿部川 日本でビジネスを展開する上で難しいことは何ですか? 日本のエンジニア/企業が海外進出をする参考にさせてください。
三浦 もしわが社に世界中のユーザー事例がなかったら、ビジネスの話を始めることも難しかったでしょう。日本のパートナーや顧客には、ユーザー事例がとても大切です。同じような問題で悩んでいた組織が、どうやってその問題に対処したかを知りたがります。
幸いわが社には、米国やヨーロッパの企業や政府公共機関の基幹業務における説得力あるユーザー事例がたくさんありますので、それらをしっかりと日本のパートナーや潜在顧客に説明すること、つまり「顧客のどのような課題を解決したのか」「どうやってこの契約を成立させたのか」「製品のアーキテクチャはどのようなものだったか」「顧客はどのようにデータベースの構築を始めて、最終的にどのような成果が出たか」「開発にかかった期間は、どのくらいだったか」「どうして他社のデータベースではなくMarklogic サーバーを選んだか」などを、微に入り細に入り説明するのが、当初の私の仕事でした。
阿部川 海外進出に当たり、ターゲットとなる国の特徴を捉えて、自社が持つ資産(ここでは事例)を生かすということですね。三浦さんの説明で日本の顧客は納得してくれましたか?
三浦 2011〜2012年ころは、ビッグデータやNoSQLという言葉がまだ、日本に浸透しておらず、なかなか理解してもらえませんでした。製品の説明をしても、「これは単なるバッチプロセスのようだ」とか「単にデータを割り当てただけで、データベースとは言えないのではないか」といった認識の方もいらっしゃいました。また、「Hadoopがあるからいらない」とも。でもおかげさまで、現在は10社にお話しすれば9社までは理解いただけるようになりました。
今日では、小さく始めて徐々にスケールアップすればよいことや、ビッグデータを扱うには従来のリレーショナルデータベースは対応していないことも、皆さん理解されています。NoSQLデータベースの機能がしっかり理解されつつあります。
阿部川 いったん根回しが済んで、皆が内容に同意さえすれば、日本企業のスピードはかなり早いですよね。
三浦 弊社CEOのGary Bloom(最高経営責任者兼社長 ゲイリー・ブルーム)は、日本オラクル設立プロジェクトの担当メンバーの一人でした。ですから日本市場のことは大変よく知っています。CEOとして日本市場に対して高いポテンシャルを期待しているのはもちろんですが、忍耐強く日本市場の開拓に力を貸してくれることは、大変幸運なことです。
阿部川 忍耐強くない米国企業も見掛けますが……。
三浦 「忍耐強さ」は、日本でビジネスをする上でなくてはならない能力です。プロジェクトを一歩ずつ丁寧に進めていく期間は、時間をムダにしているわけではなく、その一歩一歩がより良い結論を出すためのプロセスだと理解しています。
阿部川 そのようにご理解いただいているのは、うれしいです。「忍耐強さ」は日本のエンジニアや企業が海外進出する際にも、やはり重要ですね。
インタビュー後編では、祖国を離れて働くということ、二人のお子さんの母親と社長業との両立など、三浦氏のキャリアに焦点を当ててお話を伺います。お楽しみに。
- 9時から17時までなんて日本人は働き過ぎ
- IoTならエジプトの諸問題を解決できる、そして学ぶなら日本がいい
- 日本で仕事すると、打ち合わせばかりしている気がする
- 私は「ナマケモノ」 レイジーになりたいので一生懸命勉強した
- ずっとプログラマーになりたかった
- 前例のないアジャイル事例を達成したらCOBOLプロジェクトを任された
- 人生は勉強だから、いろいろなことを学ばないと
- 父を思い医者を目指し、好きを求め車業界へ しかし国の経済発展を願いIT業界に飛び込んだ
- マネジメントも大切だけど、プログラミングを完全に手放すことはきっとない
- 学校帰りは「PCバンでオンラインゲーム」が、韓国の子どもの日常
- 分からない分、何でもできる。新しく勉強し始める時が一番自由だ
- 校長先生に「マジで行ってほしい」って言われて日本に留学した
- 若者が今、経験していることは私たちが経験したものとは違っている
- 「Apple II」に「Lisa」、そして「Macintosh」 私の青春はAppleとともにあった
- 「床で寝る」って日本の人に言ったら、びっくりされた
- 5歳くらいのとき、父と「これは何?」「CPUだよ」と遊んでいた
- 私には「日本の文化」がインストールされている
- 私はまだ18歳で、それまでの人生の全てはミャンマーに置いてきた
- 「ハードに」ではなく「スマートに」仕事をしていきたい
- 父のようなエンジニアなりたい そして少女は海を渡った
- エンジニアはきっと、皆、同じ夢を見ている
- 「話題にし続けてください。それが世界を変える」 ウクライナのエンジニアは今も戦っている
- 入試の点数は今でも覚えている だって人生で一番大事なことでしょう?
- 日本の女性が「あたし」って言うの、かわいいですよね
- ネパールの最高学府卒エンジニアは、給料の半分以上をふるさとに送金している
- 日本語は「西野カナ」が教えてくれた
- 「ジェイ、どう?」 オフィスの視察かと思ったら面接だった
- 末は「神父」か「エアクラフトエンジニア」か
- 日本人は「なぜこのコードを書いているのか」をおろそかにしがち
- 「最悪のシナリオ」と「最高のシナリオ」に大きな違いがないならリスクがある方を選ぶ
- バグがあっても心配いらない、それは単なるコードです
- 次元削減、局所性鋭敏型ハッシュ――コンピュータサイエンスは美しい
- 七転び八起き エンジニアだから何度でも立ち上がれる
- ラッピングの切れ端から、サンタクロースの正体を知った
- 技術かマネジメントか どちらかではなくどちらも大切
- 兄が私を技術の世界に連れて行ってくれた
- 「左様でございます」 チャレンジだけが成長の種になる
- 「人を幸せにしたい」から、人事を目指し、エンジニアになった
- プロジェクトが終わり、システムが動いている。こんなにうれしいことはない
- 数学が苦手だった、だからITの道に進んだ
- 日本の社会保障は神
- 医者にもなれる成績だったけどプログラマーを目指した。それが海外に出る近道だったから
- 日本のエンジニアは信じられないくらい細部にこだわる だがそれがいい
- セキュリティスキルはポッドキャストで身に付けた
- 学び、感謝し、挑戦する リリィ・ティオングの世界
- 「PCの切り抜き帖」と「3つの願い」、私は13歳だった
- 英語が難しい? エンジニアはもっと難しい言語を知っているじゃないか
- ロックやパンクが好きな人は、強い言葉をよく使う?
- 時間を厳守すること、誠実であること、清潔に仕事をすること、高い品質を維持すること 私を魅了した日本の価値観
- 小学校からバイリンガル ヒンディー語とマラーティー語の
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