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個性的ならOK?――著作権法で守られるソフトウエアの条件「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(18)(1/2 ページ)

東京高等裁判所 IT専門委員として数々のIT訴訟に携わってきた細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回から数回にわたって、ソフトウエアの著作権について解説する。

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「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説

連載目次

 IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。前回は不幸にも情報漏えい事件が起きてしまったら、漏えいに関与するシステムの開発や保守を担当しているITベンダーにはどのような責任が生じるのかを、裁判例を基に解説した。

 今回から複数回にわたりソフトウエアの著作権について解説する。他者に不本意な「マネ」をされないように、そして、知らず知らずのうちに他者の権利を侵害しないように、参考にしてもらいたい。

 IT紛争における重要テーマでありながら、今まで、この連載で扱ってこなかった問題がある。著作権だ。コンピューターのプログラムや設計書の著作権が誰に帰属するのかを争った裁判の数は多く、この連載でもいつかは取り上げなければならないと考えていた問題だが、今回ようやく時宜を得た。

 IT開発に携わる者であれば、当然に知っておかなければならない問題でもあるので、今回以降取り上げる判例などを参考に、考えていただきたい。

著作権に関する原則が見える判例

 前述した通り、ソフトウエアの著作権についての紛争は少なくない。こうした紛争についての裁判所の判断は、その状況や条件によって種々さまざまだが、今回は、著作権を考える上で前提となる「著作権で保護される著作物とは、どのようなものであるか」をテーマに、その考えがストレートに表れた判例を見てみたい。

 紛争の内容は、あるソフトウエア開発業者の作成した画面が、別の会社の作成した画面と似ているとして争いになったものだ。ある意味、非常にシンプルなものだが、裁判所がソフトウエアの著作権を著作権法に照らして、どのように考えているのかが表れている。

 判例の概要は以下の通りだ。

【事件の概要】東京地裁 平成16年6月30日判決より抜粋して要約

 あるソフトウエア開発会社(以下 被告)がMicrosoft Excel(マイクロソフトエクセル 以下、Excel) を利用してサーバー上のデータベースを操作したり、必要に応じてデータをExcelのひな型に貼り付けたりするソフトウエアを開発したが、このソフトの画面が別のソフトウエア開発会社(以下 原告)の作成した同等機能を持つソフトウエアの画面に酷似しているとして、原告から訴えられた。

※( )内は筆者の加筆

 ここから先は、判決文を引用すると、やや表現しにくいため、本文と図で説明する。まずは、原告と被告のおのおのが作成したソフトウエアの画面イメージを見ていただきたい。

原告が作成した画面
被告が作成した画面
※実際の画面をここに掲載したいのだが、そのまま載せるとそれこそ著作権の問題になりかねない。詳細な図の内容はあまり論旨には関係ないので、概略だけ見てほしい

 この裁判で原告が主張した類似点は以下の点である。

  1. 画面の上段右側に帳票などのリポート名およびデータベースのテーブル名がツリー状に表示される(データベースツリー表示部)
  2. 上段左側にデータベースのデータをExcelのひな型に書き出すためのボタン、Excelのひな型をデータベースに読み込むためのボタンなどが表示される(図中のボタン)
  3. データが表形式で表示され(クエリ設定部)、データの項目に対応するように各項目の属性が表示される(データ定義部) 他
※各部分の名称は、説明の都合上、筆者が付けたもの。

 原告は、画面の配置と部品がそっくりだと言っている。Excelを使ってデータベースを操作する機能自体がほぼ同じなので、画面も似通ってしまうのはある程度致し方ないが、記述されている文言や配置がよく似ていることもあり、原告側が「無断でまねをされた」と感じるのも無理はないかと思う。

 さて、裁判所はどのように判断しただろうか。

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