失敗は恐れるものではない。学び、経験し、共有するものだ:Go AbekawaのGo Global!〜Maverick Shih編(4/4 ページ)
グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うシリーズ。今回は台湾を代表するIT企業Acerで、BYOC部門を統括するMaverick Shih氏に、IoTの可能性や、アジアの島国からグローバルに打って出るときに必要なマインドを伺った。
失敗を恐れるな
シー氏 日本のエンジニアにお伝えしたいことがもう一つあります。それは「失敗を恐れずに挑戦してほしい」ということです。
日本もそうだと思いますが、台湾には失敗することを極度に恐れる文化があります。しかし、失敗からは多くのことを学べるのです。
人は失敗から、なぜそうなったのか、どのようにすれば同じ失敗を回避できるか、などを学びます。多くの場合「なぜ成功できたのか」は分からないものですが、多くの失敗から得た経験を積んで知識や知恵を蓄積すれば、成功の確率は高まります。
阿部川 失敗こそ、学びの宝庫というわけですね。あなたはどうでしたか? 失敗しましたか?
シー氏 はい! 例えば最初に起業した組織は、複数の特許を取得しましたが、企業としてはそれほど成功しませんでした。起業は新しい体験でしたから、多くのことを学ぶ必要がありました。全てが授業であり、さまざまな失敗から学習しました。
失敗することで私は成長しましたし、失敗をシェアするようにもしています。シリコンバレーでは「失敗は決して悪いことではなく、むしろその失敗を共有することに価値がある」と考えます。それによって誰かの役に立てるし、一緒に成長できるのですから。
私のチームは、常にトライ&エラーをすることを推奨しています。致命的な間違いではない限り、失敗は新たなトライであり、悪いことではないと思います。また、失敗すれば失敗から学ぶことがあるので、次に同じような失敗をしなくなるものです。
私は社員たちに、失敗できる余裕を提供したいと思います。
阿部川 最後に、日本のエンジニアにひと言、メッセージをお願いします。
シー氏 夢があるのなら、その実現を目指してください。そして決して失敗を恐れないでください。挑戦を継続して繰り返していけば、成功は必ずやってきます。
阿部川 ありがとうございました
Go's thinking aloud インタビューを終えて
育ちの良さを素直に開花させてきた人だなというのが、シー氏と話し始めたときの印象だった。
1976年に両親を中心にたった11人で起業したマイクロプロセッサーの製造会社は、今や従業員1万人以上、売り上げ1兆円を超える世界的製造企業「エイサー」に成長した。創業者スタン・シー氏が2004年に引退した後もエイサーは、ゲートウェイ、パッカードベル、E-TEN(イーテン)などを積極的に買収して成長を続け、「台湾のビル・ゲイツ」と呼ばれたスタン・シー氏の威光が今も健在のように見える。
しかし、近年のインターネット企業の台頭に伴い、従来ハードウエアがけん引したIT市場は、ソフトウエアやサービスがその成長を担うようになった。グローバル競争の中でエイサーは、さらなる成長戦略に向けて大きく舵を切っている。
創業者のご子息であるマーベリック・シー氏は、元エンジニア。質問の一つ一つに、ゆっくりと言葉を選んで論理的に答えを組み立てる姿は技術者そのものだ。誠実な彼は、数々の起業やエイサーでの新規事業推進の経験から、さまざまな知恵を謙虚に学んできた。
失敗からも学び、その経験を皆で共有し、さらなる飛躍への糧とする。これこそが、偉大なる父が教えてくれた最大の帝王学なのかもしれない。数々の経験や学びから生み出された事業が、次世代のエイサーの礎になることは間違いない。
アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、キャスター・リポーター
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語トレーナー、コミュニケーションに関する執筆、講座、講演も行っている。
編集部より
「Go Global!」では、インタビューを受けてくださる方を募集しています。海外に本社を持つ法人のCEOやCTOなどマネジメントの方が来日される際は、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。
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