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「派遣切り」の悪夢再び?――改正労働者派遣法が派遣エンジニアに与える影響とは法律は敵か味方か?(2/4 ページ)

改正労働者派遣法が9月11日に成立し、30日より施行された。「派遣期間の上限3年」「特定派遣の廃止」など、派遣エンジニアにとって影響が大きい本改正のポイントを、エンジニア派遣を行っているビーブレイクシステムズの高橋氏に伺った。

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1 特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別を廃止する


ビーブレイクシステムズ 取締役 関西支社長 高橋明氏

 今まで「派遣会社」は、「特定労働者派遣」と「一般労働者派遣」に分かれていたが、法律の施行日以降は、新たな許可基準に基づく許可制に一本化される。

 「一般労働者派遣」は別名「登録型派遣」と呼ばれる形態で、派遣社員は派遣元に登録し、仕事が決まったときだけ派遣元と雇用契約を結ぶ。派遣先との契約が終了すれば、派遣元との契約もなくなり、収入もなくなる。

 代表的な企業はパソナやリクルートスタッフィングなどで、一般で「派遣」というときに想定されるのは、こちらだ。事業は許認可制で、認可を受けるためには「2000万円×事業所数以上の基準資産額」「事業所の面積20平方メートル以上」などの基準をクリアしなければならない

 「特定労働者派遣」とは、派遣元の会社に1年以上の雇用契約を結んでいる契約社員や、正社員が、他の会社に派遣される形態だ。契約がなく派遣元で待機している期間も、給与が支払われる。事業は届け出制で、一般労働者派遣事業のような基準はなく、厚生労働大臣に届けを出すだけでよい。

 「業務請負」も社員が他の会社で働くことはあるので一見同じように見えるかもしれない。両者の違いは、派遣が「労働力の提供」であり、「派遣先の指示命令に従う」のに対し、業務委託は「労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法第632条)」であり、注文主(派遣でいう派遣先)ではなく、「自社の業務管理者からの指揮命令に従う」ことにある。

 「自分は正社員だから、派遣法の話は関係ない」と思っている読者は注意してほしい。なぜならば、「A社の社員だが普段はB社で勤務していて、A社に行くのは半年に1回の上司面談のときだけだ」というエンジニアは、「正社員」かつ「特定派遣労働者」かもしれないからだ。

 勤め先が特定労働者派遣会社だった場合、法改正で「特定派遣が届け出制から許認可制に変わる」と、認可を受けられなくて廃業したり、一般派遣に業態変更して登録派遣スタッフ(=仕事がないときは収入がない)になったりしてしまうのではないだろうか?

 これらの疑問に対し高橋氏は、「特定派遣が廃止されても、特定派遣会社の社員が登録スタッフになるわけではありません」と、筆者たちの思い違いを正してくれた。「許認可必須」は、「経営のしっかりした会社にだけ派遣事業を認める」のが目的で、登録型派遣会社に業態変更せよ、というわけではない。廃業する場合は、許認可のせいというよりも、もともと問題のあった企業になるだろう、と高橋氏は推測する。

 「これまでは届け出さえすれば、体力の脆弱(ぜいじゃく)な企業でも派遣業が行えた。しかし許認可制になれば、経営基盤がしっかりした企業のみが生き残り、他は淘汰(とうた)されるかもしれない。これは労働者を守っていない特定派遣企業は経営力を高めよ、労働者は自社の経営状況を見定めよ、ということだ」(高橋氏)

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