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デルがEMCを買収で株式を非公開化へ、その背景と今後の展開はテクノロジー業界最大の買収

米デルは2015年10月12日(米国時間)、同社の米EMC買収について最終的な合意に達したことを発表した。デルは従業員7万人の企業を飲み込むことになる。この、テクノロジー業界最大の買収の背景は何か。今後の展開における注目ポイントは何か。

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 米デルは2015年10月12日(米国時間)、米EMCとの間で買収条件が合意に至ったことを発表した。正確には、米デル、そのオーナーであるマイケル・デル氏、デル氏の投資会社MSD Partners、およびデル氏によるデルのMBOと株式非公開化を支援した米投資会社シルバーレイクなどが共同でEMCを買収することにつき、最終的な合意に達した。

 デルおよび関係企業は、EMCの株式を事実上33.15ドルで買い付ける。買収総額は約670億ドル(1ドル=120円換算で8兆400億円)。これはテクノロジー業界で史上最大の買収とされる。買収費用は株式発行、借り入れ、キャッシュで賄われる。

 EMCの取締役会はデルなどによる提案を承認済みで、今後は同社株式の非公開化に向けた作業が進められていく。なお、EMCが約80パーセントを保有する米ヴイエムウェアは、株式公開企業として残る。

 EMCはデルのサーバー事業と統合され、エンタープライズシステム事業部門となり、その本拠地は現在のEMC本社のあるマサチューセッツ州ホプキントンに置かれる。新生デルの本社は、現在のデルの本社が置かれているテキサス州ラウンドロックになる。

 EMCはヴイエムウェアのほかにビッグデータ/ミドルウエアのPivotalを子会社に持ち、「フェデレーションモデル」と呼ばれる独特な事業展開を行っている。すなわち、EMC、ヴイエムウェア、Pivotalは基本的に水平分業で連携するものの、時には競合する事業展開も行っている。マイケル・デル氏は後述のブリーフィングで、この体制を「前進させる」と話している。

 マイケル・デル氏は、新生デルの会長兼CEOに就任。EMCの会長兼CEOであるジョー・トゥッチ氏は今回の買収プロセス終了まで、この職務を継続する。

「私たちは、破壊する側に自らを置く」が課題は多い

 今回の買収に関するプレスおよびアナリスト向けのブリーフィングで、二社はIT業界の急激な変化を、今回の統合の理由に挙げた。

 「IT業界では、破壊的(disruptive)な市場の変化が起こっている。一方で大きな(事業の)可能性も生まれている」(デル氏)。「私たちは、破壊する側に自らを置き、可能性をつかんでいきたい」(トゥッチ氏)

 デルがEMCを買収した理由は理解しやすい。デルは過去数年にわたり、IBMやHPのような、統合IT製品・サービスベンダーを目指す動きを強めてきた。そのため、2009年にはシステムインテグレーション企業のペロー・システムズを買収したほか、セキュリティなど多数の企業を統合してきた。だが、大企業顧客の取り込みには課題が残されていた。

 今回の買収により、デルはIBMおよびHPに対する、デルの相対的な競争力を高めることができる。EMCはデルに、大企業のニーズに応えるための製品、技術力、サポート/コンサルティング機能、そしてもちろん大規模顧客を提供するからだ。

 製品について、デル氏はブリーフィングで、「IDCなどの調査で1、2位の製品群がそろうことになる」と強調した。だが、従来型の製品群で1、2位というだけでは、将来につながるとは言い切れない。

 注目したいのは、EMCとそのフェデレーション企業が、従来型のハードウエア製品だけでなく、オープンソースを含めた、新しい時代に向けたソフトウエア製品の展開を積極的に進めていることだ。IBMやHPもオープンソースを活用した製品群の刷新を進めているが、この分野でより柔軟に、より幅広い層にアピールする製品やサービスを提供できる可能性がある。

 とはいえ、デル/EMCは、IBMおよびHPほどの幅広いソフトウエア製品群や、従来型のソフトウエアインテグレーションに関するリソースを持たないのも事実。これをどう補うのか、他社とはどのように異なるアプローチをとるのだろうか。

 EMCとフェデレーションにとっては、EMC株式の非公開化が、事業展開の安定化につながる側面がある。一方、ハードウエアストレージについては、以前デルはEMCの製品群の供給を受けていたが、その後EqualLogicなどの買収によって、重複する部分が大きくなっている。これをどうしていくだろうか。

 最も不確かなのは、新生デルがクラウドサービスにどう取り組んでいくかという点だ。今後のエンタープライズITにおいて、パブリッククラウドサービスはますます大きな存在になることが確実だが、デルは以前、IaaS提供計画を諦めた経緯がある。企業が社内に導入した製品の遠隔的な運用代行だけでは、今後の企業ニーズを満たせないはずで、これが新生デルの最大の課題になる可能性がある。ヴイエムウェアはvCloud Airを展開しているが、これが新生デルにとっての包括的な事業プラットフォームになっていくということだろうか。

 EMCは2015年7月に、ユニークなクラウド管理ソフトウエア/IaaSベンダーのVirtustreamを買収した。VirtustreamはERPなど従来型の基幹アプリケーションのSLA/コンプライアンスを高め、企業社内および複数のクラウドサービスにまたがるこうしたアプリケーションの運用を円滑化するソフトウエア「xStream Cloud Management」を提供。このソフトウエアは同社のIaaSのベースとして使われているものだという。

 新生デルが自社のIaaSサービスプラットフォームとして、Virtustreamを採用する可能性はある。だが、Virtustreamのサービスは、vCloud Airよりもかなりニッチ的だ。従来型の企業アプリケーションで、しかも基幹系および複雑なアプリケーションの運用に注力している。また、そのビジネス手法は、システムインテグレーション的な色彩が強い。「新しいアプリケーション」への適用は、現在のところ考えにくい。

[2015/10/13訂正]本記事の初出時、EMC本体が「(IaaS)サービスを持っていない」と表現しましたが、これは誤りでしたので訂正し、文末にVirtustreamに関する記述を追加しました。筆者はEMCのVirtustream買収が、IaaSよりもハイブリッドクラウド管理/クラウドセキュリティ/コンプライアンス管理ソフトウエアを目的としたものと認識していましたので、VirtustreamのIaaSについては初出記事では触れませんでした。しかし、今後同社がIaaS事業者として、新生デル内部での役割を拡大する可能性を考慮し、記述を追加しました。

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